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「いらっしゃい
サッカー始まってるよ、ハンガーにかけるよ」
「ありがとう、お邪魔します」
冷蔵庫からビールと酎ハイを出してきて僕の前に置いてくれる、そしてお腹空いた?と続けてミールも出してくれた
若井がグラスに2人分注いでくれて乾杯しビールを喉に流した
「あー美味しい、いつもありがとう」
「どういたしまして
で..りょうちゃんパートナーと別れてきた?」
と覗き込むように聞いてきた
「..まだ」
「は?早く別れて俺のとこおいでよ」
「うん、そうしたいんだけど」
「なに?まだ連絡つかないの?この間飲んだ時からもう2週間経ってる、そんときもするするって言った」
「いや、もう半年連絡してないし、生きてるのかどうなのかって..」
「それって別れてるんじゃないの?」
「そうだと思う、ねぇやっぱ気になる?」
「まぁね..そんな人なんで好きなの?」
「いや、もう好きじゃないけどね、前にも話したじゃん」
目が合わないよう一気にビールを飲み干した
僕は若井が好きで若井も僕が好き
お互いの気持ちが同じで次のstepの話になったのに..不通になった僕の前のパートナーが気に入らない若井がせっついてくる
真面目な彼にはどうやら音信不通は通じないらしい
やっと気持ちが通じたのにexの話題を振られて嘘をつく必要もないから正直に話した、僕は知りたくないから聞かなかったけど若井はすごく聞きたがった
それがこんなに引きずるとは思わなかったな
「若井、ビールもらうね」
「勝手に取っていいよ
じゃー、俺が一番?」
キッチンにいる僕に問うてくる
「うん、そうだよ若井が一番」
「じゃ2番は?」
「実家のわんちゃん」
「3番」
「親?あ、元貴かな、2番
わんちゃん、親、スタッフ?」
「その人いないじゃん」
「うん、もう好きじゃないもん
それも言ったでしょ」
「なんで別れてないの?俺不安になっちゃよ?」
「えー連絡取ってないから?」
「なんでそれで別れてないの?」
「もうー堂々巡りしてる
だって電話かけるのも怖いんだもん
今どんな生活してるかもわかんないし
電話して..君誰って言われたら有り得なくない?
電話する必要ないと思うけど..」
「あーね、そういうこと..
じゃ俺が電話していい?」
「え?」
「ダメなの?」
「いいけど」
「じゃ貸して」
「うん..これ番号」
「ふーん、こんな名前なんだ
俺よりちょっとカッコいい名前なのムカつく」
「滉斗なんてすごい素敵だけど..
それに連絡も勝手にしなくなるような人だし..」
俺の返事も聞かずに早速携帯を奪うように持ってコールし始めた
はい..は?
俺は涼架さんの知人です
はい?..は…勝手っすね
それはどうも、俺が幸せにしますから
消去しますから
はい、では
まだ繋がったんだ..若井が何やら話し込んでる
怪訝な顔をして若井を見つめる
切ったと思ったら履歴やらアドレスやら消してる
まぁ全然良いのだけれどそんな放浪癖のある不通信男
今は僕は好きになった人と同じ気持ちになれて日々幸せに過ごせるんだからなんでもいいんだけどねと同時にやっぱり僕ってずれてて不適合な人間なんだなとわからせられる
若井は真人間でそういうの嗅ぎつけて僕をしっかり修正してくれる
でもわかるよ..
確かに逆だったら胸がチリチリと妬けるはず
若井はモテるから聞きたくない
黙ってても寄ってくる良い男ってこういう事なんだと知った、伊達に十数年一緒に過ごしてるわけじゃないから
前は見てるだけで良かったはずなのに同じ仕事仲間で満足だったはずなのに
今は僕がそれだけじゃ足りないんだ
「どうだった?」
「…何を知りたいの?」
「え?怒ってる?」
「いや、今何してるか知りたい?
それとも知りたくない?
もう連絡先は消したよ」
「全然いいよ
電話繋がったんだね
知らなくていいよ、もう思い出すことも無くなってたから前に若井が聞くまでさ..」
「俺が聞かないと黙ってるつもりだったの?」
「うーん、そうじゃないけど..どっちが正解?」
「俺はそんな別れ方した事ないからわかんないね、ありえない」
「そっか..恥ずかしい..わかったでしょ
要は捨てられたんだよ?
僕がそんな別れ方望んだと思ってる?
それを掘り起こして今更僕を傷つけたいってこと?
若井は正論が好きだね
だったら言わなきゃよかった
若井にはもう何も話せないよ」
もう顔を合わせられなかった
静かになった部屋でテーブルのグラスを見つめる
水滴がコースターに落ちていく
僕と若井は住む世界が違ったのかも知れない
こんな惨めな思いなんて若井にはわからないよ
コースターを用意してくれる彼氏なんて今までいなかった、僕が間違った相手を好きになったんだ
若井がきちんとしたい性格なのを1番知ってる
僕の言葉を理解した若井はバツが悪そうな顔をした、ああ..過去に何度も見た事がある別れる前のそんな表情
そしたら急に若井の言葉に傷ついてしまい顔を手で覆う
さっきまで一緒に過ごせるだけで幸せだったのに
若井との楽しい未来もなくなってまた独りになっちゃうんだ
手のひらに自分の涙がこぼれ落ちる
泣くはずじゃ無かったのに一回出てきた涙が止まらなかった
「ごめん、そんなつもりじゃなかった
絶対傷つけたくないよ
りょうちゃんが捨てらるなんて信じられない
別れてないって聞いて俺たち両思いなのにきちんと付き合えてない気がして..傷つけてごめんね
でも全部言ってほしい、俺はなんでも聞きたい
好きだから全部知りたかった」
そっと抱き寄せられて
そして泣く子を慰める様に頭から撫でられる
分かってるよ、今までいっぱい傷ついてきたけど若井には思った事ないもん
ほんとは明け透けに喋る自分が悪いのかもしれない
僕だって全部受け止めてほしいからで
連絡取らないのだって俺たち別れたでしょって言われるのが落ちだからだよ
捨てられてる僕なんていないって信じてくれてる若井も好き
これまできちんとお別れしてきた若井の真面目な性格も愛おしいし
僕と..こんな捨てられるような僕ときちんと向き合ってくれる若井が大好きなんだもん
僕は若井の首にしがみついて抱き返す
「ちゃんと分かってる
ごめん泣いて、好きだよ..」
「りょうちゃん
好きだよ、付き合って
ずっとそばにいてほしい」
「うん、若井だけは電話ずっと出てね
そばにいてね」
「俺は絶対そんなことしないから」
触れるだけのキスをした
僕の涙の跡を撫でて
“ごめん、すぐ泣かした”
ううんと首を振る
若井が何度も僕の唇にキスを繰り返して
首筋にキスが移って若井の手を握り幸せを噛み締める
そして抱き合ったまま若井の動きが急に止まって 教えてくれた
「ねぇりょうちゃん..
結婚したって、悪かったって
涼架はどうしてますかって..教えてないけど」
「ほんとは気になったでしょ?」
「俺すげー嫉妬した、涼架って呼ぶし
”あんた誰“って言われてムカつくし
最初に電話の第一声が“涼架?ごめん”だったよ
すっごく軽いやつで..甘えた声だった」
「俺の知らないりょうちゃんがいて“涼架”って呼ばれて、その人と一時的でも部屋の中でこうして過ごしてたんだって考えたらすごく嫉妬した、正直掛けたの後悔した
ごめん、りょうちゃん
でもあんなやつ誰とでもうまくいかないよ」
「そっか..教えてくれてありがとう
..でも若井と今こうして居られるからもうどうでもいいよ」
「うん、心から別れてくれて良かったって思った、 俺りょうちゃんといれて幸せだから
俺が幸せにするから」
「..うん」
僕の肩に顎を乗せ安堵したように教えてくれた
若井ありがとう
僕の過去に嫉妬してくれてあのピリオドを打てなかった悲しい恋心も情けない自分も今日で救い出してくれた
そしてこんなに深い愛に気づいちゃった
ずっと若井のそばにいたいよ
これからの未来もずっとそばにいさせて