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FORSAKENのサバイバーロビー。
そこには、いつものような騒がしい時間が流れていた。
「1xコーチ、この前教えてくれた逃げ方でキラー撒けたよ!」
「だから言っただろ。お前らは逃げ方の基礎がなってないんだよ」
「でも褒めてるよね?」
「褒めてねぇ」
「炎の色、めっちゃ嬉しそうだけど」
「これは照明だ!!」
焚き火を囲み、サバイバーたちと影の中の1x1x1x1(1x)がいつものように騒いでいる。
かつて最凶のキラーと呼ばれた存在は、今では完全にロビーのスパルタ講師兼おやつ回収係になっていた。
――しかし。
その穏やかな時間を。
「……壊してあげようか。」
冷たい声が切り裂いた。
ザザザザッ……!!
空間にノイズが走る。
ロビー中央に巨大なモニターが出現した。
そこに映ったのは――
赤いシルクハット。
不機嫌そうな笑顔。
スペクターだった。
「やあ、諸君。」
スペクターは椅子に座ったまま、楽しそうに指を鳴らす。
「随分と仲良しごっこが進んでいるみたいだね?」
「……スペクター。」
シェドレツキーの表情が険しくなる。
「今日は何をする気だ。」
「何って?」
スペクターはニヤリと笑う。
「真実の公開だよ。」
パチン。
指を鳴らした瞬間。
ロビーの中央に巨大なホログラム映像が浮かび上がった。
そこに映ったのは――
黄金の装飾を身に纏った、かつてのシェドレツキー。
テラモン。
今とは違う。
自信に満ち溢れ。
いや――傲慢だった。
「僕は完全な存在だ。」
過去のシェドレツキーが言う。
「弱さも、迷いも、醜い感情も必要ない。」
そして。
その隣にいた存在。
まだ怪物ではなかった1x。
笑って。
怒って。
泣いて。
シェドレツキーの隣にいた。
しかし――
「不純物だ。」
過去のシェドレツキーの言葉。
その瞬間。
1xの表情が凍る。
封印。
孤独。
憎悪。
そして――
怪物へ。
映像は、1x1x1x1が生まれた悲劇を映し出していく。
#bl注意
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「……。」
シェドレツキーは俯いた。
握った拳が震える。
(……やっぱり、そうだ。)
(俺は……)
(みんなに知られるのが怖かったんだ。)
「見ただろう?」
スペクターの声が響く。
「君たちが信頼しているリーダーの正体は、過去に自分の半身を切り捨てた愚かな存在。」
「そして彼が生み出した怪物こそ、1x1x1x1。」
「つまり――」
スペクターは笑う。
「君たちの英雄と守護神は、どちらも元凶なのさ。」
沈黙。
シェドレツキーは目を閉じた。
(……終わった。)
(みんな、失望する。)
その瞬間。
ドガァァァァン!!
爆発音。
シェドレツキーの影が大きく揺れた。
「……え?」
次の瞬間。
濃緑色の炎が噴き上がる。
「うるっせぇぇぇぇぇぇッ!!」
影から飛び出した1x。
その手にはヴェノムシャンク。
一直線にモニターへ投げつける。
ガシャァァン!!
スペクターの映像が大きくひび割れた。
「なっ……!?」
「勝手に人の過去を上映会にしてんじゃねぇぞ赤帽子!!」
1xはシェドレツキーの前に立つ。
そして。
サバイバーたちを見る。
「おい!!」
「よく聞け!!」
「こいつが昔クソみたいな奴だったことなんざ!!」
「俺が!! 一番知ってるんだよ!!」
シェドレツキーが目を見開く。
「1x……」
「俺を捨てたことも!!」
「完璧ぶって周り見えてなかったことも!!」
「全部!! 俺が一番ムカついてんだよ!!」
1xは胸の黒い肋骨をドンッと叩く。
「だからな!!」
「こいつを責める権利がある奴は――」
「俺だけだ!!」
ロビー。
静寂。
「……え?」
ヴェロニカが首を傾げる。
1xはさらに続ける。
「俺が一生バカって言う!」
「俺が一生文句言う!」
「俺が一生こいつの隣にいて監視する!」
「だからお前らが勝手にこいつを裁くな!!」
「シェドレツキーを傷つける奴は俺が許さねぇ!!」
…………。
数秒。
沈黙。
そして。
「……ぷっ。(^.^)」
ヴェロニカが吹き出した。
「ちょっと待って1x。」
「何だよ!!」
「それ……」
「めちゃくちゃ独占欲じゃん。」
「違う!!」
「いや完全にそうでしょ。」
「違うって言ってんだろ!!」
「『俺だけが怒る権利がある』って、ものすごい身内判定じゃない?」
「…………。」
1x。
反論できない。
炎が赤くなる。
「……うるせぇ。」
小声。
「照れてる?」
「燃やすぞ。」
⸻
シェドレツキーは俯いたままだった。
しかし。
「シェドレツキー。」
ヴェロニカが肩に手を置く。
「昔のあんたが間違ってたことくらい、もう分かってるよ。」
「……え?」
「だって今のあんたは、その間違いをずっと後悔してるじゃん。」
ビルダーマンも頷く。
「過去の君じゃなくて、今ここにいる君を僕たちは見てる。」
「君は僕たちを何度も守ってくれた。」
「それが全部だよ。」
シェドレツキーの目から、静かに涙が落ちる。
「……俺を……許してくれるのか。」
ヴェロニカは笑った。
「許すも何も。(°ω°)」
「今さら仲間やめる理由なんてないでしょ。」
その言葉に。
シェドレツキーの中で何百年も残っていた鎖が。
静かに砕けた。
「……ありがとう。」
その横で。
1xはそっぽを向く。
「……ふん。」
「1x。」
「なんだ。」
「ありがとう。」
「……。」
「お前がいてくれてよかった。」
「……。」
数秒。
影がボフッと燃える。
「……バカ。」
「え?」
「そういうこと急に言うな。」
1xは影の中へ潜る。
「……顔熱くなるだろ。」
小さな声。
でも。
誰にも聞こえていた。
⸻
モニター越し。
スペクターは固まっていた。
「…………。」
「…………。」
「……違う。」
頭を抱える。
「違うんだ。」
「僕は過去を暴露して、仲間割れを起こす予定だった。」
「罪悪感。」
「疑念。」
「裏切り。」
「そういう最高の絶望を……」
スペクターは映像を見る。
そこには。
シェドレツキー。
1x。
サバイバーたち。
笑顔。
「……なんで。」
震える声。
「なんで過去を暴いたら、絆が強くなるんだい……?」
しばらく沈黙。
そして。
「……このロビー。」
スペクターは深いため息を吐いた。
「FORSAKEN史上、一番攻略不能なのは……」
「キラーじゃなくて、こいつらの絆じゃないか……?」
通信終了。
ザザッ……。
最後に映ったスペクターの顔は。
完全に疲れ切っていた。
こうしてまた一つ。
スペクターが仕掛けた「絶望の試練」は――
シェドレツキーと1x、そして仲間たちの絆を強化するだけの結果に終わったのだった。