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 マルコさんとの会談が終わりました。内容としては先勝報告と、次のターゲットであるリガ・ファミリーについてでした。話の通り後ろ楯が花園の妖精達であったならば、少し厄介な案件になります。真意の確認をする必要があるので、近々五番街へ足を運ぶ必要がありますね。 まあそれとは別にして今後の活躍に期待する意味も込めてライデン社の生産品の優先売却契約と、支援金として金貨三百枚を進呈しておきました。彼は近代兵器の必要性をよく理解していますし、組織の拡大のために労力を惜しまないので有効活用してくれるでしょう。




「シャーリィ、ティアーナには私が話を聞いておきます。貴女には優先すべき案件がいくつもあるでしょう」




「シスター、ありがとうございます」




 正直助かります。実はガウェイン辺境伯との会談が迫っていて、移動時間を考えたら今日にでも発たねばなりません。




「お母様、少し遠出をしますが構いませんね?留守はセレスティンに任せます」




「御意のままに」




「ガウェイン辺境伯なら、ルースかしら?」




「はい。護衛としていつものようにベルを連れていきます。アスカはお留守番です。あまり人目に晒したくはないので」




 シェルドハーフェンから見て東にある町、ルース。帝国南部有数の穀倉地帯であり、南部緒都市はここで生産された食料で成り立っています。

 黄昏の農産物は高級品として売り出していますので、互いに争う心配もありません。そしてルースはガウェイン辺境伯の本拠地でもあります。食料生産の中心地を治めていることからも、ガウェイン辺境伯が南部貴族達の中で重要な立ち位置に居ることは明白です。

 事実、盟主であるワイアット公爵家より影響力があるとも言えますからね。




「道中のお世話は私が」




「ばあやも留守を任せます。エーリカに色々頼んでいますし、なによりロウを支えてあげてください」




「シャーリィ、俺は?」




「ルイはいつものように留守を任せます。まあ、ガウェイン辺境伯に会うだけです。今回は長居しませんよ」



 帝都では正直幹部全員を連れていけば良かったと後悔しましたが。

 マクベスさん達は変わらず兵の増強を指示しています。戦闘部隊は、黄昏防衛戦で被った痛手からようやく復興しつつあります。工業王との戦いを控えていますし、出来るだけ錬成に注力して貰いたいのでこのような場には呼びません。もちろん事情を伝えて納得して貰っていますよ。




「んじゃ、今回は三人の旅か。移動手段は?」




「ルースまでは鉄道が敷設されているので、鉄道です。二日間もあれば行き来可能ですから、留守にするのは三日間です。セレスティン、来客があった場合はその様に伝えてください」




「御意のままに、お嬢様」




 翌日、私達三人は南部最大の穀倉地帯ルースへとやって来ました。どこまでも広がる広大な農地では大勢の農民達が忙しそうに動き回っています。大都市とは言えませんが、牧歌的な雰囲気は好感が持てますね。

 ただ、シェルドハーフェンに近いからか柄の悪そうな人もチラホラと居ますね。




「変わらないわね」




 並んで歩くお母様がどこか懐かしそうに呟きました。私には縁がありませんでしたが、お母様やお父様は何度もガウェイン辺境伯の領地を訪ねていますからね。

 ちなみにお母様の義足はドルマンさんが直々に仕上げてくれたので、歩くことに不備は無いのだとか。

 ただ、度々無茶をして壊してしまうのでドルマンさんも頭を痛めながら改良の日々だとか。うちの母が破天荒で申し訳無く思います。改良は指示しますが。




「それで、お嬢。屋敷へ乗り込むのか?」




「辺境伯にも体裁がありますから、そんなことはしませんよ。今日は指定された宿で過ごし、場所は明日知らされる予定ですから」




 私はシェルドハーフェンの裏社会に身を置いていますからね。公の場で会うわけにはいきませんし、その辺りはちゃんと理解しているので不満もありません。




「だとしたら、失敗したな。駅で馬車を手配しとくんだった」




「別に歩くのは苦ではありませんよ?」




 お母様も平気そうにしていますし、別の町の風景というのは色々と興味を引かれます。黄昏に活かせるものがあれば、どんどん取り入れないといけません。

 ですが、ベルは頭を抱えています。お母様と一緒に首を傾げていると。




「お嬢もお袋さんも、もう少し自分の身形に気を遣ってくれ。滅多に居ないレベルの美人が二人で居るんだぞ。滅茶苦茶目立つに決まっているだろ」




「そんなものですか?」




「私、オバサンよ?」




「お嬢が無頓着なのはよく知ってるが、やっぱり親子だなぁ……」




 ふむ、まあベルが心配するならばそうなのでしょうね。気を付けますか。




 その日の夜、ベルの心配は現実のものになりました。

 宿の近くにあった酒場で夕食を済ませていたのですが、柄の悪そうな男性数人に囲まれてしまいました。

 私達は壁際の奥の席に居たので、退路を断たれましたね。私は座ったまま対応し、ベルが立ち上がって間に入りました。




「姉ちゃん、美人だな。俺たちの酌をしてくれねぇか?」

「そりゃあいい!こんな美人に酌してもらえば、酒も美味くなるってもんだ!」




 確かにここのお酒は質が良いとは言えませんね。帝国のお酒は量産性を最優先にして味は二の次ですから仕方無いのですが。




「待て待て、酒代なら奢ってやるから手を引け。分かるだろ?お忍びって奴だよ」




 ベルが穏便に済ませようとしています。ガウェイン辺境伯のお膝元ですし、騒ぎを起こしたくない私の意思を汲んでくれたのでしょう。

 ただ、これまでの経験でこの手の輩は簡単には引き下がらないこともよく理解しています。事実、ベルに注意された彼らは顔を真っ赤にしています。酔っぱらっていますね。




「あぁ?なんだぁ兄ちゃん、スッ込んでろ!てめえには用はないんだよ!」

「穏便に済ませてぇんだが?」

「はははっ!凄んで俺らがビビると思ってんのか?今時剣なんかでビビるかよ!」




 一人が銃を……フリントロックピストルですね。それをベルに突きつけました。




「失せろよ、兄ちゃん。死にたくねぇだろ?」

「お前ら……後悔するぞ?」

「させてみろや!てめえ一人でなにがぼぉっ!?」




 おっと、リーダー格の人の口から剣の切っ先が飛び出しました。

 周りがギョっとしていますが、刺した本人、お母様は気にするまでもなく。




「邪魔」




 ただ一言呟いて剣を引き抜き、血を流しながらリーダー格の人は倒れました。




「ひぃいいっ!?」

「だから言ったろ、失せろ」




 取り巻き達は我先に逃げ出し、お母様は気にせず私の隣に腰掛けました。




「ベルモンド、それ片付けておいて」




「あいよ。店主、悪かった。これ迷惑料だ」




 ベルモンドが死体を担ぎ上げ、店主に金貨を渡しながら店から出ていき。




「シャーリィ、飲めるわね?」




「多少は」




「なら付き合いなさい。娘と飲むのが夢だったの」




「味は最悪ですよ?」




「帰って飲み直せば良いわ。ほら、注文しなさい」




「分かりました」




 お母様はフリーダムです。本当に変わりませんね。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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