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放課後。
授業が終わり、教室に残った空気が、
緩やかに変わったころ、
僕はカバンを肩にかけて、
若井と並んで校門へ向かった。
滉斗『今日も一緒に帰れそうだね』
若井が何気なく声をかける。
元貴『……うん』
気まずいはずなのに、どこか嬉しい自分に、
僕はそっと顔を赤らめた。
2人並んで校門へ向かうと、
正門の脇に見覚えのある姿がじっと立っている。
――妹の綾華だった。
目が合うなり、綾華はぱあっと
笑顔になって駆け寄ってくる。
綾華『お兄ちゃん!若井先輩も一緒だ~』
元貴『…あ、綾華…?
何でこんなところで待ってるんだよ、』
綾華『久しぶりに一緒に帰ろうと思って!
それに――』
綾華は若井を見て、にこにこと頭を下げた。
綾華『こんにちは、若井先輩。
お兄ちゃん、今日も隣で照れてましたよ!』
元貴『ちょっと、綾華!
お前は先に帰れって…!//』
焦る僕をよそに、綾華は聞かない。
綾華『え~、だってお兄ちゃんの可愛いとこ、
若井先輩にも見てほしいし』
元貴『…やめてくれ、
ほんとに、先に帰れよ、//』
綾華『やだ!若井先輩、知ってます?
お兄ちゃん――
この間、お風呂上がりに〜!
“若井先輩がかっこよかった~”って
独り言言ってました!』
元貴『んなっ……!!!///』
僕は凍りつき、顔が瞬時に真っ赤になる。
若井は興味深そうに綾華に目を向ける。
滉斗『へえ、それ本当?』
若井の茶化す声に、
僕は『違う!そんなの嘘だから!』と
必死に言い訳する。
けれど綾華はさらに嬉々として畳みかける。
綾華『あとね――お兄ちゃん、
幼稚園だった頃から涙もろくて、
こっそりリビングで読んでる小説で、
しょっちゅう泣いてるんです!』
元貴『綾華…やめろって、
それは関係ないじゃん……!///』
滉斗『可愛いなぁ元貴』
若井はにやにやと嬉しそうに笑う。
綾華『それにほら、お兄ちゃん、
好きな人の名前を漢字ドリルの端っこに
書いちゃう癖も昔からあって――
この前“若井”って書いてあったの見ちゃった』
元貴『嘘だろ、////』
僕は項垂れ、
手の甲で口元を覆いながら俯く。
綾華は止まらない。
綾華『しかも、お兄ちゃん、家で
“告白するならどんな言葉がいいんだろう”
って、ノートに練習してたよ!現物みたもん』
元貴『綾華、ほんとに黙ってくれ…
お願いだから……!!///』
眉を目一杯下げて哀願する僕に、
若井はさらに興味津々で近づく。
滉斗『んね、それ、俺にも見せてよ』
元貴『や、やだ……!////』
僕は真っ赤な顔で後ずさるが、綾華は、
『見つけたら写メ撮って送ります!』
とにこにこ。
綾華『それから――
夜も、お兄ちゃんうるさいんですよ〜
昨日も“あんなLINE、もう死にたい…”って
布団に顔うずめてました』
元貴『綾華~!!///』
僕はついに声を上げ、
肩をすくめて頭を抱え込む。
若井は大笑いしながらそんな様子を眺めて、
滉斗『元貴、綾華ちゃんが羨ましいよ、
俺も、もっと元貴のこと知りたいもん
秘密もどんどんバラしてくれていいよ』
元貴『や、やめてよほんとに…///』
綾華『大丈夫!若井先輩、
全部優しく受け止めてくれるよ?』
綾華は得意げ。
僕はもう膝に手をついてガックリ項垂れ、
完全に妹のペース。
それでも、横で若井がそっと肩を支える。
滉斗『俺、今日からもっと
元貴のこと聞き出していいんだな?』
元貴『…これ以上、
何も出てこないようにするから…///』
滉斗『綾華ちゃん、
次はぜひ家族会にも呼んでね』
若井が真面目な顔で言うと、
綾華は『いいですよ!お兄ちゃん、
照れてまた小説で泣くかも』と笑う。
僕は顔を上げることもできずに、
元貴『…ほんと勘弁してよ…///』
そう小さく弱音を吐きながら、
でも――少しだけ。
そんな明るくて優しいふたりに囲まれて、
心の中がほんのり暖かくなるのだった。
コメント
2件
うん、可愛い尊い甘々照れ顔、最高の五点セット最高過ぎますね!!!!!!!!