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「頑張ってね。私も出来る限る協力するから」
さっちゃんは「傷付けられても大丈夫」って言ってるけど、少しでも傷付けたくない。
力の正しい使い方、か……。
勉強や修行していけば分かるのかな?
「じゃあ、また放課後ね」
「うん、またね」
教室の雰囲気はいつも通りに戻っていた。昨日の質問攻めはもう無い。
さっちゃんの言う通り、1日で熱は冷めたみたい。
「アリアちゃんおはよー」
「うん、おはよー」
何事もない、普通の1日が始まった。
「では、数学の授業を始めます」
「……」
数学か……。
今まで真面目にやってこなかったけど、これも強さにつながるのかな?
……頑張ってみよう。
さっちゃんと一緒に働く。この夢の為には、わたしが何時までもバカじゃだめだよね。さっちゃん並みとはいかなくても、及第点くらいは取れないと。
「社会学を始めます」
「……」
社会学もそうだよね。何時までも逃げてちゃ駄目だ。
もう就職先が決定してる。しかも有名な民兵組織。
そこに入るのがわたしみたいなバカじゃ、さっちゃんにも周りの人にも迷惑をかける。頑張ろう……。
「アリアちゃん、今日はどうしたのー」
給食時間、一緒に食べてる友達がそんなことを聞いてくる。
「ん、何が?」
「なんか、授業中とか真面目だったよね。なにかあったの?」
「なにかってほどじゃないよ。お母さんやお姉ちゃんにちょっと言われただけ」
「そっかー。アリアちゃんのお母さんとお姉ちゃん、厳しそうだもんねー」
「うん」
午後の授業も真面目に受けた。
先生や友達から色々心配されたけど、普段のわたしってどれだけダメ人間に見えてるんだろう。いや、わかってはいるんだよ。普段は授業中のおしゃべりや落書き、居眠りの常習犯だからね。そんな人が急に真面目になったらわたしだって心配する。
「あーー、でも疲れたーー……」
真面目に授業を受けるのがこんなにも大変だなんて思わなかった。
……さっちゃんは凄いね。こんなに大変なことをずっとやっていて、先生からの評判は最高で成績はトップクラスだもん。
毎日100kmのランニングをしていて運動神経も抜群。戦闘だってユリ姉さんのお墨付き。
……ホントにずっと一緒にいられるのかな?
さっちゃんの存在がすごく遠くに感じる。
わたしが修行ノルマや勉強を頑張るほど、さっちゃんの頑張り具合や優秀さが飛びぬけてるのがよくわかる。
「……頑張るしかないよね」
わたしがダメ人間のままでもさっちゃんは一緒にいてくれる。
でも、それじゃさっちゃんが不幸になる。
さっちゃんはスーパーエリート。就職先だって、もっといい所にいけたと思う。だけど、わたしと一緒にいる為だけに民兵を選んだ。
……さっちゃんの幸せは、わたしの頑張りにかかってるんだ。
「……図書室で自習でもしてよう」
わたしが学校で出来ることは勉強だけ。
成績を上げて、少しでもさっちゃんに相応しくなる、それだけだ。
「明日からの待ち合わせは図書室にしよう……」
さっちゃんの下駄箱に手紙を入れて図書室に向かう。 図書室はいつも通り空いていた。
わたしは社会学の本を取って勉強を始める。
「まずは社会学の成績を上げよう。それから数学だね」
わたしは頭が悪いし要領も悪い。一度に2科目の成績上げは無理だ。
授業を真面目に受けて全体の成績をちょっと上げて、図書室で不足を勉強する。
……しばらくはそれで頑張ってみよう。
「……」
黙々と社会学の復習をする。
……逃げ出したい。15分くらいしか経ってないけど凄く頭が痛い。でも、逃げちゃ駄目だ。ここで逃げたらさっちゃんが不幸になる。
わたしの為じゃなくてさっちゃんの為に頑張る。
「……」
うん、さっちゃんの為と思えば頑張れる。
今後も嫌なことや辛いことがあったらさっちゃんを思い出そう。
……全てはさっちゃんの為に!
「うん、今まで嫌だった社会学が楽しくなってきた気がする」
考え方を変えるだけでこんなに変わるんだね。
さっちゃんの為に必要な勉強だと思えば、これくらいわけもないよ。
ゴォーン……ゴォーン……ゴォーン……
「あ、6時間目終了の鐘だ」
わたしが放課後に図書室で社会学の勉強をする。
……昨日のわたしに言っても笑われるね。ありえないもん。
でも、今のわたしは違う。
さっちゃんを幸せにする為に何だって頑張れる。
修行ノルマのおかげでさっちゃんのすごさがあらためてわかった。一緒に働くには今のわたしではダメなんだ。もっと賢く、強くならないと。
「アリアちゃん、お待たせ」
「さっちゃんも6時間目お疲れさまー」
「今日も戦闘関連の本を呼んでたの?」
「ううん、違うよ。社会学の勉強してた」
「え?」
そうだよね、驚くよね。わたしが逆の立場でもきっと同じ反応するよ。
クラスの友達と同じ反応。
わたしって、さっちゃんにもダメな子って思われてたんだね……。
仕方ないか。それだけ、普段からだらしなかったってことだから。でも、今日からわたしは変わる!
「これからは社会学も数学も頑張るよ。さっちゃんと一緒にいても笑われないようにする」
「そっか、私と一緒にいる為に頑張ってくれてるんだね、ありがとう。わからないことがあったら何でも聞いて、アリアちゃんがわかるようになるまでずっと付き合うから」
「……うん、その時はお願いするね」
自分の勉強で忙しいはずなのにわたしに付き合ってくれる。
……好意は素直に受け取るよ、そして絶対に裏切らない。
さっちゃんの時間を削る以上、わたしはそれ以上に成長して好意に答える。
「今日はどうするの? このまま図書室で勉強する?」
「道場に見学に行こう。勉強も大事だけど修行も大事だよね」
「うん、アリアちゃんがそう言うなら道場にいこうか」
……今のわたしが道場に行っても出来ることは何もない。無言空間でただ座ってるだけだ。
でも、さっちゃんは違う。さっちゃんは殺気が分かっていて必死に何かを学ぼうとしてた。わたしが強くなりたいように、さっちゃんだって強くなりたいんだ。
一緒に強くなって、ずっと一緒にいる。これがわたし達の夢。
もう迷わない。地道でもいい。強くなって、絶対に夢を叶えてみせるよ。