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第6話:朝焼けと、背を向ける温度
目が覚めたとき、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
隣には、ぐっすり眠る先輩の寝顔。
――夢じゃ、なかったんだ。
昨日のことを思い出すたび、体がじんじんしてくる。
心も、身体も、全部あの人に触れられた証が残ってた。
「……おはよう」
寝返りを打った先輩が、目を細めてオレを見る。
「……痛くない?」
心配そうな声が、胸に沁みた。
オレは小さくうなずく。
「……ちょっと、だけ。でも……」
「でも?」
「嬉しかった」
その一言で、先輩の目が少しだけ揺れた。
だけど次の瞬間、布団をばさっと捲って立ち上がる。
「……そっか。なら、よかった」
急に距離が遠くなる。
オレが“抱かれた側”になった瞬間から、先輩の目の奥が読めなくなった。
「もうすぐ学校だな。制服、乾いてるはず」
背を向ける先輩の声は、冷たくも、どこか焦ってるようで。
甘かった夜が嘘みたいに、静かな朝だった。
「……先輩。昨日のこと、後悔してますか?」
意を決して聞いた言葉に、先輩は動きを止めた。
「……後悔、してるのは……俺のほうじゃないかって思っただけ」
その言葉の意味を理解する前に、オレは胸を締めつけられていた。