テラーノベル
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スポーツドリンクを飲み、僕はもう一度ベッドに横になった。
うとうとする意識の中で、水道の流れる音、食器のカチャカチャという響き、
トントンと刻む包丁のリズム、そしてコトコトと鍋が煮えるやわらかな音が重なっていく。
長年の独り暮らしで、ほとんど料理もしてこなかったせいだろうか。
白石さんのいる台所の気配はほっとするBGMみたいで、僕の心を和ませてくれた。
どれくらい時間が経っただろう。
ふわりと漂う出汁の香りで目を覚ますと、彼女が心配そうに覗き込んでいた。
「……ん」
「あ、起きた? ちょうど今、おかゆできましたよ」
サイドテーブルの上には、湯気を立てる卵がゆ。ネギの緑と卵の黄色が鮮やかだった。
「起きられます?」
身体を起こし、レンゲで熱々のおかゆをすくい、ふうふうと冷ましてから口へ運ぶ。
「……美味しい」
弱った身体に優しい味が染み渡る。少し薄味だけれど、今の僕にはちょうど良かった。喉を通る温かさが、胃の腑に落ちていく。
「ほんと!? よかった〜。味、薄くないかなって心配で」
「いや、完璧。……白石さんが作ってくれた時点で、世界一だよ」
熱のせいだろうか。普段なら恥ずかしくて言えないような台詞が、フィルターを通さずに口から滑り出た。
彼女は一瞬ぴたりと固まった後、両手を頬に当てて身悶えた。
「……もうっ、そういうこと、さらっと言うの反則です……」
ふと額の冷たさに気づく。
「あ、そういえばこれ……貼ってくれたんですか?」
「うん。うなされて苦しそうだったから。……首元もの汗も軽く拭いといた」
なぜか彼女は、視線を泳がせながら早口で言った。
「ありがとう」
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