どうも皆様、サカナです
良ければアスターの花言葉も調べてみてくださいね☺️
墺独に沼りました
※旧国
変わってしまいましたね、ドイツ。
今日もまた、その言葉を飲み込む。
私と貴方の関係はいつからでしたっけ。
確か…そう、19世紀。
私と貴方で、たくさん喧嘩をしましたね。
ずっと私が負けていましたが、いつも本気でかかって来てくれる貴方のこと、結構好きだったんですよ。
貴方の綺麗な片目を傷つけてしまったこと、今も後悔しています。
今日もまた、貴方のカウンセリングへ向かう。
本当は私が話したいだけなのかもしれませんね。
帝政へと移行した貴方は、相も変わらず強かった。
私も背が伸びましたし、仲の悪かった貴方と協力するだなんて思ってもいませんでしたよ。
けれど、やっぱり私は弱かったです。
貴方の助けを借りたくせに、貴方に責任を押し付けるようにして負けてしまった。
その結果、貴方は多額の借金を背負わされてしまいましたね。
そのせいでずっと働き詰めて、いつも自信に満ちていた貴方の姿は見る影もありません。
あぁもう、またこんなに切って。
悩みがあるのなら相談してくださいと言っているでしょう。
貴方の前で、外科医の仕事はなるべくしたくありませんよ。
自分を傷つけないで。
そのうち、貴方はイタリアに依存し始めましたね。
私、結構悲しかったんですよ。
変な思想までもらってきて、世界中から嫌われて…挙句には自殺未遂ですか。
いつも慎重で丁寧に物事を進める貴方が、たった2年ほどで無茶な侵攻を成し遂げてしまいました。
それができる力はあれど、辛かったでしょうに。
条約さえ無視して攻撃を行い、もう私は見ていられませんでした。
その時から壊れていたのでしょう?
ごめんなさいね、その時は医師免許なんてもの持っていなくて。
人を殺す術、経済学、国のあり方、そんなことしか知らなくて。
まあ…私は側にすらいられなかったのですけれど。
ごめんなさいって、なぜ貴方が謝るのですか。
何も悪くないのに。
…いや、悪かったのかもしれませんね。
でも、そこまで気負う必要は決してありませんよ、責任なら十分過ぎるほどに取りましたから。
何度も何度も心を折られて、貴方は自己を出すことを諦めてしまった。
私はただ、前みたいに笑っていてほしいのです。
自信に満ち溢れた笑顔。尖った歯を見せつけるような、 あの満面の笑みを見せてほしい。
今の笑顔は…辛そうに見えて仕方がないのです。
口端を無理矢理糸で引き上げたような、諦めと義務に塗れた顔。
もはや、笑顔と言うことすら憚られてしまう。
帝政時代に作られた借金は、ずっとずっと貴方の足を引っ張っていましたね。
朝早くから夜遅くまで働いて、中毒になるくらいカフェインを摂って、頑張っても頑張っても借金は減らなくて。
自暴自棄になってアルコールを飲んでは潰れて、何度かその勢いで体も売ったそうですね。
気づいていたはずなのに。
私、貴方の限界くらいわかっていたはずなのに。
それなのに知ろうとしなかったから、そんな稼ぎ方をしていると知ったの、貴方が取り返しのつかないくらい壊れてからでしたよ。
ようやく寝てくれたのに、貴方はずっと魘されている。
早く解放されますように。
以前は鮮やかな赤だった右の目も、今では包帯に覆われて見えない。
ごめんなさい、無責任な私のせいで。
頰を一撫で、少しでも安心してくれたらいいなと願いを込めて。
私がもっと早くに気づけていれば、無理矢理にでも休ませていれば、こんなことにはならなかったのでしょうね。
貴方とずっといたのは私なのだから、貴方のことを1番知っていたのは私なのだから、さっさと貴方を助ければ良かったのに。
だから私はダメなのです。
「…っと、いけない…私まで落ち込んでいては、ドイツさんを元気にすることなんてできませんね…」
魘される貴方に布団を被せ、部屋を片付けた。
枯れた花が寂しく佇む花瓶にはアスターを差し替えて、起こさないように静かに動く。
最後に食事を作り、ラップをかけてからメモを置く。
『食欲があれば食べてください』
正直、置くかどうかは少し迷ったのです。
責任感が強いから、辛いのに無理矢理胃に詰めてしまいそうで。
ですが、言わなければ食べてくれそうにもない。
目覚めた時、貴方の側にいられないのは心苦しいけれど。
卑怯で美味しいとこ取りな私がずっといても、息が詰まりますよね。
帰り際に見た彼の部屋の中では、アスターの花が静かに揺られていた。