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昼ごはんを食べ終えた俺たちは、土産物店を見てみることにした。まだ来たばっかりで、選ぶのには早かったかもしれないけど、いい時間つぶしにはなると思う。
俺たちが来ることは言っていないから、メンバーへのお土産はいらないかな、と思っていた。しかしあろまは、それっぽいお菓子をいくつか物色している。やっぱり優しいやつなんだな。
「あいつらになにか買うの?」
「んー…まぁ…」
「俺ら二人で渡すのもおかしいかな」
「だろうね」
「俺が買っておくからさ、別の見てなよ」
さっきまであろまが持っていたお菓子をいくつかかごに入れていく。撮影のときにでも食べられたらいいな。一方離れたところで小さなストラップを見ているあろま。またご当地グッズを買い漁るのではと思っていたけど…
「なにみてんの」
「お前いたわ」
あろまが手にしていたのは、ボーッとした顔のウミガメのストラップ。
「えっ、俺?」
「お前に似てない?」
「俺のイメージってカメなの?」
「いいじゃん、可愛くて」
「かわいい…ねぇ…」
近所に水族館もあるらしく、海沿いだからそういうお土産もたくさん置いている。だからってその中からこれが俺だって言うのは…
ちょっと悔しいので、ウミガメの隣にぶら下げられているシャチを取った。少し険しいような、怒った顔をしている。
「じゃあこれお前な」
「俺、群れで行動しねぇよ?」
「天敵が人間なの、合ってるだろ」
「こいつら、買う?」
「あろま、こういうのそんなに好きじゃなさそう」
ストラップを元の場所に戻し、会計を済ませる。まだ見てるようなので、俺は先に店を出た。
その後も、いろんな店を見た。土産物店には絶対にある、模造刀だったり、キラキラした小さな剣だったりと、俺たち中二病にはうってつけの子供じみたものを見て回る。店先で構えてみたり、切られるふりをしたり。子供の頃はこういうのにやけに惹かれて、ことあるごとに買っていたっけ。今となっては買うことはないけれど、懐かしいなぁと感傷に浸る。
「えおえお、あれ」
「ん?」
通りから外れた砂浜に、小さな鐘がぶら下げられていた。周辺を調べているときに見つけたフォトスポット。あの鐘を鳴らすと恋愛が成就するというありふれたジンクスがあるようだ。
「俺鳴らすからさ、写真撮れよ」
「えっ、いいの?」
「そんな撮りたそうな顔して何言ってんだ。ああいうのってどうせジンクスかなんかあるんだろ?」
まぁそんなもの俺は信じてないけど、と付け加えて歩いていく。俺はその歩く姿とか、鐘を引っ張るところとか、色んな写真を撮ってみた。その表情も、満更ではなさそうで、やっぱり少し笑っている。
「どう?パワー感じた?」
「わかんねぇ。お前もやってみたら?」
「と言ってもなぁ、鳴らすだけでしょ?」
「うん」
大体二人で鳴らすとかそういうものだと思うんだけど…とりあえず鳴らしてみる。
「こういうのって恋人でやるのが普通なんでしょ。俺らがやるのは違うよな」
「まぁね。でもほら、いい感じに撮れてる」
「マジで?見せてよ」
さっき撮った写真を本人に見せてみると、すぐに怪訝な顔になってしまった。
「なんか…」
「どうした?」
「お前さ、撮るとき何考えてんの」
「何っていうか…普通にきれいに撮れたらいいなって思いながらだけど…」
「それだけ?」
「そうだよ」
俺の写真の何に違和感を感じたのか説明もないまま、俺の少し前を歩く。その速度がいつもより遅かったのには気づいていたが、特になんの指摘もしなかった。
その後も何件かの店を見て回ったり、ご当地スイーツを食べ歩きしてみたり、とても充実した一日を送ることができた。
夕方になり、夕焼けがよく映える黄昏時。旅館に向かって来たときと同じ砂浜を歩く。もう一日が終わろうとしていた。あっという間だったなぁ。そう思うとどこか寂しい気持ちになって落ち着かない。
To Be Continued…