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構えたナイフを傾けて刃を見せただ時を待つ。怪獣が怒りに任せて大きく咆哮した。

その声は耳をつん裂き、体が揺る。

スーツがあった以前ですら強かった怪獣を生身の状態の今は対抗できるのだろうかー。

そんな考えが頭に通り一瞬にしてとある感情が体を満たしていった。


思いたくない。


思ってしまえば、


理解してしまえば、俺は動けなくなりそうだ…













『あぁ、怖い。』







独り言のように内心でポツリと思ったその本音。

誰しもが感じるであろう恐怖という名の感情。

人間が感じる1番強く、逃れる術が極端に少ないその感情は手に持つナイフに滲む汗としてありありと現れていた。



怖いのは、誰だって同じ、市川も同じだから。

できる。

大丈夫。

俺ならできる。


そうやって自分に言い聞かせるように何度も何度も思い込んで粟立つ腕を軽く撫でる。

今市川を守れるのは自分だけしかいない。

やるしかない…



長く吐いた息を取り戻すようにスッと短く息を吸ったと同時に細かく傷を付けていた腕を治した怪獣が迫り来る。

あの程度の傷なら直ぐに治せますってかよ…そう怪獣に少し悪態をつきながら、頭を回す。

こいつの神経は狙われ難い背中に集中している、だからより大きいダメージを与えるなら上から…

前回の経験や解体で得た知識から弾き出した答えを実行する為に市川の居ない方へと走り、積み重なっている瓦礫を駆け上がり崩壊しているビルに駆け込んだ。至る所が昨日の怪獣によって壊されている内部を見渡しエレベーターの直ぐそばに設置されていたギリギリ壊れていない階段を登る。

モンスイ社の防護服は防御性能を優先されている為動き辛い、だから階段を駆け上がるのはキツイし息が直ぐ詰まる。

肩で息しながら手で持っていたナイフを口に咥えて、防護服のチャックを下ろして脱ぎ捨てる。運動したからなのかそれとも緊張や恐怖によるものか分かりもしないが、いつの間にか体は熱くなっていた。

ビルを覗き込むように地団駄を踏んでいる怪獣を三階から見下ろす。怪獣の高さは大方2.5階分ほど。ここから飛び降りればその背中にナイフを突き刺すことができるはず。


鉄骨やコンクリートの破片で埋め尽くされた床を思い切り踏み込んで走り出す、未だ割れていない窓ガラスに体を腕で守りながら飛び出る。

ガシャンと硝子が粉々になりながら腕に軽く刺さる。音に反応した怪獣は上を見た。俺を見た。

ナイフに滲んだ汗を振り払うように構え直してその背中に突き立てた。ナイフに目一杯の体重を掛けて奥に刺した後に抉るように捻る。

体を振るい痛みをその身から逃そうと壮絶な咆哮を上げる余獣、突き刺さったナイフを離さないように固く握りしめて余獣にしがみついた。

ビルを巨木のような腕で軽く破壊して破片が周囲に散る、飛んでくるガラス片は容赦なく俺に刺さり切傷を増やしていった。

その痛みに体を強張らせたのを知ったのか知らないのか、怪獣は大きく体を動かして俺を軽々しく吹き飛ばしていった。

「クソッ…」

背中に刺したままのナイフに目を向けて歯を食いしばる、これで攻撃する術を一つ失った…

でもそれよりも絶望すべきは俺の現状だった、思い切り壁に叩き付けられたお陰で全身に痛みが走った。指を動かすだけで痛みがその身に巡り息をするのですら苦しい。

細めた目の先には裂けたように口角を上げた余獣がいた。夕日が傾いて至る所に影を落としている、もうすぐ前回とおんなじならミナが来てくれるから、あと少し。


『また、ミナに頼る、のか?』

ウチからそっと聞こえたその声は俺を戒めるようにひんやりとした声だった。

違う、そう否定したかった。けれど事実だった。

『む、りょく』

『無、りょく』

「無力」


もうここで死ぬのかも知れない。

目の前に迫り来る怪獣の手を見て思う、俺はやっぱミナの隣には立てなかった。

「ごめん、ミナ…」

せめて死ぬ前は笑いたい。

それが俺なりの必死の抵抗だった。

瞼を落とし待つ。

かぜを切る音がすぐ横で聞こえた。体が浮いている。

「せ、んぱいっ…死なないでくださいよ!!」

俺を横抱きで抱えながら怪獣に背を向け走り出す市川。

何でここに…

思った事は無自覚にも口から出ていたようで、前を見ながら市川は俺を抱える手に力を入れた。

「先輩に助けてもらった挙句、見捨てるなんてそんなの…」

「防衛隊員になんてなれるわけないじゃないですかッ」

汗を落としながら短い銀髪が乱れようと構わず走り続ける。

「先輩に守もられてばっかじゃ、男がすたります…」

大通りまで出たその時上から声が落ちてきた。




















「よぉ、言ったな」

「芯の通ったええ青年やなぁ」


西の訛りが入ったその言い方。

「あとは俺らに任せときぃ」

そう言って腰のベルトから双刀をズルリと取り出して数度回す。


その刀も

その背中も

俺は知ってるか。



「保科、副隊長…」











ーーーーーーー✂︎キリトリ✂︎ーーーーーーーーー


間が随分と空いてしまってすみませんでした!!

ここでようやく保科副隊長を出せました…

主は関西出身じゃないので関西弁に自信がなくて、変な部分がございましたら遠慮なく言ってくださいね!!

すぐ治しますので…

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