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あれから、季節がいくつも巡った。 桜が咲いて。 夏が来て。 秋になって。 また、冬が来た。 五人は変わらず一緒にいた。 毎日顔を合わせるわけじゃない。 忙しくて会えない日もあった。 くだらないことで喧嘩する日もあった。 少しだけ距離ができることもあった。 それでも、 誰もいなくならなかった。
*
「久しぶりやなあ」
舜太が笑う。
「いや、三日前に会ったばっかじゃん」
勇斗が笑い返す。
「三日も会ってへんやん」
「大げさ」
「大げさちゃうって」
太智が笑う。
「俺も結構寂しかったで」
「太智まで言う?」
柔太朗が呆れたように笑う。 仁人は そんな四人を少し離れたところから眺めていた。 昔なら この光景を見るたびに 怖くなっていた。 いつか終わる。 いつか誰かがいなくなる。 いつか自分が また一人になる。
でも 今は違う。 終わりを怖がって 始まりまで捨てる必要なんてない。
「仁人?」
勇斗が振り返る。
「何してんの?」
「……なんでもない」
「また置いてくよ」
「待って!」
仁人は笑って 四人のもとへ走った。
*
五人が向かったのは あの公園だった。 最初に出会った場所。 何度も戻ってきた場所。 そして 輪廻の終わりを決めた場所。
「変わらんなあ」
舜太が木を見上げる。
「ちょっと大きくなった?」
「木が?」
「俺らがやろ」
太智が笑う。
「そっちかよ」
五人で笑う。 仁人は木の根元を見る。 あの古い箱は もうない。 何度探しても 見つからなかった。 でも それでよかった。 あの箱がなくても、 写真がなくても、 記憶がなくなっても。 もう 五人の時間は消えない。
「ねえ」
柔太朗が言った。
「最初にここで会ったときさ」
「うん」
「こんなに長く一緒にいるなんて、思わなかったよね」
「そら思わんやろ」
舜太が笑う。
「何回生まれ変わったと思ってんねん」
「……何回だったんだろうね」
仁人が呟く。 誰も答えなかった。 もう 数える必要がないから。
*
夕方になり 五人はベンチに並んで座っていた。 空が少しずつ赤くなっていく。 勇斗が突然。
「なあ」
「ん?」
「もう、来世の約束はしなくていいんだよな」
仁人は笑った。
「うん」
仁人は空を見る。
「だって」
四人を見る。
「前は、来世でも会いたいって願わないと不安だった」
「うん」
「今は違う」
仁人は笑う。
「来世のことより、今日のことを大切にしたい」
四人は黙って聞いていた。
「明日も会えるかもしれない」
「来週は会えないかもしれない」
「それでも」
仁人は続ける。
「会えない時間があっても、僕たちが五人だったことはなくならないから」
勇斗が笑う。
「……そっか」
「うん」
「じゃあ」
勇斗が手を差し出す。
「今度は、約束じゃなくていいな」
五人の手が自然と重なる。
「うん」
誰も願わない。 誰も未来を縛らない。 ただ 今、この瞬間を 一緒に過ごす。
*
帰り道、 五人はいつものように歩いていた。 仁人はふと立ち止まる。
「どうした?」
勇斗が振り返る。
「……ううん」
仁人は首を振った。
「なんか、思い出した気がして」
「何を?」
「最初の日」
五人が足を止める。
「みんなが俺に声をかけてくれた日」
「覚えてる」
柔太朗が笑う。
「俺も」
太智が頷く。
「最初、めっちゃ緊張してたやろ」
「してた」
仁人が笑う。
「でも、みんながいたから」
少しだけ間を空けて。
「俺は、初めて誰かと一緒にいることが怖くなかった」
勇斗が笑う。
「じゃあ、あの日から始まったんだな」
「うん」
五人は再び歩き始めた。 今度は 誰も振り返らなかった。
*
――何度も願った。 来世でも会えますように。 何度も約束した。 五人でいられますように。
何度も失って、 何度も探して、 何度も、また出会った。
でも 最後に分かったことがある。 大切なのは 何度生まれ変わっても会えることじゃない。 いつか終わるかもしれないと知りながら、 それでも 今、一緒にいることだった。 仁人は歩きながら 四人の背中を見る。 もう 来世の約束はいらない。 だから 最後に一つだけ、 心の中で呟いた。
――どうか この人生が、 五人にとって 幸せなものでありますように。
それは 誰かを失わないための願いじゃない。 別れを恐れるための願いでもない。 ただ 大切な人たちと 今を生きるための願い。 五人の影が 夕暮れの道に並んで伸びていく。 その先に どんな未来が待っているのかは分からない。 でも 五人なら きっと大丈夫。 また会えるから。
……いや。 もう 「また」なんて言葉はいらない。 今、隣にいる、 それだけでいい。 そして もし未来のどこかで 五人がまた離れる日が来たとしても。 きっと。 誰かが振り返る。 誰かが名前を呼ぶ。 誰かが笑う。 そして、 また五人で歩き出す。 それが 何度生まれ変わったとしても変わらない。 五人だけの 小さな奇跡だから。
――願いは巡って。 何度も。 何度でも。 そのたびに 五人を繋いできた。 そして今 願いはもう、 五人の中にある。 いつの未来までも。
「願いは巡って、未来の果までに」
コメント
1件
いやあ、読んでいてじんわりしました……「来世の約束をしなくていい」っていう台詞が特に刺さりましたね。今まで何度も繰り返してきた輪廻と別れがあってこその、この「今日を大切にする」という選択がとても温かい。五人の関係が、縋るような願いじゃなくて、自然な形でそこにあるのが本当に尊いなあって思いました。笑う門には福来るさんの、登場人物たちへの愛情がにじみ出ているエピソードだったと思います!