季節は流れ、あの日から6年。
七人は高校生になっていた。
それぞれ背も伸び、声も低くなり、少し大人びた顔つきになった。
だけど、根っこの部分は変わらない。
七人は相変わらずつるんで、馬鹿みたいに笑い合いながら日々を過ごしていた。
そんなある日――放課後の教室で、宮田が突然叫んだ。
俊哉:「ねぇ! 俺たちでバンドやらない!?」
高嗣:「はぁ?」
二階堂が椅子から落ちそうになりながら振り返る。
俊哉:「だってさ! バンド組んだら絶対モテるって! 文化祭で演奏して、キャーキャー言われたいでしょ!」
宮田は目を輝かせながら力説する。
太輔:「モテたいだけかよ」
藤ヶ谷が呆れ顔でつっこんだ。
渉が冷静に腕を組んで言う。
渉:「でも、悪くないんじゃない? どうせ俺たち暇だし」
俊哉::「お、賛成一票!」
千賀がすぐに手を挙げた。
健永:「俺、昔からピアノ弾いてたからキーボードやる!」
太輔:「じゃあ俺はギターだな」
藤ヶ谷が即答する。
高嗣:「ドラムは俺!」
二階堂が元気よく手を上げる。
宏光:「ボーカルは?」
宏光が問いかけると、みんなの視線が自然と裕太に集まった。
裕太:「え、俺!?」
裕太は目を丸くした。
俊哉:「お前、声いいじゃん。昔から歌うと花純めっちゃ笑ってたし」
宮田が言った。
花純――その名前に、一瞬空気が止まった。
みんな心のどこかで、彼女の存在を忘れたことなんてなかった。
裕太:「……わかったよ。やる」
裕太は照れくさそうに笑いながら答えた。
こうして七人はバンドを結成した。
名前は**「スカイリーフ」**――
**「空」と「木の葉」**を合わせた造語。
宏光:「空は俺たちの自由、木の葉は花純ちゃん。あいつの笑顔を忘れないようにって意味だ」
宏光が考えた名前だった。
それを聞いた瞬間、みんなの胸が熱くなった。
練習は決して順調じゃなかった。
音は外れるし、リズムは合わないし、文化祭に間に合うのかと不安になるほどだった。
だけど、ギターの弦が切れても、ドラムが派手にずれても、みんなで笑いながら練習した。
――だって、これはただのバンドじゃない。
花純と過ごした日々の延長線上で、彼女に歌を届けたいという気持ちが、七人を支えていた。
裕太は夜遅くまで、花純のことを思い出しながら歌った。
声がかすれても、胸の奥は熱かった。
裕太:「花純ちゃん……聴いててね」
その願いは、歌声に乗って町の空へと響いていった。