テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
※戦争表現・ドリームコア表現あり
パリン、パリン。
ガラスが割れる、お洒落で不気味な音。
だれもいない、ピンク色の海のうえ。
見上げると、パステルブルーの空から、神戸の風見鶏が、ぐるぐると高速で回転しながら降ってくる。
「……あ、れ。なぁ、京都、どこおるん?」
声をだしても、だれにも届かへん。
自分の指先を見ると、爪の間から血の代わりに、キラキラ光るガラスの破片が溢れ出てきとる。
そとの状況もわからない。
ハイカラだった俺の街も、自慢の夜景も、全部爆撃でバラバラになった。
現実にいる俺の身体が、一瞬で木っ端微塵に吹き飛んだんや。
頭の奥で、ジャズの陽気なトランペットの音が、耳鳴りみたいにキーキー高く引き伸ばされて鳴り響いとる。
視界の端に、パチパチとシステム文字が激しく明滅する。
『⚠️警告:物理衝撃によるオブジェクト【兵庫】の結晶化・粉砕が開始されます』
「あは、……俺、バラバラになっちゃうやんか……」
どくっ。
心臓が跳ねた瞬間、激しい痛みが全身を襲った。
身体の皮膚が、おでこから順番に、バキバキと鋭いガラスの結晶に変わっていく。
内臓も、骨も、全部お洒落な透明のガラスになって、中からパリンパリンと砕けて床に飛び散る。
いたぃ…。いたいなぁ、これ。
ちいさな画面を、すでにガラスの破片と化してボロボロと崩れていく指で、ぽちぽち、叩く。
『京都、ごめん。先いくわ』
送信ボタンを押そうとした瞬間、俺の右腕が手首から先、重力に耐えかねて床に落ちて、粉々に砕け散った。
スマホの画面も、飛び散った俺の破片でグサグサに突き刺されて動かなくなる。
[エラー:送信主の肉体パーツの欠損。処理を中断します。]
「……っ、きょ、う……と……」
視界が、幾何学模様のガラスのひび割れで埋め尽くされていく。
さいごにチラリと、真っ赤な血を流しながら俺の破片を必死にかき集めてる、あいつの狂った笑顔が見えた気がした。
「……す、き、やった、で……」
ぱりんっ。
派手な音を立てて、兵庫の存在は完全に粉々になり、光る砂のようになって海へと溶けていった。
[通知:サーバー【兵庫】の物理粉砕を完了。未送信の思念データをデリートします。]
コメント
3件
読了しました。兵庫という“土地”が擬人化され、物理的な破壊をガラスの結晶化というドリームコア的なイメージで描く構造が非常に美しく、同時に痛ましいですね。「京都、ごめん。先いくわ」と送れなかった最後の一文に、戦争が奪う“未完了の想い”が凝縮されていると感じました。システムエラーと肉体の消失がリンクする演出も巧みで、余韻が深く残ります。
映画見たい
14