テラーノベル
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ヒミコたちと男たちが正面から対峙した様子を見つめながら、トワノがトモエにささやいた。
「ヒミコおねえさまの謡いが始まるよ。そのテンポや抑揚が、他のおねえさまたちへの動きの合図になってるんだよ」
ヒミコが両手で刀を右斜めに構えて、和歌を吟じる独特の口調で朗々と声を響かせた。
「仏も昔は凡夫(ぼんぷ)なり~」
ウルハとイオンが脱兎のごとく素早い動きで目つきの鋭い男と若い男に向かって突進し始めた。ヒミコの声がさらに響く。
「われらも終(つい)には……仏なり~」
マユキが日傘の柄の下半分を抜き取り、スカートの裏から取り出した吹き矢をその筒に込めて口元にあてた。ナミネは肩から斜めにかけた五色の紐を一本外し、ぶんぶんと空中で円を描いて振り回し始めた。
「いづれも仏性(ぶっしょう)倶せる身を~」
イオンが若い男の拳をかわして、素早く背後を取り、男の手首を掴んでよろけさせ、もう一方の手を男のひじに裏から叩きつけた。本来曲がるはずのない方向に男のひじの関節がバキッという音と共に曲がった。
目つきの鋭い男がアーミーナイフを取り出し、ウルハに向かって来た。ウルハは扇子を両手に持ち、難なくナイフの刃を弾いた。それは金属で出来た扇子、鉄扇という物らしかった。
ヒミコが刀を構えたまま革ジャンの男に向かって静かに詰め寄りながら、声を響かせた。
「へだつるのみこそ……悲しけれ~」
革ジャンの男が自動拳銃を内ポケットから取り出し構えようとした。ヒミコは自分の右側に長い黒髪を手で払い上げた。男の視界を一瞬遮った髪の向こうから、吹き矢が飛んで来て男の片目に突き刺さった。
革ジャンの男が悲鳴を上げて眼球に突き刺さった吹き矢を払いのけた。拳銃を持ったその右手にナミネが飛ばした鉤付きの組紐が絡みついて動きを封じた。
あまり鮮やかな手際にトモエが唖然としていると、トワノがまたささやいた。
「ヒミコおねえさまの謡いが和歌に変わるよ」
ヒミコは刀を斜め下段に構え、和歌を吟じ始めた。
「女郎花(おみなえし)……」
そのまま刀の峰を上に向け、革ジャンの男の手を下から払い上げ、男の手から拳銃がはね飛ばされて床に落ちた。ヒミコの和歌の謡いが続く。
「折りも折らずも~」
ウルハが革ジャンの男の横に駆け寄り、脚で拳銃を蹴飛ばして右手の鉄扇を広げた。その灰色がかった銀色の扇の先は薄く鋭いカミソリの刃のような構造になっていた。
ウルハはその扇の切っ先で革ジャンの男の首筋を掻き切った。男の首から血が噴き出し、よろめいた男の喉に正面からヒミコの刀が突き刺さった。
革ジャンの男が後ろに仰向けに倒れるのを見届けながら、さらにヒミコの謡いの声が響いた。
「いにしえを~」
ナミネが持っていた組紐の端を放り投げ、もう一本鉤付きの組紐を取り出した。数回頭の上で円を描いて振り回し、若い男に向かって投げた。その組紐は若い男の首に巻きつき、ナミネは近くにある二メートルほどの高さの何かの作業用の梁に登り、その上に組紐をあてて飛び降りた。
小柄とは言え、ナミネの全体重で梁から首を吊り上げられる格好になった男は、片方のひじをイオンに砕かれていたため、残った左腕で組紐をねじ切ろうとした。だが、組紐の中心部には細いワイヤーロープが編み込まれており、人間の手で切れるものではなかった。
イオンがその男の正面に駆け寄り、肘で男のみぞおちに一撃を入れた。男は全身の力を失い、イオンがナミネの側に行き、組紐の端を全力で下に引くと、男の足が宙に浮いた。ヒミコの謡いが続く。
「さらにかくべき~」
ヒミコが目つきの鋭い男に迫り、さっと身をかがめて横に払う形で刀を振るい、男の足首を斬りつけた。男が短い悲鳴を上げてよろけると、ヒミコの刀が男の手からナイフを弾き飛ばした。
「ものならなくに~」
最後の節を吟じ終えたヒミコが刀の切っ先を男の目の前に突き出した。なんとか逃げようと背を向けた男の背中からヒミコの刀が男の心臓を貫いた。
心臓に刃が突き刺さったままで止まっているので、まだかろうじてその血流は機能していた。ヒミコは一歩一歩ゆっくりと男の体との間合いを詰めながら語りかけた。
「蔭(おん)の白拍子の謡い、舞い、お気に召しましたやろか? これがあんさんへの……」
ヒミコが刀の柄をぐいっとねじった。その瞬間、刃が男の心臓の壁を切り裂いた。ヒミコが刀を男の体から抜くと、血が噴き出した。
ヒミコは羽織の左の袖を上げて上半身を覆い、返り血を袖で受け、その手を斜め下に振り下ろして、袖からしたたる血を払った。そしてうつ伏せに倒れた男の体を見下ろしながら言った。
「冥土(めいど)の旅の手向(たむ)けや」
ヒミコの背後でドスンという音がした。首を宙づりにされていた若い男の体が床に落ちた音だった。イオンが男の首筋に指をあてて絶命している事を確認した。
ヒミコは羽織の袂からウェットペーパーを取り出し、刀身に付いた血をぬぐい取り、羽織を脱いだ。背中の花びらと六文銭の紋が上になるように、ヒミコは羽織を倒れている男の体の上に投げた。
ヒミコは後ろを向き、他のメンバーの顔を見渡しながら、何事もなかったかのような冷静な口調で告げた。
「みんな無事のようやな。今夜の舞台は幕引きや」
コメント
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第40話読み終えたよ〜!😭💕 ヒミコおねえさまの謡いと舞い…いや殺陣がめっちゃ美しくてゾクゾクした!! 和歌に合わせて五人で息ぴったりに動く感じ、まるで一つの舞台を見てるみたいだった✨ 特に吹き矢と鉄扇のコンボ、そして最後の羽織をかける仕草がエモすぎて…! トワノの解説で演出の意図も分かって、より深く楽しめたよ🌟 次の幕も楽しみにしてるね!