『指先でほどける、キミの嘘』

第5話：ほどける身体、縛られる心
　ベッドの軋む音が、やけに大きく聞こえた。

　先輩の体温に包まれながら、オレは息もできずに震えてた。

　「……ゆっくり、入れるから。力抜いて」

　そう言いながら、背中をさする手はやさしい。

　けど、入り口に当たるものの熱さと太さが、現実すぎてこわい。

　「んっ、ああっ、いた、っ……！」

　先輩の指が、ゆっくりと押し広げてくるたび、奥の奥がぞわぞわして。

　痛みの中に混ざる微かな快感が、オレを狂わせてく。

　「大丈夫……ほら、気持ちよくなってきてるじゃん……葵、かわいすぎ」

　耳元で囁く声が甘くて、逃げる気力なんてもう残ってなかった。

　先輩の指がオレの中をなぞって、柔らかい部分を擦ったとき――

　思わず声が漏れた。

　「っ、や、そこ……っ、だめ、気持ち、よすぎる……！」

　その瞬間、くちゅりと音を立てて、先輩の指がさらに深くまで入ってきた。

　「準備できたな……じゃあ、いくよ」

　――ズンッと、重みが体の奥に沈んでくる。

　壊れる、って思った。でもそれ以上に、

　満たされた、って思った。

　痛みと快楽が混ざったまま、オレは何度も名前を呼んで、泣きながらしがみついて。

　そして最後、先輩が強く抱きしめてくれたその瞬間、

　オレの心は、完全に堕ちた。