さて、何から手を付けたものか。
一寸アビーさんに無理を言って現地警察の利用も認める事を条件に、路地という路地に屯所(という名の露店)を作り、
人海戦術(弱)にて聞き込みと見張りはさせているが、その位でどうにかなるなら、とうに現地警察が事件を解決しているだろう。
通常ならば、加害者が残した証拠品が無ければ手詰まりだが、そこは我らが冥探偵。
被害者側の証人(神?)から聞き込み等お手の物。
早速第3事件の被害者が着用していた防刃ベストに聞き込みを開始。
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尋問開始
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小野麗尾「証人(神?)、まずは貴方について確認を。
貴方は某月某日、オレファ=|S(セーヨク)=ヲ=モテアマス氏が着用していた防刃ベストに間違いありませんか?」
防刃ベスト「はい。間違いありません」
小野麗尾「それでは証人(神?)、当日貴方が知覚した事を述べて頂けますか?」
防刃ベスト「はい。神と女王陛下と名誉に誓い、真実を述べさせていただきます」
……防刃ベストの名誉とは一体……
防刃ベスト「あれは、そう。事件当日の夕方頃でしたな。奥方が亡くなられてから歯止めというか……ブレーキが、そう、ブレーキが効かなくなり、エロスを持て余した我が持ち主が、荒ぶるヒズサンの衝動の赴くままに、財布を握りしめ、所謂”コオルガアル”を求めて出かけられたのです。
勿論、昨今の事件は聞き及んでおりました故、念の為にシッカリと吾輩を着込んだ上でですな、鉄芯を仕込んだ仕込み杖を手に日の沈みゆく路地裏へと……そう、持ち主殿の運命の終焉の地へと向かわれたのです……」
小野麗尾「アビゲイルさん。今の証言にあった杖は……?」
アビゲイル「現場には確かに被害者の持ち物と思われる杖がありました。指紋も被害者の物が付いており、ほぼ間違いないと思われていたのですが……」
小野麗尾「ですが?」
アビゲイル「重量が3kg程あり、ご老人の普段使いには考え難く……」
防刃ベスト「持ち主殿は元軍人で、退役後も健康と体力の維持に務めておられましたぞ!
吾輩も、現役時代からご愛用頂き……オオオオオ……」
慟哭する防刃ベスト。大丈夫?呪いの装備とかにならない?
小野麗尾「防刃ベスト殿、無念の程、察するに余りありますが、今は続きを」
防刃ベスト「そうですな。それで向かう事30分。目的の場所に辿り着くと、事件現場にもさほど離れていないにも関わらず、大勢の”コオルガアル”がおりましてな。持ち主殿は手早く好みの娘を二人程目を付け、交渉して、近場のモーテル(安宿)に行こうとした
まさにその時!!」
「いつの間にか立ち込めていた霧の薄暗がりの中から凶刃の一閃が持ち主殿に襲い掛かってきたのです!!!」
「持ち主殿は二人の娘を咄嗟に庇い、その身を盾に賊の刃を阻まんとしたのです」
「吾輩もいつもの様に持ち主殿の御身を守らんとしたのです。したのですが……」
「確かに。確かにこの身は賊の刃を受け止めたのです!この身に刃めりこめども、その刃、わが身を切り裂くに能わなかったのです!
だが!だというのに!!!嗚呼、彼奴目の刃はまるで、まるで我が身は其処に在らずとばかりに!!!持ち主殿の御身を切り裂いたのです!!!!!」
「たとえ肉が裂け、血は溢れども、持ち主殿は怯える娘達を守る為に獅子奮迅の活躍を!?構えた杖は決闘に臨む貴族のレエピーアの如く賊の身を突き、打ち据えん!」
「……されど、奮闘の時も長くは続かず。流れる時と血と共に命は潰え、遂には賊の凶刃が持ち主殿の喉を切り裂いた……」
中々の語り手ぶりに圧倒される。
そういえばこの国、シェイクスピアが産まれたんだよなぁ……
小野麗尾「一つ確認しておきたいのですが」
小野麗尾「オレファ氏は杖で賊とやりあったようですが、賊は杖に対してどの様な対応をしていましたか?その……手に持った刃物で受けるとか、払うとか」
防刃ベスト「刃物自体が短い……そう、ナイフの様な物でしたからな。払う・避けるのが主で、避け切れなければ受けていましたな」
小野麗尾「成程……アビー、杖の状態は?」
アビゲイル「はい、凹みや切り傷はいくらかあるようです。内部の状態は至急調べさせます」
まぁ、この証人(神?)から聞ける事はこのくらいだろう。
個人的にはコールガール二人をお持ち帰りした交渉テクにはすごく興味があるが……
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尋問終了
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