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自然界には天然魔石が採掘される場所があり、鉱山では働いている人が魔石の波動に当てられて具合を悪くしてしまう事もある。
いわゆる、魔石酔いだ。
採掘されていない未開の土地では、魔石の波動に誘われて魔獣が集う事もある。
鉱山で働く人が体調を崩すのは、長期間同じ場所で働き、石が発する超音波のようなものに酔ってしまう感じだ。
勿論、聞こうと思って聞ける音ではなく、感じる事すらできない僅かな波動だ。
自然界にある魔石がその程度の音なのだから、こんなに大きな音を発する魔石は、とてつもなく巨大な力を持っている事になる。
私は心臓が嫌な音を立てるのを感じながら、二人に勇気をもらって歩を進める。
やがて前方に大きな扉が見えた頃、アルフォンス様は再び親指を小さく切り、血を使った魔術で扉の封印を開く。
扉はとても大きくて重そうだけれど、彼が手を前に突き出すと、ゆっくり音もなく左右に開いていった。
さらに歩くとまた扉があり、私たちは合計四つの扉を通った。
「最後だ」
五つ目の扉の前に立つと、あの音が地響きのように大きく聞こえる。
おそらく今まで通ってきた扉は、魔石の魔力や音が外へ漏れるのを防ぐ役割を担っていたのだろう。
アルフォンス様が最後の扉を開いた瞬間、レティが「うぅ……っ」と小さく呻いた。
「うるさい音だな」ぐらいしか思っていない私の鈍感さが申し訳ないぐらいだ。
「これは……」
私は扉の奥にある物を見て、目を見開いた。
そこは円形の広間になっていて、中央には縦五メートルはありそうな巨大な赤い魔石が浮いている。
アルフォンス様の指輪と同じように、魔石の中では魔力がたゆたい、炎のように揺らめいていた。
「凄い……」
私は今まで見た事のない巨大な魔石を前に、呆然と呟く。
「禍々しいだろう」
そう言った彼は厳しい表情をしていて、私は「ん?」と首を傾げる。
「……も、もしかして、アルフォンス様はこの魔石から良くない波動を感じて、ちょっと『つらいな』と思われていますか?」
尋ねると、彼は驚いて目を見開き、逆に聞き返してくる。
「君は平気なのか?」
「はい。音がうるさいなとは思いますけど」
ケロリとして答えると、アルフォンス様は瞠目したまましばし黙った。
その時、レティが乱暴な溜め息をついて言った。
「フェリはいつも精神感応を切っているじゃない。だから魔石の影響を受けていないのよ」
「なるほど!」
レティの説明を聞き、私は掌を拳でポンと打つ。
「『なるほど』じゃないわよ! 私はこの禍々しい魔力に当てられて酷い頭痛に苦しめられているのに、あなたときたら平然として……!」
恨みがましく言われ、私は「ご、ごめんね……?」と謝る。
レティは本当に具合が悪そうで、顔色が悪い。
立っているのもやっとという感じなので、私はとっさに彼女を支えようとした。
「触らないで!」
けれどレティに手を払われ、また落ち込む。
でも先ほどからずっとツンツンされているし、少しずつ慣れてきた。
幸か不幸か、私はつらい事への耐性が強いみたいだ。
「それならこれはどう?」
私はインビジブルハンドを発動し、そっと彼女の背中を支えた。
けれど、それも「やめてよ!」と振り払われてしまった。難しい姉だ……。
「……やはりレティシアは聖女である分、この魔石の前では影響が大きいか」
アルフォンス様が溜め息をつくと、レティはキッと彼を睨んで言い返す。
「できます! 私は聖女なんですから!」
青白い顔をしたレティは、足を肩幅に開き両手を前に突き出す。
そして祈りの言葉を唱えながら聖なる魔力を高めていく。
だが魔石がグォンッと一際大きく鳴ったかと思うと、話し声を遮るほど大きな音が鳴り始めた。う、うるさい……!
「……その御名において、主の僕に力を与えたまえ!」
レティは祈りの言葉の最後の一節を唱え終わったあと、「はぁぁ……っ!」と声を上げて魔石に向かって聖なる魔力を解き放った。
その瞬間、グォォオォォオォンッ! と大きな音が鳴り響き、魔石が赤い光を放つと聖なる魔力を霧散させた。
「あぁあああぁ……っ!」
その瞬間、レティは両手で頭を抱えて苦しみ、膝から崩れ落ちる。
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