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(ひとつひとつが長い🦆)
滝綾 「プライドが折れる瞬間」
ある委員会活動中の出来事 。
そこで私は信じ難いことを聞いた 。
私の直属の先輩である
六年の七松小平太先輩に後輩の三年次屋三之助が
何やら相談をしているようだった。
「おお!!ついに伝えたのか!!」
「えぇ、でもダメでした」
「む!なぜだ!!!」
「まだ僕を知らないからとの事です。
だから覚悟しといてくださいと言いました」
「ははっ!!流石三之助だな!
体育委員会なら“正々堂々”惚れさせてこい!!」
「はい!ありがとうございます!!」
その後七松先輩は三之助をぐしゃぐしゃと撫で
再び走るよう声を皆にかけた 。
「イケイケどんどーーん!!!」と声が上がる中
私 、平滝夜叉丸は正気を失いかけた
あの三之助が喜八郎に想いを募らせていた??
ましてや告白まで 、振られたものの
諦めずもっとその想いをぶつけるつもりとの事
そんなの 、許すわけがないだろう____
…..いやいやいや!?なぜ今私はこう思ったのだ
喜八郎はただの同室で 、だからこそわかるが
アイツはどうしようもないやつなのだぞ!?
まだ外ではいい子ぶるが私の前ではどうだ。
制服や道具はそこら辺に置いて、
私に世話をさしてくる始末だ!!
そんなやつを好きだなんて、、三之助のやつ…..
「滝夜叉丸?何ぼーっとしてわけ」
『あ、あぁ三之助。何もない!
この平滝夜叉丸が考え事なんかするはずが((
「あっそ」
『話を最後まで聞け!!!!!』
なんやかんやありその後はなんとか委員会を終え
いまは部屋の中で喜八郎とふたりっきりである。
「………滝」
そう呼ばれ声が裏返ってしまったが反応を返した
「….黙ってるけど何かあったの?」
何か 、別に何も無い。
事もない….がそれを言ってしまえば
私が喜八郎の色恋に興味があるように思われ
なんやかんやあって好きなんじゃないかと
誤解を招かねん。それだけは絶対避けねば。
『いや 、今回の委員会活動が思いの外遠くまで
走ってな。疲れてしまったのだ』
そう言えばパタンと穴についての本を閉じた
喜八郎が私の元へ近ずきギュッと抱き締めてきた
『な、、ななななにをしてる喜八郎!?!』
「なにって、いつもしてるじゃない。」
そうだ、以前の私たちは疲れた時互いに抱き合い
疲れを分散させよう。と馬鹿な迷信を立てていたな
『すまないが、もう今日は寝ようと思う。
だから離れてくれないか』
すると喜八郎はすっと離れ 、
私の目をじっと見つめる。
『….何かついてるか?』
そう言えば顔を逸らされた踏鋤に手をつけた
「……掘ってくるね」
『はぁ、?今からか??』
「そー、お前は寝てていいよ」
『だからと言っても…もう夜は遅いぞ。』
一瞬。喜八郎の顔が歪むのがわかった
「……三之助に会おうって誘われてるから」
『…….は!?』
私が動く間もなく、喜八郎は襖を締め
砂の上を動く音だけが響いた 。
もし 、私があの時喜八郎を追いかけていれば
こうはならなかったのではないか。と思う
「喜八郎なら三之助の部屋らしいぞ!
作兵衛が同室らしくて追い出されたみたい!」
『は、?!?』
「あーあ、平滝夜叉丸くんがずぅーっと
うじうじしてるから取られちゃったなぁー」
『なッ….うじうじなどしていない!!!』
「でも…..そのまま意地ばっか貼ってると
三之助に取られちゃうかもよ〜??」
『うぐ……』
タカ丸さんの言う通り。
私は今まで喜八郎への気持ちを無下にしてきた。
きっと、その仕打ちがこれだろう。
お陰様で私のプライドなんかズタズタボロボロだ
「まぁ、あの喜八郎だ。きっと気まぐれで
次屋とつるんでいるのだろう。」
「喜八郎は次屋と最近知り合ったのだろう?
なら…四年も同室な滝夜叉丸のほうが
有利じゃあないか。だから大丈夫だよ」
「自慢だらけの滝、夜叉丸がそんな状態だと
こっちまで気分下がっちゃう!!!
早く当たって挫けろ!!!!」
「滝 、僕もお前が好きだよ。
なんて言われるかもしれないだろう??」
「僕は滝夜叉丸を応援しているよ。
でも、三之助も応援してる。うーん、、、」
喜八郎の直属の先輩である立花先輩や
いつも喜八郎の罠に引っかかりすぎている
伊作先輩 、いつも喜八郎とお菓子を食べている
尾浜先輩 、喜八郎をよくからかう鉢屋先輩や
喜八郎によくしてくださる不破先輩。
その他の先輩方には大変よくしてもらった
こんなに良くしてくださっているのに
私ばっかり弱いのでは示しがつかんだろう。
決めたぞ。
私平滝夜叉丸は綾部喜八郎に告白をするのだ!
伊綾 「手中のなか」
僕があなたに惚れたのは 、きっと些細な事。
それぐらいあなたは美しくて優しかった。
でも 、その優しさは決して僕だけのものじゃない
だから 、だから僕は少しでいいから 。
その優しさが僕だけに向けられる時間が欲しかった
だから僕は今日も逢いに行く。
「失礼しまーす」
『….喜八郎?』
「伊作せんぱい 、今日は頭がいたいです」
『本当かい?じゃあ横になっていようか』
「はぁーい」
今日は頭痛で 、これでひと月に五回目の頭痛。
さっきまで元気に穴を掘っていたんだから
誰がどう見ても元気そのものなのは確かだろう。
嘘をつくことは悪いことだけど 、こんなに可愛い
嘘をつかれてしまえば
引っかかってしまうじゃないか。
こんなとこでも君の罠に引っかかっちゃうなんて
僕達 、運命なんじゃないかな。
「伊作せんぱい」
『ん…..喜八郎??』
今日は 、どんな症状で来るのかな。
なんて思いながら彼を待っていると後ろから
ガバッと抱きつかれたのがわかる 。
今すぐに振り向いて抱き返してしまいたかった。
でもそれは許されない 。
なぜなら私たちは付き合っていないから 。
男同士で愛し合うなんて許されることではないし
きっと喜八郎を追い詰めてしまいだけ 。
だから僕は喜八郎からも視線を見ないふりをする
「……立花先輩に怒られました。」
『….そうだったんだ。それはどうして??』
「ぼくがわるいんです。
委員会を忘れて穴を掘っていたから。」
『….それは悪いことをしちゃったね。
でも 、わざとじゃないんだろう??』
「わざとではないです。」
『うん 、きっと仙蔵もわかってるはずだよ。
喜八郎はそうやって努力しているから
あそこまで強力なのが作れている証拠だからね』
「!!!」
「伊作せんぱい 、すきです。」
『…….うん 、僕も好きだよ』
わかりやすく肩をすぼめて落ち込む彼の姿に
この上ないくらい心臓が苦しくなったのを
私は忘れない。
「伊作 、今すぐ医務室を開けてくれ!」
廊下を歩いている途中 、門の方から仙蔵が走っ
そう言ってきた 。
その時の仙蔵の顔はいつもに増して青白く見えた
『今ちょうど行くところだったけど 、
何かあったのかい?』
そう僕が問えば 、一瞬目を泳がせたあと
仙蔵は小さく呟いた 。
「…..喜八郎が……」
『…は?』
すぐに医務室を開けて治療の準備をした 。
まさか 、嘘だよね 。喜八郎 。
お前がこの長期実習で深手を負ったなんて…..
「…..傷は深いが命に別状はないのだろう?」
『留三郎…..そうだけど 。』
「なら 、あとは待つだけだ 。
喜八郎の野郎がこんな呆気ないわけがないだろう」
『あはは 、そうかも』
僕はあれから目を覚まさない喜八郎の体を拭いて
毎日包帯を替えて 、まじないの意味を込めて
口付けを落とすまでしていた 。
どうしてこんなにも僕が君を執着するか 。
それは 、僕が喜八郎を愛しているからだよ 。
『…..大好き 、愛してるよ 。喜八郎 。』
『僕と付き合ってよ 、起きて 。』
そう弱弱しくも彼の手をそっと握った 。
「そういうのは 、
僕が元気な時に言って欲しいです 。」
それからというもの
喜八郎は色々なところで会うことになった
図書室での勉強やお風呂で会ったりもしたし
食堂で共に食べたりもした 。
共に夜も明かすようになって、
ようやく叶ったこと。
このような関係になれたことで僕は
やっと君をこの手の中に収めることが出来た 。
雷綾 「恋は盲目?」
「…..雷蔵 、少し綾部に優しすぎないか?」
そう三郎に言われたのが昨日 。
僕 、五年ろ組不破雷蔵は絶賛お悩み中 。
(僕 、誰かだけを特別に接してきた
覚えは無いのだけど………)
でも 、相方の三郎が言うんだったら
本当だよね 。気をつけなくちゃ 。
………気をつけてたつもりだったんだけどなぁ、?
「不破雷蔵先輩!!喜八郎をこれ以上
甘やかさないで頂きたい!!」
『…….え、えぇ???』
「あーあ 、等々同室にも言われちゃってさー
雷蔵ってば本当に気づいてないわけ??」
『気づくってなんなのさ、』
「雷蔵 、喜八郎の事好きだろう?」
『え….えぇ!?はぁ????』
「まさか 、本当に無自覚だったなんて」
「怖いのだ 。」
『もう!みんなして酷い!!』
「ゴホンっ……して不破先輩 。
貴方は薄情です 。はっきりなさってください。
それほど 、思わせぶりな態度をとっていながら
どうして告白をしないのですか!?」
『どうしてって言われても、』
「…..ねぇ雷蔵 。今までの自分を思い返してみて 。
お前 、一度でも喜八郎に怒ったことある?
悩んだことある??」
『それは……』
確かに 、思い返せばそれはなかったように思う。
喜八郎が本の貸出期限が過ぎていれば 、
絶対僕が知らせに行っていたし
いつも悩んでいるお昼のABランチも喜八郎が
Bランチだったから僕もBにしていた
喜八郎が穴を掘っていれば 、いつも
叱るより応援をしたりむしろ褒めたりした
喜八郎に関することならなんだって
直感で動いていたと思う。
『…..嘘 、ぼく…喜八郎のこと、』
「やっとかよー!!
これでわかったろ??お前の気持ち!」
『うん 、ありがとう。勘右衛門 、みんな
僕 、喜八郎に告白するよ』
「おぉ 、迷いがない雷蔵もいいじゃないか』
三郎だけちょっとズレていたけど 、
みんなからの後押しのおかげでこの前記の
悩みを解決することが出来た 。
だからあとは本人に告白するだけ 。
「不破先輩?」
『…….っ 、?!』
呼び出したのはいいものの 、
喜八郎ってこんなにも可愛かったっけ … ?
こてんっと首を傾げこちらを伺う大きな瞳に
ゆらゆら揺れる高いひとつ括りの髪色は
太陽に照らされて綺麗な藤色が際立っていた
そんな 、可愛い後輩を前にして顔が
みるみる熱くなっていくのがわかる 。
でも 、男なら覚悟を決めないと 。
そうして僕は喜八郎に想いを伝えた 。
きっとうまくは伝えられていなかっただろうけど
顔を赤らめて抱きついてきた喜八郎をみて
成功したんだとわかった 。
「ねぇ聞いてよ三郎 。喜八郎がね 、
やっと僕を雷蔵先輩って言ってくれて!それに
さっきやっと立花先輩がお認めになってくれて!」
いつの日か 、私は雷蔵を色恋に
目覚めさせなければ良かったのかもしれない。と
思った 。じゃなければこんな滝夜叉丸みたいな
雷蔵にならなかっただろうに 。
「はぁ 、滝夜叉丸はいいなぁ 。
いつも一緒で 、お風呂も一緒でしょう?
僕も喜八郎と入りたい 。でも 、見たら襲って
しまいそう 。いや襲うね 。」
『怖いぞ 、雷蔵』
「喜八郎が可愛いのが悪いんだよ
大好き喜八郎 、愛してる 。
今すぐにでも会って抱き締めて
そのまま食べてしまいたい 。」
八左ヱ門に声をかけても 、
「あ”….悪い!俺毒虫を追いかける予定が!!」
『……絶対うそだろ 。』
兵助に 、勘右衛門に声をかけても
「ごめーんっ 、俺これから
兵助の作った豆腐の食べ比べがあって〜」
「よかったら三郎も食べる?」
『遠慮しよう』
そうして 、しまいに喜八郎には
「….そうさせたのは貴方じゃないですか」
『ご最も 。』
彼女にまで言われれば仕方ない 。
私が責任をもって 、卒業まで雷蔵の
自惚れ話を聞いてやるとしよう。
コメント
4件
良すぎます🙏🏻✨ 天才ですねぇ〜!👏
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