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第一・二事件の証人(神?)の聞き取り調査も一区切り。
ここまでの調べで判明した事は、
・犯人の凶器はナイフらしき刃物で、防具無視・無効の性質を持つ
・事件直前には霧が発生し、霧の中の犯人の相貌を始めとした情報は認識できなかった
……あれ?何だろう。どこかの田舎町の事件と類似性が……?(類似点:霧)
そうか!この事件の犯人は……
一応電話を掛けて確認、確認……
「殺(ヤ)ってませんか?」
「藪から棒に何を言い出すのじゃ!?何故吾が態々国を出て化外の民を殺(ヤ)らねばならんのじゃ!?」
「フゥ……そうですか(ガチャ」
チッ、推理RTA失敗、と……
直後に何度も掛かってくる迷惑電話を着拒して。
判明した事実を纏め直すと、
・被害者に着せられた衣服は本人のものではない。
・いずれも100年近く昔に着られていた衣装であり、国内のメーカーが制作した物ではなく、おそらく犯人が用意したであろう物である。
・衣服は作られてから日が浅いのか、付喪神にはならず。
・被害者間の関係はコールガールと客に終始しており、いずれもストーカー等の届出は無いとの事
以上。
さー帰って寝よ、と言う訳にもいかず。
操作の基本に立ち返り、現場百篇。
第一・第二の現場で俺を除いた冥探偵チームが何かに違和感を感じているのか、やたらと首を傾げている。
話を聞いてみると、「何か空気が違う」とのこと。犯人が蒔いたであろう霧の影響だろうか。
そして第三の現場では遂にエインセルが、「一寸ご主人様、セキロー呼んで」
と言うのでとりあえず呼んでみる。
最近呼んでいなかったからか、駆け寄って顔を舐めてきた所をエインセルがむんずと首根っこを掴んで、被害者が倒れていた場所に顔を押し付けると、「匂いは覚えたわね?それじゃあ追って!」
「警察犬での捜索は……」
と言いかけたアビーに、エインセルが、
「普通の匂いじゃない!?これ、ダンジョンの匂いよ!!!」
!!!??
「アビー、冒険者協会に問い合わせを。この近辺に管理されているダンジョンは!?」
「ありえません!市街地のダンジョンゲートは発見次第即時封鎖処置が!!」
「アビー、政府上層部に都心部における大規模召喚モンスター展開の許可を!!!」
「少々お待ちを……こちらアビゲイル、ロンドン市内にて新規ダンジョンゲート発生の可能性がマーモ……いえ、ミスター・オノレオより指摘されました。同氏が対処を進言してくれましたが、どうしましょう!?」
「……はい、はい」
暫く電話先の恐らくは直属の上司であろう人物からの指示を聞かされていたのであろうアビー……アビゲイルが電話を切るとこちらを向き、
「マーモ、まずは行政の側で対応を試みる事になったわ。貴方達はゲートの発生個所の特定をお願いします!」
走り出しているセキローを追う事5分。路地間の壁を飛び蹴りを繰り返し屋根まで上がったり。屋根際で足を踏み外して落ちそうになる所を支えたり、支えられたり。
さらに少し進んだ先にあった殺害現場を見下ろせる角の一角でセキローが立ち止まる。何もない空に向かって吠え続けるセキローと、セキローの視線の先に手を伸ばすエインセル。
「あったわ」
「……見えないんだが?」
「向こうが閉じているようね。開けることはできるけど?」
「ま、待ってください!今、連絡を……」
程なくして眼下の路地には駆け付けた対策班の人員で溢れた。
はしご車のゴンドラに乗せられた突撃班がゲート前に出荷され、カウントダウンゼロと同時に開かれたゲート内部へと進入する。
待つこと五分。
「退避ー!退避ー!」
同僚を引きずってゲートから出てくる突撃班。
引きずられている隊員は全身に銃創が付いていて、四肢の内、二つが千切れかけていた。
その後も何人か疎らに退却してくる彼らが遂に出てこなくなって早15分。
顔を青くして電話を受けていたアビーが、
「マーモ。E.D.F.(England Defence Force)から英国冒険者協会経由で緊急依頼が送られました。確認してください」
と、言ってくる。
冒険者証を開き、クエスト一覧を確認すると、一番上にユニオン・ジャックを背景にした全体的に金色のクエストが。
おお、これが噂に聞く国家クエスト……!?
早速クエスト画面を開くと、イギリス国歌をBGMにクエスト内容が日本語で読み上げられる。
クエスト名:E.D.F.ダンジョン先行調査隊隊員の救出
クエスト発注者:E.D.F.(England Defence Force)
クエスト内容:先程貴君が発見したダンジョンゲートに我が軍が派遣した先行調査隊が健闘空しく壊滅の憂き目に至った。
自力で脱出できた隊員からの報告によると、中は戦場の様相を呈し、至る所から銃撃・砲撃が行われ、
隊長の判断で使われたはずの脱出アイテムは効果を発揮しなかったとの事である。
ダンジョン内部には負傷し、脱出が叶わなかった隊員がまだ15名取り残されている。
彼らを見捨てることはできない。
我が国が誇るAランク冒険者ギルド”円卓(ラウンドテーブル)”にも出動の要請を行っているし、
E.D.F.((England Defence Force) の最精鋭ストームチームも出撃の準備を進めているが、現時点で現地に最も近い実力者は貴君しかいない。頼む。
助けてくれ。
ここまで読み聞きした時点で残りは全部スキップして、最下の受諾ボタンをタップする。
装備を取り出し、ドワーフ街のMP保管庫を開放する。
「総力戦だ!!!出し惜しみ無しでこのクエストを終わらせる!!!!!」
「「「はい!!!」」」
志子ちゃんと淡姫ちゃんも一旦自分のゲートで戻ったかと思うと、直ぐに出てくる。
だが……
「うわ!ちょっと!何だか眩しいんだけど!?」
エインセルが叫ぶのも無理はない。俺だってフェイスガード越しだというのに眩しくて仕方がないのだ。
光の正体は二人の背中越しに発せらえる所謂後光というもので、何でそんな物が今出てきているのかというと……
「あ、あの。旦那様。似合いますでしょうか?何かおかしな所とか……?」
「姉さんはなに来ていても似合うし、他でもないアタシ達専用の初めての神衣(カムイ)なんだから似合わないわけないって!」
神衣(カムイ)とは何ぞやと言う話だが、要は神様専用の衣装、ソシャゲ的なアレでいう所の限定専用装備である。実際装備自体の性能もすごいが、神威の開放も補助するというガチの限定装備である。
ざっと確認しただけでも、神性存在以下の存在からの攻撃無効、管轄地域≒信仰地域に於ける無制限降臨≒無限瞬間移動etcetc……
黄泉大毘売命と言う新たな神の誕生に沸きに沸いた八百万の暇神(ヒマジン)達が挙って制作に参加し、黄泉津大神(オヤバカ)の命により残り少ない天照大御神(ガンソニート)謹製の織布をふんだんに使い切るという暴挙(誤字にあらず)により出来上がった超級神装とも言うべきそれを纏う二人を見た俺はその場に平伏し、
周りの人間も残らず続いた。
「Godess……」
何処からともなく漏れ聞こえるその呟きが全てを余す所無く表している。
横目で回りを見ると、遠くの屋根の上にカメラを構えた人影が多数。さすが本場のパパラッチ共だ。覚悟が違う。
何時までも留まっている訳にも行かないので、本能の警告を無視して立ち上がりゲートに向かう。
ゲートを潜り抜けるとそこは密林だった。ゲート周辺域の確保のためにインセクトハイブを呼び出し、味方モンスター以外のモンスターの封鎖措置と周辺の人間の救出活動を指示する。
早速ゲート周辺に二重三重に巨大な蜘蛛の巣を張り、密林と言う彼らのテリトリーに向かっていく彼らを見送ると、俺も魔猪……は呼んでもデカイ的になるだけだと判断し、バルクさんと剛武を呼び、彼らに同族の増援を要請した所、剛武は真っ当な援軍で来てくれたんだが。
バルクさんは、その……なんでブリッジの体勢で足の方から前進する奇怪な生態の方々(♀)も憑いて来ているんですかね……?
え?深刻なオス不足?いや、敵対モンスターがどうなろうと別に構わんけど。今回は人間の救出が主なお仕事だから、人間の♂は襲わんでくださいね……?
若干の不安が無くも無いが、微妙に引いている(保護対象の確認の為に付いてきた)アビーに直ちに危険は無い旨を告げ、隊列を組んで前進すると、暫くして銃弾や矢が飛んでくるようになる。まだ発射・着弾地点は遠いようだが、砲撃の爆音も轟き、俄かに戦場の気配が濃厚になる。
さらに進んだところで大きな赤十字を掲げた軍用らしき頑丈そうなテントが見え、近づくと
「「旦那!」様!」「「危ない!!!」」といつの間にか両脇から飛び込んできた志子ちゃんと淡姫ちゃんが、神衣の袖を振るい、
これまたいつの間にか俺目掛けて飛来してきていた数本のナイフを振り払う。
「「旦那!」様!」「「大丈夫!?」ですか!?」
「うん、大丈夫。二人の方こそ何ともない?」
「はい」
「うん。でも今の刃物、変だったわよね?」
「ええ、あの刃物には何か呪いの様な物が掛かっていましたし、突然あの場に現れたような……」
「「危ない!!!」」
次の瞬間、志子ちゃんと淡姫ちゃんが俺を抱えてその場から一っ飛びする。
俺が居た場所を見ると、俺が居た場所の下からナイフが放射線状に空に向かって飛んで行く……
あれ?俺、今何気に男の尊厳が著しく重大な危機に晒された?
それはそうと、
「二人共、今あの刃物がどんな風に出てきたか見えた?」
「「いいえ。只、直感的に旦那「様」が危険だったと……」」
そっかー……神様二人が知覚出来なかった攻撃かー……
「全員傾注!俄かに信じたくない推測ではあるが、敵は時間ないし空間干渉に特化したスキルを持っている可能性が高い!
以後は認識できた全ての違和感・異常について随時報告を求める!」
志子ちゃんと淡姫ちゃんの二人を見て、
「ありがとう、この場では二人の直感だけが頼りになるよ。負担を掛けるけど、よろしくね」
「はい、お任せください!」
「ええ、まっかせなさい!!」
そこでエインセルとセキローが近づいてきて、
「信じがたいけど、アンタの推測が正しそうね。ナイフが出てきた場所にはいずれも現場に残っていた匂いとMPの残滓と同じ物があるのだわ」
「マーモ……」
「アビー、護衛を付けるから君はゲートまで退避してくれないか。正直自分自身でさえ覚束無いのに君の事まで守れるとは到底思えない」
「マーモ、わかったわ」
素直に聞き入れてくれるアビーに、
「大丈夫だ。要救助者と思われる人間は、生きている限り必ず連れ帰って見せる」
「ありがとう。でも、この作戦は貴方も無事に帰って来て初めて成功と言えるわ。気を付けてね」
「ああ、君も無事で……」
オーガ二人とゴブリン五人の護衛を付けて、アビーを後方に帰す。
この間は何故か襲撃が無かったが、お約束としては安全地帯と思われる場所への移動中もしくは到着直後の襲撃だしなぁ……
念の為に蜘蛛と蜂のコンビを5組ほど遠巻きに付けてっと……
周囲への警戒を強めてテントに近づくと、中から包帯を巻きつけた如何にも治療中と言う感じの兵隊が10人程飛び出して横並びにアサルトライフルを乱射しながら突撃してくる。
「盾、防御陣形の3!!!」
号令に合わせて大型のタワーシールドを構えたオーガが横並びに壁の様に盾を構え、隙間を同じく盾持ちのゴブリン達が埋めていく。
非道な話だが、最悪の場合、彼らには文字通り肉壁になってもらう形になる。
幸いにも最悪のケース(防具無効化)は外れ、ドワーフ謹製の防弾加工処理の金属盾はその性能を遺憾無く発揮し、味方への被害らしい被害は今の所0である。
ただし、戦場のセオリーに従うなら、堅固な陣地を突破するには……
嫌な思考を裏付けるかの如く、号砲の弾着音が近づいてくる。
「防壁変換!攻勢防御に移行!!全員、構え解かずに盾浮かせ!突撃―!!!!!」
ウオオオオオオオオオオオ!!!!!
鬨の声を上げ、号砲の弾着に負けじと大地を揺るがしながらオーガとゴブリンと+αの一団が前方のテントに向かって突撃する。
テントの入口からは次々に兵士が出て来るが、一団の勢いを減衰する事すら叶わず、接触するや否や、鎧袖一触とばかりに吹き飛ばされる。俺と志子ちゃん達がテント入口に到達した時点で一旦オーガとゴブリン達は帰し、俺、志子ちゃんと淡姫ちゃん、エインセル、セキローの面々で中に入る。
テント内は、何かの挿絵か写真で見るような野戦病院の様相を呈して、看護婦の女性が、
「ここは臨時救護所です!貴方方は負傷者にも軍人にも見えませんが此処に何の御用ですか!?」
と聞いてくる。
「失礼。此処に戦友が運ばれてきた可能性があると思いまして。
此方のリストの誰か、あるいは全員がこちらに運ばれてはいませんか?」
そう言って、アビーが用意してくれていたメモを彼女に見せる。
メモを眺めた彼女は、
「私が担当している患者ではないわね」
そう言って、メモに書かれた名前を次々に中全体に聞こえる様に読み上げていく。
すると、そこにいた他の看護婦の一人が、
「今の人だったらミス・シックスティーンの所にいる患者じゃなかったかしら……」
「あら、シャクヤの?運が良かったわね。あそこは比較的怪我が軽い患者が居る所だから、きっと大丈夫よ」
「失礼。そのミス・シックスティーンの居る場所は一体どちらに……?」
「ああ、それなら此処より後方の本営付きの診療所になるわ。場所は解るわよね?」
「いえ。見ての通り、我々は正規軍ではなく、現地採用の傭兵になるのです。ですのでお手数ですが、方角と距離を教えて頂ければ……」
「あら、そうなの。やっぱり変な恰好だものねぇ……」
若干凹む。言われて何だが、これでも歴戦を重ね、苦楽を共にした結構自慢の装備である。
防具無効とか言うインチキが無ければ戦場だって散歩出来るんやぞ!
まぁ、砲撃の直撃とか爆撃に中身が耐えられるかは別だが。
気を散り直して教えてもらった情報を元に、進路を決めて行軍再開。警戒していたテントを出た直後の奇襲・砲撃・入口からのバックアタックが無かったため、志子ちゃんに背負ってもらい、淡姫ちゃんを遊撃にして最速で戦場を駆け抜ける。
無論、道中で要救助者の見過ごしが無い様に、エインセル・セキローはタッグでゴブリン騎兵・蜘蛛蜂蟻達を護衛に捜索班として組ませてお仕事を振っておく。
特に妨害・襲撃も無いまま目的地のテントに着くとエインセル達に連絡して、到着を待って突入しようとしたのだが……
「待って。ここ、多分ダンジョンのボス部屋」
グルルルルルルル……
エインセルの発言を裏付ける様にセキローが唸る。
更には外側からはどうやっても中の様子が伺えず、アビー経由でE.D.F.(England Defence Force)から貸与してもらった数々の軍用の調査機器も結果にエラーを返す始末。
遂にはテントの中から霧が出てきて機器が動作すら覚束無くなってくる……かと思いきや、いきなりまともに結果を返してくる。
何が何だか解らないが、兎に角結果は要救助者の人間が全員中に居る事と、
女性らしき人型のモンスター反応が一つ。
更に言えばこのモンスターがダンジョンのボスであるらしき解析結果も。
情報をその場にいる全員に共有し、アビーの端末宛にここまでの情報を纏めたメールを送る。
あー、セーブポイントとかナイカナー。ないかなー!(切実)
念の為に脱出アイテムを使用してみるが、当然の様に反応なし。
あああああ!!!帰りたいなー!!カエリタイナー!!!!!かーっ!クエストがなかったらなー!!
何故か懐に入れていた呼びベルを鳴らして、
「すみませ~ん。お邪魔してよろしいでしょうか~?」
ダメって言え!ダメって言うんだ……!!
「どうぞ~、と言いたいのですが。ここは診療所ですのでそっちのワンちゃんは遠慮してくださいね~」
くそっ!セキローだけ一抜け……だと……!?
というか当たり前の様に外の様子を把握していやがる!セキローは擬態させていたんだぞ!?
動揺は押さえて、4人で中に入る。
守君がボス直前で怖気づくのがオカシイ?
詳細不明のチートスキル持ち確定のボスなんか事前情報抜きで戦いたい訳が無いだろう!!いい加減にしろ!!!
何故か懐に入れていた呼びベル
→部屋の中にいつか使うからと仕舞い込み捨てられなかった物が無いラストエリクサー症候群に掛かった事の無い読者だけがコメントを投げなさい。