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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第127話 〚“何も起きなかった”という報告〛
― 担任視点 ―
放課後。
職員室。
机の上に置いた
連絡ノート。
何気なく、
目を通す。
――放送委員、
特記事項なし。
――トラブル、
なし。
――体調不良、
なし。
一行一行が、
短い。
でも。
その短さに、
私は息を吐いた。
(……今日は)
(何も、
起きなかった)
それが、
どれだけ珍しいことか。
誰も、
呼びに来なかった。
誰も、
泣かなかった。
誰も、
声を荒げなかった。
それだけで。
胸の奥が、
少し軽くなる。
廊下を歩く
生徒たちの声も、
今日は、
普通だ。
変に張りつめた
空気もない。
(きっと)
(誰かが、
先に動いた)
そう思う。
私が
指示を出す前に。
注意する前に。
管理する前に。
生徒たちが、
自分たちで。
守った。
防いだ。
何も起きないように、
した。
それは。
教師として、
少し悔しくて。
でも。
とても、
誇らしい。
澪の名前を、
思い浮かべる。
海翔の、
顔も。
あの子たちは、
今日も普通に帰っただろうか。
何も知らないまま。
何も起きなかったと
思いながら。
それで、
いい。
「何もなかった」
それが、
一番の報告だ。
私は
ノートを閉じて、
静かに
頷いた。
――今日は、
大丈夫だった。
そう、
心の中で。
小さく、
安心した。