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森の魔物討伐を終えて数日後。冒険者ギルドの掲示板に大きな紙が貼られた。
> 【告知】
新人冒険者ランク昇格試験(E → D)を実施する。
試験内容:パーティでの協力任務
成功した者は、Dランクに昇格する。
受付嬢が笑顔で説明する。
「新人の皆さんは、まずこの試験を突破しないと先に進めません。パーティを組んで挑戦してくださいね」
リオがユウに振り返る。
「なぁ……パーティって、俺たち二人だけじゃダメなのか?」
ユウは無表情のまま答えた。
「人数が足りないなら、誰かと組むしかない」
その日の夕方、試験参加者を集めたギルドの広間。
そこには同じように昇格を狙う新人冒険者たちが集まっていた。
ひときわ目を引いたのは、赤い髪をポニーテールにした少女。
軽鎧を着て、腰に二本の短剣を差している。
「アンタたちも試験参加者? 私はミラ、盗賊志望よ。よろしく」
リオが気さくに答える。
「おお、盗賊か! 動き早そうだな」
ミラは笑って肩をすくめる。
「まぁね。正面突破は苦手だけど、偵察や罠探しなら任せて」
さらに、その後ろからローブ姿の青年が現れた。
「僕はレオン。魔法使いだ。攻撃魔法はまだ修行中だけど、回復なら少しはできる」
ユウは一瞥して言う。
「……足りない部分を補えるなら、それでいい」
リオが慌ててフォローする。
「あ、こいつ無愛想だけど悪気はないんだ。俺はリオ、こっちがユウ!」
ミラはクスクスと笑った。
「ふーん……無口な剣士って感じね」
こうして、即席の四人パーティが結成された。
試験の舞台は、街の外れにある古代遺跡。
依頼内容は「遺跡内に棲みついた魔物を討伐し、指定の証拠品を持ち帰ること」。
遺跡に入った途端、湿った空気と獣の臭いが漂ってきた。
「油断するな。……ここは罠もある」
ユウの低い声に、ミラが前に出る。
「任せて。こういうのは盗賊の出番でしょ」
ミラが手際よく仕掛けを外す。
「よし、通っていいわよ」
リオは目を丸くする。
「すげえな……俺じゃ絶対気づけなかった」
奥に進むと、巨大なコウモリ型の魔物《ブラッドバット》が群れをなして襲いかかってきた。
「来るぞッ!」
ユウが剣を抜き、前に出る。
鋭い牙を避けつつ、斬撃で翼を裂いた。
「リオ、後ろを任せる!」
「おうっ!」
リオが盾で仲間を守り、ミラは素早く背後から魔物の喉を切り裂く。
「はい、一丁上がり!」
だが、別の一体がレオンに飛びかかった。
「くっ……!」
瞬間、ユウが横から斬り込み、魔物を地面に叩き伏せる。
「遅れるな。守り切れなければ死ぬ」
レオンは震えながらも頷いた。
「……ありがとう」
戦闘は数分で終わった。
だが、四人は互いの役割を理解し合えた。
最深部で魔物を討伐し、証拠品を入手。
ギルドに戻ると、受付嬢が笑顔で迎えた。
「おめでとうございます。四人ともDランク昇格です!」
リオがガッツポーズを取る。
「やったな! これで一人前の冒険者だ!」
ミラはウインクしながら言う。
「悪くなかったわね、アンタたち」
レオンも微笑んだ。
「僕……仲間と戦うの、悪くないって思えたよ」
ユウは静かに剣を握り直す。
(仲間……か。俺には不要なはずだが……)
だが、その心の奥で、確かに小さな変化が芽生えていた。