私が好きになった彼は
男女問わず
誰にでも人気物。
絶対に叶わない恋だった。
この苦しい思いをどこに向けたらいいんだろう。
いつも視線で追っている彼は
いつも誰かと話していて
いつも楽しそう。
いつか話せたらなぁ
なんて、
叶わないことを考えたりしてみるけど、
余計苦しくなるだけ。
笑っちゃう…w
神様…。
どうか、
私と彼を
運命の赤い糸で
繋いでください。
解けないように。
絡まらないように。
固く、ね?
そんなこと考えたら、
彼が話しかけてくれた。
こんなに嬉しいこと、
あっていいのかな?
心臓が飛び跳ねて、
体の体温が一気に上がって、
きっと私の顔は
真っ赤だっただろうな。
『あーかねちゃん』
「ッは、はいッ…!」
私の名前を覚えててくれたなんて。
一生分の運を使い切ったかも。
『それ、なんの本?』
「え、えと、──────っていう…恋愛小説です…ッ」
『へ〜面白そう!』
「え…ッ…」
こんなに沢山話してくれる。
明るい笑顔で。
みんなに振りまく、
太陽みたいな笑顔で。
「よ、よかったら…」
「ねぇこーすけー?!そんなこと話してないでうちらと話そーよー!」
「ッ…あ…ッ…。」
『あー…』
「ど、どうぞ行ってきてください…!私なんかより高野さん達みたいな明るいこと話した方が楽しいですよね…!」
『え?いや』
「わざわざ話しかけてくれてありがとうございましたッ!私がひとりでいたから気を使ってくれたんですよね…!失礼します…ッ…。」
『ね、ちょっと、まっ』
「こーすけってばぁ!」
『ッ…』
私はそのまま走り去った。
辛かった。
苦しかった。
私だって、
彼と沢山話したい。
もっと、
沢山、
ずっと、
話したい。
話したかった…。
「ッ…うぅ…ッグスッ…。」
なんで、
話しかけてきてくれたのに、
邪魔しないでよ…。
せっかくのチャンスを、
壊さないでよ…!
悔しいッ…!
私だって…
あの子たちみたいに話せてたら、
明るかったら、
自分に自信があったらッ…!
彼と…
光介くんと沢山話してた…!
…だったら
自分に自信をつければいいのか…
おしゃれして…
それで、話しかけて…
そしたら…ッ
私と沢山話してくれる…?
「ッ…光介くん…ッ…」
『なーに、呼んだ?』
「え…ッ…?!」
ふと、漏れてしまった声。
彼の名前が口から出た。
そのとき、
頭の上から、優しい、
明るい、
彼の声が聞こえた。
「な…んで…ッ…」
『あいつら、酷いこと言ってたから…ごめん…。』
「ッ?」
なんで…?
「なんで、光介くんが謝るの…?」
『だって、俺が話しかけたから酷いこと言われただろ…?
俺が話しかけなかったら朱音ちゃんがあいつらに罵られることは無かったのに…。』
「ち…違う…ッ…
私がッ…私が地味だから…あんなこと言われて当然だよ…
だから…謝んないでよ…ッ…。」
光介くんは何も悪くないのに謝り続ける。
そんな彼を見てまた、苦しくなる。
自分のせいで謝らせてしまった。
「ごめッ…なさ…ッ…グスッ」
『な、泣かないでよっ、ねぇ…泣かないで…』
あぁ…また…。
困らせてしまった…。
「ッ…う…うぁぁぁん…ッ…。」
でも、泣きやめない。
涙が止まらない…。
ザワザワ
泣いてる私を見て、
周りの人達は光介くんを避難するような目で見る。
『ッ…あ、っちいこ…?』
「コクコク」
上手く声が出ず、
頷くしかできなかった。
『泣くほど、嫌だった?』
「フルフル」
『じゃあ、なんで泣くの…?』
「こ、すけくん、にッ…」
『俺…?』
「謝らせちゃったッ…から…グスッ」
『ぷっ』
吹き出すような声が聞こえた。
『…そんなことで泣いてたの…?』
同時に、彼は聞いてきた。
「…?」
『俺が悪かったんだから、謝って当然でしょ?』
「でもッ…」
『もういいってw』
そう言って、
太陽みたいな笑顔で笑ってくれる。
やっぱり、
「好き…」
好きだなぁ…。
『…え?』
「…え?」
『い、ま…』
「…?……!えっあのっ、違っ」
嘘…!
声に出てた…ッ?!
『…も…。』
「ッ…カタカタ」
怖くて、
何も聞きたくなくて、
耳を塞いだ。
やっと話せると思ったのに、
関係が崩れてしまうなんて、
そう思うと、
指が震えて、
息が苦しかった。
目をギュッと閉じて、
手に力を入れた。
でも、
彼に抱きしめられた。
ギュッ
「ッ…へ…」
『俺も…好き…ッ…。』
訳が分からなかった。
頭が真っ白になって、
身体中が熱くなった。
「あ、の…ッ…?!」
『ッあ…ごめん…嬉しくて…』
「ッ…いま…ッ…」
『…ごめん、俺から言おうと思ってたんだけど…、振られたらって考えたら…勇気が出なくて…。言わせてごめん…ッ…。』
光介くんが、
私を好き…?
地味で取り柄がない、
私を…?
『…俺と、付き合ってください…ッ』
「は、い…」
夢にも思わなかった。
大好きな人に、告白されるなんて。
私はずっと、
見ている側の人間だって、
そう思ってた。
でも、違った。
『はは…これから、よろしくね。』
「ッ…うんっ…!」
私は、
幸せ者です…!
コメント
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この一言に限る、めっちゃ好き。 ほんとうにこういうお話好き。←