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服作りに必要な素材の一つである『イビルシープ』の体毛をゲットするために地上に舞い降りたナオトたち。
しかし、ナオト(『第二形態』になった副作用で身長が百三十センチになってしまった主人公)は今、シオリ(白髪ロングの獣人《ネコ》)と共に『イビルシープ』(気絶している)の体を枕または布団代わりにしている。
つまり、寝ているのである。
まあ、一人で二十匹ほど捕獲しているから良しとしよう。
「いやあ、今日は平和だなー」
「そうだなー。天気もいいし、いい感じに風が吹いているから、こんな日には昼寝をしたくなるよなー」
「けど、それは仕事が終わってからだなー」
「そうだなー」
彼らも『イビルシープ』の体毛が目当てなのだが、先客がいることに気づくと、血相を変えて逃げていった。
「い、いいい、今のってモンスターチルドレンだよな?」
「ま、ままま、間違いない! 見た目は子どもでもあんな風に『イビルシープ』を追い回せる存在なんて、それ以外思いつかねえよ!!」
彼らが逃げていくのを彼女たちは見逃さなかったが、彼らに敵意がないのに気づくと『イビルシープ』たちに意識を集中させた。
「……ツンツン」
「……んなあ」
ミノリ(吸血鬼)はナオトの頬を人差し指でツンツンとつついている。
少なくとも二百回くらいはやっているのだが、まるで何かに取り憑かれたように、ひたすら彼の頬を人差し指でつついている。
「あなたはいったいここで何をやっているのですか?」
彼女に文句を言いにきたのはコユリ(本物の天使)だった。
「えー、何って、ナオトのほっぺをつついてるだけよー。あー、可愛いー」
「いい加減にしてください。これ以上、マスターの安眠を妨《さまた》げるのなら、私にも考えがあります」
その直後、彼女はナオトの頬を人差し指でつつくのをやめた。
「へえ、それって、つまり、あたしと戦うってこと?」
「はい、そうです。今日こそは、あなたを倒してマスターを私のものにします」
「独占欲の塊《かたまり》であるあんたにナオトを任せられるわけないでしょ?」
「マスターの血をおやつ感覚で吸っているあなたがそれを言いますか」
「おやつ? 何言ってるのよ。あたしがそんな風に思ってるわけないじゃない」
「では、何だと思っているのですか?」
「うーん、そうねー。あたしの体に必要な栄養素の一つかしらね」
「やはり吸血鬼はこの世から排除すべきですね。もちろん、あなたもそれに該当します!」
コユリは背中に生えている二枚の白い翼を広げた。
「やっぱりあんたとは分かり合えないみたいね。じゃあね、銀髪天使。あんたの顔を見るのは今日で最後よ」
ミノリはスッと立ち上がると、右手の親指の先端を噛んで少し血を出して、それを日本刀の形にした。
「あなたは私にとって、害悪でしかありません。なので、今すぐ消えてください」
「あたしにとっては、あんたがそれよ。いつもあたしの邪魔ばかりしてるから、こういうことになるのよ」
「それはこちらのセリフです。マスターのことを独り占めしようとしないでください」
「独り占めねー。あんたはやろうと思えば、固有魔法でナオトと二人きりになれるんだから、機会はいくらでもあったと思うんだけどー?」
「私にも私のやり方というものがあります。それくらい分かってください」
「はぁ? 分からないものは分からないんだから、一から説明しなさいよ」
「それは別に構いませんが、あなたの脳では理解できないと思いますよ?」
「あー、もう頭にきた! あたしの前から今すぐ消えなさいよ!」
「奇遇ですね。私も今、あなたと同じ気持ちです」
しばらく沈黙が流れた後、二人は勢いよく前に進み始めた。
二人がお互いの体を傷つけようとしていた時、彼はそれを止めた。
「二人ともー、殺し合うのはダメだぞー」
二人は突如として目の前に現れたナオトに抱き寄せられた。
「だ、だって、銀髪天使が!」
「この淫乱吸血鬼が!」
「はいはい、少し落ち着こうなー」
彼が二人の頭を撫で始めると、二人は彼に身を委《ゆだ》ねた。
彼はゆっくりその場に横になると、自分の両腕に二人の頭を置いた。
二人の仲が良くなることはないかもしれないが、彼がいる限り、二人が本気で殺し合うことはないだろう。
そうなる前に彼が止めに入るのだから。