康二に、二度と近寄るな、と言った効果は絶大で、現場で一緒になることがあっても、わざとらしいくらい康二は俺から離れたところにいた。
そんな日々が少し続いて、ついに心配した阿部ちゃんが、俺に聞いてきた。
💚「翔太、康二と喧嘩でもした?」
💙「喧嘩はしてないけど、二度と近づくなとは言った」
💚「もう。なんでそんなこと言うの?」
💙「うるせえ。人の人間関係に口を出すな」
責められるとすぐにキレてしまう。俺の悪い癖が出た。
阿部ちゃんは悲しそうな顔をして、みんなの所へ戻って行った。
いつも9人が本当に仲が良いから、ちょっとしたいさかいがあっても、大抵はすぐに仲直りをする。阿部ちゃんも大したことないと思って気を遣ってくれたんだろう。
でもまさか、康二と酒の勢いでヤッてしまったけど、謝られてムカついたから無視してるとは言えまい。
なんか色々ぶっ飛んでるし、俺自体もまだ処理できていないのだ。なんなら考えるのもめんどくさくて放棄している。
だが、康二の顔を見るとどうしても思い出してしまう。
康二にむちゃくちゃにキスされたこととか、康二が好き好きってめちゃくちゃ言ってたな…とか。
俺は思い出して、顔が火照ってしまった。
💙「いかん。仕事に打ち込もう」
仕事を終え、送りの車を目指し歩いていると、康二が走って追いかけてきた。
🧡「しょっぴー!!待ってよ!!!」
俺に二度と近づくなと言っただろうが。
睨みつけようと振り返ったら、康二は怒っていた。
🧡「なんで阿部ちゃんをいじめるん?」
💙「いじめてねえし」
🧡「阿部ちゃん、ショック受けてたで」
あーもう全てがウザい。
元はと言えばてめえが元凶じゃねえか。
俺は言い返そうとして、これじゃまた悪循環だと気づいた。
💙「阿部にはちゃんと謝っとくから。それでいいか?」
🧡「ついでに俺のことも、許してくれへん?」
💙「お前なあ……」
🧡「もう二度とあんなことせえへんし、ベタベタもせんから…」
💙「………ほんとだな?」
康二はぶんぶんっと、力一杯頷いている。俺は康二を許すことにした。
よし、これで元通り。
あのことは無かったこととして生きよう。
俺は前を向いて歩いて行くんだ。
🧡「でも、俺のこと、そういう目で見てほしい」
💙「はぁぁ???」
コケるかと思った。
こいつ、まだそんなこと言ってるのか。
🧡「好きやねん。ほんまに、大好きやねん」
💙「俺は好きじゃないから」
特大のカウンターパンチを決めて、俺は康二をその場に置き去りにした。
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