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「へー! 水族館もあるんですね」
船から下りて歩いていると、宮島にはこんなのがありますよ~! という宣伝看板があり、私はそれを見て呟く。
島全体の案内板もあり、「ふんふん」とそれを見てから進むと広場に着き、両側には巨大な灯籠が建っていて『歓迎』と彫られてあった。
「昼頃に大鳥居を見るなら時間があるから、瀬戸内海を見渡す展望台に行かないか?」
「行きます! 愚民共を見下ろします!」
「バスローブ着て、でけぇワイングラスで酒回さねぇとな」
「ひひひ」
笑いながら歩いていると、可愛いものを発見してしまった。
「尊さん! 鹿!」
「おー、鹿だな」
歩いているとあちこちに鹿がいて、のんびりと過ごしている。
「鹿せんべいないのかな?」
「あー、ここは餌やり禁止。昔は食べ物をやってたらしいが、人からもらうのに慣れて町までうろついたり、変なもんを食って死んだりした事があって禁止になったそうだ」
「なるほど。何でもあげるの良くない」
頷くと、尊さんはチラッと私を見る。
「俺は朱里に色々与えちまってるけどな……。一応、美味いもんを食わせて毛並みを良くしてる自負はあるけど、変なもんは食うなよ?」
「失礼な、人を野良猫のように。三食昼寝つきの家猫ですよ」
「それならいいんだけどな。たまに知らん所で食って、変な男に奢られてそうで怖い」
「そんな節操のない事してませんよ。もらったらいけないご飯ぐらい、分かってます」
「……まぁ、その辺りは中村さんに一任してるけど」
「おっ、私を信頼してないんですね?」
「胃が服着て歩いてるようなもんだからなぁ……」
「ストマックゥ……」
そんな会話をしながら、私たちはまた自撮り棒を使って記念写真を撮る。
どうやらロープウェイに乗れる駅があるらしく、そちらに向かってあるく途中、目につく看板に牡蠣やらあなごやら書かれていて、目が喜んでる。
人力車も見つけ、商店街に差し掛かると思っていた以上に賑やかで、私は左右をキョロキョロ見ながら進む。
「ロープウェイまで、バスもあるんだが、歩きでいいか? せっかくだから島の中見たいと思って」
「歩きます! お昼までにお腹空かせないと!」
「お前は行動原理が食いもんで分かりやすいよ……。崖で俺が助けを求めていた時、隣にでけぇチャーシューの塊もぶら下がってたら、迷うだろ」
「迷いませんよ。人を何だと思ってるんですか」
「アカリン・ストマック・ウエムラ」
「ぐぅ……」
自分のおふざけが、自分に跳ね返ってしまった。
やがて前方に石の鳥居が見えたところで左折し、トンネルを通って右に向かっていく。
その先にある街並みが古き良き日本という感じで、京都や金沢を彷彿とさせる。
おまけに立派な五重塔まであるし、見るものが沢山あって興奮してしまう。
道をズンズン進んでいくと途中でロープウェイの案内板があり、『ゆっくり歩いて十分、ときどき走って七分』とあって面白い。
やがて、駅の名前にも因んでいる|紅葉谷公園《もみじだにこうえん》に差し掛かる。
「ここ、秋になると紅葉が素晴らしいらしい」
「へえ! 見てみたいですね。あの朱塗りの橋の所とか、写真映えしそう」
私たちは周囲の景色を見て感想を言いながらゆっくり歩いているけれど、公園の中には石階段もあるので、結構な運動になっている。
やがて公園の中をグイグイ登り、紅葉谷駅に着いた。
駅に入ってすぐ右手に券売所があり、正面にはロープウェイ乗り場に続く階段がある。
私が写真を撮っている間に尊さんが切符を買ってくれ、少し待ったあとに緑色のロープウェイに乗った。
「うわー! アガる!」
ロープウェイはぐんぐん上がって行き、背後を見ると瀬戸内海が望める。
「あっ、フェリー見える!」
「対岸の町も、結構高低差があるな」
そんな会話をしながら景色を楽しみ、十分ほどで中間地点の榧谷駅に着き、次の乗り継ぎロープウェイは、今までより大きめだ。
「うわおおおお……」
こちらはさらに高い所を上っているからか、遙か上から瀬戸内海を見る事ができる。
青い海の中に様々な形の島があり、中には栗みたいな形の島もあって可愛い。
四分の空中散歩を終えて駅に降り立つと、なんか……、天狗の伝説があるらしく、嘘をつきまくったピノキオみたいに、めっちゃ鼻の長い天狗の絵があった。
さらに上っていくと、獅子岩展望台に出て、ふうふう息を切らしながら上っていくと、絶景が待っていた!