テラーノベル
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仕事の現場を出て、夜の街を滑るように走るタクシーの車窓に寄りかかる。街灯の光が幾重にも流れては消えていくのを眺めながら、俺は小さく息を吐いた。スマートフォンを開いても、彼からの連絡は一向に届いていない。
(また、かな。)
楽屋でのちょっとしたやり取り、撮影の合間の空気。思い返せば、今日ずっと彼はどこか素っ気なかった。理由に心当たりがないわけではない。廊下で直近まで共演者だった女性と鉢合わせて少し長めに談笑していた時、ふと視線を感じて振り返ると、角の向こうに彼の背中が一瞬だけ見えたのだ。
タクシーから降り、エレベーターに乗る。部屋のドアを開け、静かに鍵を回した。
「ただいま。」
靴を脱ぎながら声をかける。いつもなら《おかえりー》とリビングの奥から返ってくる筈なのに、今夜は静まり返っていた。静けさが部屋の隅々にまで満ちている。
首を傾げながら廊下を渡り、リビングへ足を向ける。間接照明の柔らかな光の中に、ソファに深く身体を沈めた彼──岩本くんの姿があった。手元のスマホの画面を見つめたまま、俺の姿を見ようともしない。
「…おかえり。」
掠れるような小さな呟き。ちら、と俺の足元だけを一瞥して短く口にすると、彼は再び視線を戻した。
やっぱり、と心の中で思う。鞄をソファの片隅に置き、俺は迷わず彼の隣に腰を下ろした。少し沈み込むクッション。横顔を覗き込むようにじっと見つめるが、彼は意固地なまでにこちらを見ようとしない。
「何?疲れてる?」
「別に。」
遮るような短い返答。視線はスマホの画面に固定されたまま。機嫌を損ねたときの彼は、いつだってこうだ。ただでさえ少ない言葉の数を極端に減らし、自分だけの堅固な城に閉じ篭ろうとする。
グループでは誰より頼もしいのに、俺のことになると驚くほど分かりやすい。 そんな彼の不器用な愛おしさに、口元が緩むのを抑えきれなかった。
「廊下で女優さんと話してたの、見てたでしょ?」
尋ねると、彼の指先がピタリと止まった。数秒の重苦しい沈黙の後、彼は諦めたようにスマホを伏せ深く小さな息を吐き出した。
「………見てた。」
「やっぱり?」
「楽しそうだったじゃん。」
責めるような強い声じゃない。ただ、胸の奥で抑えきれずにぽろりと溢れてしまったような、切ない本音。その素直さにふっと笑みが零れる。
「ねぇ、何で笑うんだよ。」
俺の緩んだ表情に気付いた彼が、少し眉を顰めて不満気に言った。
「だって、岩本くん分かりやすいんだもん。」
「そうでもねぇだろ。」
「ううん。すっごい分かりやすい。」
むっとした顔で視線を逸らそうとする彼の膝に、俺はそっと自分の手を重ねた。
「世間話しただけだよ?」
「…解ってるから。もういいって。」
「何、モヤモヤしたの?」
問いかけに、言葉の返事はない。けれど、俺の手の下で彼の膝の筋肉が僅かに緊張して固くなった。その沈黙こそが、何より雄弁な答えだった。俺は身体を少し寄せ、彼の横顔を覗き込む。
「これだけ言わせて?」
彼が、観念したようにゆっくりとこちらへ視線を向けた。その瞳は少し揺れていて、不安と照れ臭さが入り混じっている。
「俺の恋人は、岩本くん。」
「………。」
「大好きなのも、岩本くん。」
遠回しな表現は使わず、一番伝えたい本当のことだけを真っ直ぐに言葉にして渡す。彼は困ったように眉を寄せ、呆れたような溜息混じりに小さく笑った。
「お前さ…。」
「ん、?」
「そういうの、さらっと言うよな?」
「だって、本当のことだし。」
間髪入れずに返すと、彼は一瞬だけ言葉を失い、参ったなというように片手で顔をすっぽりと覆ってしまった。
「今日だって、仕事が終わって一番に会いたいって思ったの、岩本くんだし。」
「…めめ。」
「?…何?」
「それもう無理、反則。」
「何が?」
すまし顔で首を傾げてみせると、彼は顔から手を外し、すっかり毒気の抜けた柔らかい瞳で俺を見つめ返した。
「俺もう何も言えないじゃん。」
声に含まれていた刺々しさは完全に消え去り、そこには甘い降参の響きだけが残っていた。俺はふっと微笑み、両腕を大きく広げる。
「こっち来て?」
「!…お前さ…無意識でそれは、マジ狡いって。」
低い吐息とともに、がっしりとした体躯がそのまま俺の上に覆い被さってきた。ソファの上で力強く抱き竦められ、視界が一瞬で彼の胸元で埋まる。首筋に落とされる熱い息と、肌の奥から滲み出るような強い独占欲。背中に回した俺の手に、彼の肉厚で逞しい肩の筋肉がダイレクトに伝わってきた。
「岩本くん、」
「…ん?」
「好き。」
耳元で静かに囁くと、彼は照れ隠しのように、俺の肩へぐっと額を預けてきた。
「………俺も。今日、抱いていい?」
聞こえるか聞こえるかくらいの、少し低くて震えた声。俺の胸を焦がすような嫉妬も、隠しきれない甘えも、全部俺だけに向けられている。
「ふふ、勿論いいよ。感じた不安、全部ぶつけて?」
そう答えた瞬間、彼の目の奥で揺れていた甘さが一変し、深く昏い執着の色が宿った。
コメント
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いわめめ💛🖤😆🥰 ひかるの嫉妬もめめが上手に 包みこんでくれる感じがぁ😚 ストレートに言葉を伝えてくれるめめが素敵😍
もぉ〜😆雫さんったらぁ💘 💛🖤💛どっちも好きぃ♪ ひぃ💛の独占欲も、めめ🖤のメロメロな甘やかしもリバでOK!な感じで(*ノェノ)キャー✨ってなりました!! ありがたや👏

でも、嬉しいです🖤💛 次?は、甘々シチュエーションもいいなぁ💞いや…激しいのも… と、妄想が😅スミマセン😅
あずさ
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くろ
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雫
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