テラーノベル
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夜が深まるにつれ、翔は仲間を探すために街の中をさまよっていた。
暗い路地や静かな公園、どこに行っても人影は見当たらない。
心の中には不安が広がり、仲間が次々と鬼に捕まっているのではないかという恐怖が募った。
「智也…どこにいるんだ…」
翔は何度も呟きながら、仲間たちを探し続けた。
仲間との絆を感じる一方で、自分一人ではどうしようもない孤独感も押し寄せてきた。
その時、耳に入ったのはかすかな声だった。
「助けて…誰か…助けて…!」
翔は声の方へと急いだ。そこには、女生徒の麻衣が座り込んでいた。
彼女の目には涙が浮かび、恐怖で震えていた。
「麻衣!どうしたの?」
翔は彼女の元に駆け寄った。
「私…みんなと一緒にいたのに、分かれちゃったの。鬼が来て…逃げられなかった。」
麻衣はすすり泣きながら言った。
「大丈夫、一緒にいるから!」
翔は彼女を励まし、周囲を警戒しながら進むことにした。
二人は街の片隅を歩きながら、仲間たちがどうなっているのかを気にした。
翔の心の中には、仲間が次々と失われていく恐怖が渦巻いていた。
「私、どうしよう。もう、怖くてたまらない…」
麻衣が呟く。
「みんなを探さないと、私たちも捕まるかもしれない。頑張って、麻衣!」
翔は必死に言った。
彼らは再び街を探索し、他の生徒を探し続けた。
しかし、暗闇の中で彼らの声は消え、恐怖だけが増していく。
心の中の不安が一層強まる中、突然、近くの路地から響く奇妙な音に翔の耳が反応した。
「この音は…?」
翔は思わず立ち止まり、麻衣に耳を傾けた。
「聞こえる…?何かの音…」
麻衣も不安そうに目を大きく開いた。
音はますます大きくなり、徐々に近づいてくる。
翔は思わず手を握りしめ、目を閉じた。
恐ろしい光景が頭に浮かぶ。
鬼の影が彼らの前に現れるのではないかと。
しかし、その音の正体は想像とは異なった。
目の前に現れたのは、倒れている生徒たちだった。
翔は驚愕し、その場から動けなかった。
「みんな…!」
翔は駆け寄った。
そこには、智也が倒れていた。
彼の目は空を見上げ、意識を失っているようだった。
「智也!どうしたの?」
翔は智也を揺さぶったが、反応はなかった。
麻衣も震えながら近づいてきた。
「彼は…捕まったの?」
麻衣が恐る恐る言った。
翔は心が締め付けられる思いだった。
彼の親友が、彼の目の前で倒れている。
どうしてこんなことになったのか、彼には理解できなかった。
絶望が心に重くのしかかる。
「智也、起きて…お願い!」
翔は何度も叫んだが、彼の声は虚しく響くばかりだった。
その時、背後から音がした。
翔は振り返ると、鬼が姿を現した。
目がギラリと光り、彼に向かって一直線に突進してきた。
翔は恐怖で動けなかったが、麻衣が彼の手を引いた。
「逃げよう!翔、早く!」
麻衣の叫びに反応し、翔は智也を見捨てるわけにはいかないという気持ちと、逃げなければならないという気持ちが交錯した。
「待って、智也を助けなきゃ…!」
翔は強く願ったが、鬼の足音が近づく。
「今は無理!私たちが捕まったら、彼も助けられない!」
麻衣が必死に言った。
その瞬間、翔は決断を下した。
逃げることが、智也を助ける唯一の方法だった。
彼は麻衣の手を握り、走り出した。
「ごめん、智也…!」
翔は心の中で謝りながら、彼らは逃げ出した。
捕まらないように、暗闇の中を必死に駆け抜けた。
その後、翔と麻衣は隠れる場所を探して校外へと逃げ出した。
二人の心には、智也を救えなかったことへの罪悪感が重くのしかかっていた。
「どうしよう…私たち、何をすればいいの?」
麻衣が不安そうに聞く。
「まずは他の仲間を探そう。どこかに隠れているはずだ。」
翔は答えたが、自分自身も不安でいっぱいだった。
彼は心の中で決めた。
必ず仲間を救い出す。
たとえそれがどんなに困難でも、仲間を見捨ててはいけない。
彼の心には、その強い決意が芽生えていた。
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