戦に敗れ、村は占領された。
村人の多くは捕虜となり、一部は奴隷として連れ去られた。
ユウとリオは「戦場で目立った活躍をした」と評価され、敵国の兵士団に半ば強制的に組み込まれることになった。
兵士団の詰所で、剣を腰に下げた教官が言い放つ。
「お前らは今日からこの国の兵だ。死ぬまで戦え。逃げれば斬首だ」
リオは小声でユウに囁く。
「……捕虜にされるよりマシか……」
ユウは冷たい視線で返す。
「選べる道なんて最初からないさ」
兵士団での訓練は苛酷を極めた。
朝は日の出と共に起床、木剣を振り続ける。
昼は重装備での行軍、夜は組み手。
倒れた者には容赦なく鞭が飛んだ。
「腰を落とせ! 足を止めるな!」
「剣は叩きつけるんじゃない、突き抜けろ!」
教官の怒号が響き渡る。
ユウは汗だくになりながらも剣を振った。
その動きは他の新兵たちとは違っていた。
教官は目を細める。
「……あいつ、妙に筋がいいな」
組み手の時間。
「次はユウだ!」
相手の兵士が斬りかかってくる。
ユウは冷静に受け流し、相手の隙を突いて腹に木剣を叩き込む。
「ぐっ……!」
兵士が倒れる。教官は口角を上げた。
「ほう……いい反応だな」
ユウは無言で剣を納めた。
(俺が上手くなってるんじゃない……剣王の力が導いてるんだ)
ある日、兵士団の副長が言った。
「兵士だけでなく、外での実戦経験も積め。冒険者ギルドに登録しろ」
冒険者ギルド――
そこは、兵士とは違う「自由な戦士たち」の集まりだった。
広い酒場のような建物、壁には依頼書がびっしりと貼られ、テーブルには剣士や魔法使いが肩を組んで酒を飲んでいる。
受付嬢が笑顔で声をかける。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。新人さんですね?」
ユウは無言で頷いた。
リオが恐る恐る訊ねる。
「俺たちでも……やれるんですか?」
「大丈夫。最初は誰だってEランクですから」
ランク制度の説明を受ける。
Eランク:雑用、護衛、下級魔物討伐
Dランク:盗賊退治、森の魔物の巣掃討
Cランク:小隊規模での依頼、領地防衛
Bランク:上位魔物討伐、国を跨ぐ任務
Aランク:戦場級の脅威と渡り合う実力者
Sランク:国中に名を轟かせる英雄
SS・SSSランク:大会を勝ち抜いた「国の十傑」
リオは口を開けて言った。
「すげえ……俺たち、ここから成り上がれるのか?」
ユウは目を細める。
「……力があれば、な」
彼らの最初の依頼は「森の魔物退治」だった。
対象は狼型の魔物《ダスクウルフ》。
普通の狼より大きく、牙は鉄をも噛み砕くといわれている。
リオが怯えながら囁く。
「おいユウ……マジでやれるのか?」
ユウは剣を構えながら冷静に答える。
「怯えるな。恐怖で動きが止まった奴から死ぬ」
森の中、低い唸り声が響く。
黒い影が飛びかかってきた。
「来るぞッ!」
ユウは咄嗟に身を低くし、剣を振り抜く。
ギィンッ!
刃が魔物の牙とぶつかり、火花が散る。
衝撃で腕が痺れるが、踏み込みと同時に腰をひねり、刃を滑らせる。
「斬り抜けろォッ!」
ズバァッ!
ダスクウルフの首が斜めに裂け、血飛沫が散った。
リオは目を見開いた。
「……お前、本当に新人かよ」
ユウは剣を振り払って血を飛ばし、淡々と答える。
「俺はただ、生き延びるために戦ってるだけだ」
冒険者としての決意
ギルドに戻り、報酬を受け取った。
金貨数枚――だが、それは確かに「力で稼いだ報酬」だった。
リオは笑顔を浮かべる。
「俺たち……本当に冒険者になったんだな!」
ユウは静かに剣を見つめ、低く呟いた。
「剣の道は……ここから始まる」
その瞳には、戦場で培った生存本能と、剣王としての力を極めようとする決意が宿っていた。
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