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けど創は違うのかもしれない。
俺とは全く違う考えと明確な信念を持ち、その為に動いている。
「准、お前周りがみんな結婚してくから怖かったんだろ? 一生誰とも結婚できない同性愛者だから、自分だけ取り残されちゃうとか思って」
針を気付かずに踏んでしまったような、そんな痛みが胸に走った。
いやな焦燥が駆け巡る。
時間はたっぷりあったはずだが、気付けばもうマンションの駐車場に着き、車から降りてしまった。
まだ話は終わってないのに。
「俺は……! お前らが望んでんならそれでも良いと思ったんだ。例え家の為だとしても、お互いに……それなりに想い合ってんなら、いつかは本心で笑い合えて。それで、幸せになれるはずだから」
すたすたと先を歩く創の後を急いで追いかけた。
「お前の言う通り、俺は同性しか好きになれない。結婚なんてできないっ……でもお前らは違うだろ。異性を好きになれるんだから、本当に好きな相手を選ぶべきだよ。家のことは関係無しに!」
それでも創は振り返らず、エレベーターへ乗り込む。
走りはしなかったものの、早足で追いかけたから疲れて息切れする。
「創、話を聴けってっ」
「聴いてるよ」
俺の部屋の階のボタンを押し、創は面倒そうに壁に寄りかかった。
「ならどうしてほしいんだ。玲那と別れろって? そのあと俺はどうしたらいい?」
その問い掛けは、冗談じみていた。本気で俺から答えを聴きたいとは思ってない。期待なんてしてない、そんな風に思える声音だった。
創の口角はずっと上がっている。
「とにかく、霧山とちゃんと話し合おうって」
「話し合った結果がこれなんだよ」
「そんなんで納得すんなよ。何で……」
物心ついた時から知っていた存在。相対することが、何でこんなにも苦しい。
いつからこんな距離が空いた。
思い出せない。彼がこんなに変わった理由が思いつかない。
俺が……気付かなかっただけか。
エレベーターが止まり、創は目の前の廊下を歩いた。
そして用意していた家の鍵を奪い取る。
これには焦った。まだ、家に入るわけにはいかない。
話は終わってない。……あいつを、関係ない話に巻き込んでしまう。
「おい、一回落ち着いて……」
「准、玲那と別れたって俺は一生幸せにはなれないよ。好きな相手とは絶対に結婚できない」
「そんなの分からないだろ?」
とにかく止めようとしたが、彼は部屋の前に行くと素早くドアの鍵穴に鍵をさした。
「玲那も。絶対、好きな相手とは結婚できない。だから俺達は一緒になろうとしてるんだ」
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