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昼想夜夢

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昼想夜夢

12 - 第9話※

♥

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2024年05月11日

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…初めて出会ったのは学校の保健室だった。



体育の授業で軽い怪我をしてしまい保健室に行ってこいとうるさい先生の声にしぶしぶと言った形で保健室までやってきた。



そこまで重症ではない怪我。



唾でもつけとけば治るだろこんなもんだなんて悪態をつきながら近くのソファへと腰を下ろした。



こういう時に限って先生がいなんだ。



何処に何があるかも分からない状況で治療などする気にもならず授業終わりまでサボってやろうと体の力を抜いた。



ソファの位置から見える簡易ベッド。カーテンの隙間から除く布団は先程まで誰かがいたのか形が崩れていた。



まぁ新学期始まったばっかだしな。体調崩すやついてもおかしくないか。



当の本人がどこへ行ったのかは分からないが俺にはどうでもいいことだ。



しばらくぼーっとして時間を潰していた。



スマホ持ってくるんだったな。



とそんなことを考えた所でそろそろ授業も終わる時間だと気づく。しれっと戻って整列の時にでもいればなんも言われんだろと俺は重たい腰をあげた。



そういえば怪我の手当なんもしてねーや。



まぁいいかと保健室を出る為に扉を引いた。勢いよく引いたその扉の向こうで小さな悲鳴をあげ尻もちもつく見知らぬ生徒。その手に持っていたであろうエナドリの缶が地面を転がって行く。



「すまん。大丈夫か…」



床に転がる缶を拾い上げ目の前の彼へと差し出す。



真っ赤な髪から覗いた暗く霞んだオッドアイ。



一瞬のこと。



ただ一瞬目があっただけ。



それなのに目が奪われて離せなくなるような感覚。心臓が煩く音を立てていた。



「ぁ、だ、、だい、じょぉぶです。」



すぐさま目を逸らされ俺の差し出した缶を受け取りそそくさと保健室の中へと走って行ってしまった。



鼻歌交じりに運動場へと戻りぶつかってしまったあいつの姿を思い出す。



名前も知らない。クラスも学年も、



特徴的な声と微かに触れた手の温かさが俺の心を踊らせた。



手に入れたいと思った。



また会えねぇかな。



そんな柄にもないことを思ったりした。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「あーあのさ、先生って今どこにいるか分かるか..?」



どうしてももう一度会いたくて友人に聞いて周りなんとか見つけることが出来た。



ぶつかった彼は莉犬というらしかった。



「…..誰。」



ただクラスに様子を見に行ってもいつも元気で楽しげににこにこしている姿ばかりであの日保健室でであった彼とは似て非なるものであった。



訳ありなのか…?



普段ならこんなことしない。理由など分からない。



ただどうしようもなく興味が湧いて、欲しいと思っただけ。



「俺2年のさとみ。ちょっと体調悪くてさ、」



養護教諭の居ない間に保健室に忍び込んで保健室の利用名簿を見た。



毎週火木の3・4限に莉犬は保健室を利用していた。



個人で書く名簿を見てみたが体調不良というよりは精神的理由で利用してることが多い見たいだった。



「….先生なら来ないよ。俺がいるから」



これは使える。そんなことを思って莉犬のいる日・時間にもう一度来ようと決めたのが昨日。



無事莉犬と接触することが出来た。



「..俺がいるからって…?」



「………」



「ぁ、ごめん。言いたくないことだったら言わなくても..」



「….俺が面倒だから。みんなみんな俺が嫌いだから。先生が来ないのは俺のせい。」



蹲っていた莉犬はさらに自分の膝に顔を埋めた。



鼻をすする音が聞こえる。きっと泣いているのだろう。



動かない俺に痺れを切らしたのか



莉犬は自分の使ってる簡易ベットの隣のベットを広げて体温計を持ってきてくれた。



「俺..教室戻るから」



俺は保健室を出ようとする莉犬を引き止めた。ここで帰られてしまったら来た意味が無い。



「退屈だからさ、良かったら話し相手になってよ」



「君のこと教えてよ」



君にとって都合のいい嘘で君を騙して信用させればいい。



今日までに莉犬のことは色々調べた。親のこと過去のこと色々。



莉犬は少し困った素振りを見せた後控えめに頷いて先程のベットへと戻ってきてくれた。



お互いベッドサイドに座り向かい合って話をした。



最初は警戒していた様子だったけれど4限の終わりごろには警戒が溶けてたみたいだった。



チャイムが鳴りお昼休みが始まる。



「ぁ、俺教室戻んないと、、」



寂しげに言う莉犬。



「そっか、じゃあまたね莉犬くん」



そう言いながら手を振れば控えめに手を振り返してくれた。



保健室を出る直前。1度こちらを振り返った莉犬は一言



「..また、お話したい、、」



そんなことを言った。



「もちろん」



そう答えればその可愛らしい顔に笑顔を浮かべた後逃げるように教室を出ていった。



まさかこの2時間でここまで距離を詰められると思って無かった。



俺の予想通りだった。



養護教諭が居ない理由を知っていた。依存体質のある莉犬が養護教諭へと依存しかけていたから。だから居なかった。



初めてあったあの時も。



…きっとこれは一目惚れだ。



そして今日話しててより莉犬を欲しいと思った。



その目に俺だけを写してくれたらと思った。



いや写すようになるよ。



莉犬は俺しか見なくなる。



俺は莉犬にとって都合のいい嘘で莉犬を騙し続けてあげる。



その代わり莉犬は俺だけを見てくれたらいい。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

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コメント

6

ユーザー

わ、めちゃ最高です🥹赤くんが依存体質な事も色々な事情があることも全部全部調べた上での計画で、桃くんの赤くんへの執着さがすんごい分かりました!!桃くんの嘘で赤くんは安心できるし桃くんは赤くんに依存してもらえるしお互いが結局は都合がいいのが最高で🤦‍♀️りあさん話の構成神すぎます~!!

ユーザー

初コメ失礼します(՞っ ̫ _՞)‪‪❤︎‬ 実はりあさんの作品ちょっと前から見させてもらってます🎀♡ ほんとどの作品も大好き過ぎて😿💭 その中でもこの作品がいちばん大好きです🥹💗ずっとこういう作品探し求めてましたт т♡ 続き楽しみにしてます😽🎶 長文失礼しました(ᐡ ̥_ ̫ _ ̥ᐡ)

ユーザー

続きありがとうございます…この作品大好きですほんとに😭🫶🏻

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