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…。


………………。


…教会で、静かに鐘が鳴る。


その鐘と同時に、彼のナイフを持った手が首に振り下ろされる。


そして、静かにその者の首を落とした。


鐘は、五月蠅く鳴り続けていた…。




――――――事の発端は一ヶ月ほど前に遡る。


俺は、家系がそれはものすごいもので、自分でもここに生まれたことを恨むくらいだった。


俺の家系は、簡単に言えばハンターだ。


依頼の通りに人を殺害し、依頼通りの代金諸々を頂戴する。


そこに感情は要らない…はずだった。


今日も父に呼ばれ、俺は足音、気配一切をかき消してそこへ向かう。


そして、いつものように依頼を受けるのだ。


「…来たか、武道。」


相変わらずの低い声を聞いて、掃除という仕事に向かうことを実感する。


「今日は、こいつだ。」


そう言って、書類を渡してくる。


――――書類に目を通して、俺は目を見開いた。


書類には、こう書いてあった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


NAME:佐野万次郎


AGE:17


性別:男


二つ名等:マイキー 総長


詳細


一代目東京卍會創設メンバーの一人。


また、上記の一代目総長でもある。


現在は、一代目関東卍會の総長である。


尚、メンバー等は別紙にて紹介する。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺は全部を読んで理解した。


…これは、絶対マイキーくんの事だ、と。


顔が見えないくらいに記憶から抜けていた、けど、すべてが蘇った。


『タケミっち!』


俺を呼ぶマイキーくんの声が頭で延々流れる。


どう声は変わってるのだろうか。身長は高くなっているだろうか。


それを想像しただけで泣きそうになる。


…泣いたらダメだ、言われたじゃないか、一切の感情を持ち込むな、と。


「今回はそいつの殺害だ。こいつは害を成す可能性がある。早急に、隠密に頼む。」


父の声で、一気に現実に引き込まれる。


そして、同時にマイキーくんがいなくなるという寂しさと自分が消すという悲しさが込み上げてくる。


俺は、掠れた声で父に返事をした。


「…分かりました、お父様。」



「こちらが資料です。」


向こうでココの声が聞こえる。イヌピーとは別々なんだ…。


もうすでに関東卍會のアジトに侵入していた俺は、すでに任務を遂行していることを自覚しながら、少し変化を楽しんでいた。


「あ゛!?」


「…春千夜、もう少し静かにできないのか!」


「…黙れ。」


「はい、わかりました♡」


「総長だと態度変わるの何なんだよほんと…。」


少し口が緩んでいることに気づいた俺は、自分を戒めるためにナイフの柄を再度握りなおした。


…これは任務だ、今からマイキーくんを殺害するんだ、俺が。


任務だ、任務なんだ。


「じゃあ、俺は寝る。ココ、春千夜、今日の分の残りは頼んだ。」


「了解しました。そういえば、今日は家に帰れないって言ってましたもんね。」


「おやすみなさい、ボス。」


「…自室で寝るからうるさくするなよ。」


そう言って、マイキーくんは別室へと移動した。


…勿論、俺はこのことを知っていたから、アジトへ潜入していたのだ。


そして、部屋の位置も理解している。


マイキーくんが廊下を歩き始めたくらいで、俺は一足早くマイキーくんの部屋へ移動した。




マイキーくんはゆっくりと寝息を立てていた。


寝るときはこんなに静かだったんだ。


あと、タオルを抱き枕みたいに抱いている。


…少しだけ昔のマイキーくんと一緒にいる感じがした。


―――ただ、今回は任務だ。


彼を、消すという。


俺は、マイキーくんの頭を目掛けてナイフを振り下ろす。


すると、マイキーくんの目がカッと見開かれた。


そして、こちらの頭を目掛けて蹴りを繰り出してきた。


ただ、これに対応できるくらいの訓練はできている。


俺はマイキーくんの脚を掴んで蹴りを止め、首にナイフを掛ける。


…クソ、身長差がありすぎる!


マイキーくんの首ギリギリでナイフの刃先が止まる。


マイキーくんも、俺の首を絞めようとしたんだろう、俺の首に手をかけている。


しかし、首を絞める前に、彼は涙を流していた。


そして、消えかけた声で、俺に言った。


「タケミっち…なのか…?」


…正体がバレた。俺だ、ということが。


しかし、答えさせる時間もなく、彼は俺に予想外のことを言ってきた。


「もしもそうならさ…ひとつ、頼みを聞いてくれないか…?」




とりあえず目を瞑ってるけど、やっぱり今日も寝れない。


なんだか、最近は家にいるとなんか頭とか心がぐしゃぐしゃになっている感じがして、居心地が悪い。


だから、こうやって家に帰らない日があるのだ。


だれかこの命を絶ってくれないかな…なんて、甘えたことを心の中でつぶやく。


落ち着くために、ゆっくりと呼吸をする。


―――その瞬間だった。


黒服の男が俺を殺しに来たのだ。


俺は咄嗟に戦闘態勢に入って、そいつの頭目掛けて蹴りを繰り出す。


しかし、脚を掴まれ、蹴りを止められた。


…だけど、まだ手が空いている。


絞首なら…!


しかし、月光が黒服の男の顔に当たり、顔が暴かれた。


…それを見て、俺は嬉しくも、悲しくもなった。


生きてた…生きてたんだ…!


「タケミっち…なのか…?」


タケミっちは少し驚いた表情を浮かべていた。


もしもそうじゃなくてもいい、ただ…ただ…!


「もしもそうならさ…ひとつ、頼みを聞いてくれないか…?」




少し迷ったけど、マイキーくんの話を一旦は聞くことにした。


「…何?」


すると、泣いてるけど平然を取り繕おうと変な顔になった状態でマイキーくんは俺に話す。


「…俺を殺そうとしてくれたこと、そして、俺の目の前に現れてくれたこと、その…ありがとう。」


…なんか、任務で来たのに…感謝されたんだけど…。


「でさ、俺は今、死にたいって、殺されたいって思ってたんだ。」


え、え!?あのマイキーくんが!?


…ってまぁ、わからないわけではない。


真一郎くんも、場地くんも、エマちゃんも死んだ。


そして、今は孤独になっている。


そりゃ、死にたくもなるよね。


「そこで、タケミっちが俺を殺しに来てくれた。」


少し心が痛い。


違うんだよ、君の死を望む人がこの世にいたんだよ。


ナイフを再度持ち直し、もう一回自分に戒めをかけた。


「…だけど、今、久しぶりに死にたくないって思った。」




「タケミっち、俺を殺すのは構わない、だけど、交換条件?みたいな。」




「俺と一ヶ月、一緒に過ごしてくれないか?」




…え、もっと重いものかと正直思っていた。


一ヶ月…ってことは、30日?


「あ、同棲とかはしないぞ?」


慌ててマイキーくんが付け足す。


いや、そうでしょ。どう考えても同棲はしないでしょ。


でも、どういうことか聞いてみる。


「なんで…一ヶ月、一緒に過ごすんですか?」


マイキーくんは、少し寂しそうな眼で答える。


「あの、バカ騒ぎしていたころに少しだけ戻りたいんだ。」


…。


掛ける言葉がない。


苦しくて、辛くて、悲しくて、孤独で、壊れて、助けてほしくて、でも言えなくて。


みんなに頼れた、あの頃に、戻りたいなって。


そう、思っているのかな…。


…今回は、父さんと母さんに怒られることを覚悟で、意を決した。



「じゃあ、本当に一ヶ月…30日間だけですよ?」



マイキーくんの眼が少し輝く。


…俺はその眼を見て、久しぶりに彼の前で笑顔を見せた。


お互いに構えを解き、「また一ヶ月後だな」と笑った。


「ボス!!!大丈夫ですか!!!」


春千夜の声が響く。


「…乱闘してた時の音が響いてたのか…。」


マイキーくんは履歴書で見たベタ塗りの黒い眼に戻っており、冷静に対処手段を考えていた。


…俺がいるってことがバレたら一発アウトだ。そこですべてが終わる。


隠れるなんて甘いことを言ってられない。ここは関東卍會だ。


ココくんに頼る?…いや、それも確率としては人生最大の賭けに出るといっても過言ではないだろう。


「…あ」


マイキーくんが声を発する。


「…何ですか?」


「確かここらへんに特攻服の余りが…」


いや、化けろと?


いくら何でも無茶が過ぎる。


俺は急いで「いいですよ」と断りを入れた。


「じゃあどうするんだよ。」


そう言われても…窓は開閉式だけどここから降りたら目立つしな…。


「じゃあ、こっから飛ぶ?」


「はい!?」


いや、絶賛考えてたことなんですけど。


「飛びませんよ、目立つし。」


「うーん…」


そういうと、マイキーくんはまた考え込み始めた。


もしもバレたとしても、ナイフがあるから掃除すればいいし、そう困ったことではない。


時間もないs…


「ボス!!!!!!」


…はい、詰んだ。


春千夜来たじゃん、もうじきココも来るじゃん、絶対。


「春千夜、うるせぇ、響いてんだよ。」


はい、ココくんも来た。


これが俗にいう、詰み状態か…


って、そんなこと思ってる場合じゃないって。


俺はナイフを構える。


見られたなら、掃除しなきゃいけないって親に散々言われただろ、武道。


動け、動け!!!


「春千夜、ココ。」


…俺が動くよりも先に、マイキーくんが言葉を発する。


「…何ですか、総長。」


「何ですかボス!」


注目がマイキーくんに集まる。


そして、一言発した。



「うるさくするなって言っただろ、覚えてないのか?」



一言の圧がすごい。人って一言で従わせることができるんだな…。


マイキーくんが「もう今日は帰れ」と言うと、十秒も経たずに二人ともその場所からいなくなった。


「…これでいいだろ?会議室の方に裏口がある、そこから帰れるぞ…って開いてないのか、今日。」


え、裏口が開いてない日ってあるの?


「もういい、今日は泊まっていけ。アジトだがな。」


そして、「寝てるの見られるの恥ずかしいから」っていう乙女みたいな理由で別部屋の鍵を渡された。


…自宅以外で一夜を明かすのは久しぶりだ。


鍵番号と同じ部屋を探し、鍵を開けて中に入る。


…意外ときれいだ。


まあ、一夜を明かすならこんなところで十分だろう。


山奥の教会の鐘が鳴る。


今日から、波乱の一ヶ月が始まるのだった…。









マイキー絶命まで あと 30日






君のその眼を殺します。~END~

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