始業のチャイムと同時に、担任が入ってきた。
「皆、突然ですまないが、急遽このクラスに転校生が来ることになった。佐原、自己紹介を」
担任の言葉に続いて、1人の男子生徒が入ってきた。一見スタイルもよくて、どこか儚い顔立ちだ。
「初めまして。佐原湊です。これからよろしくお願いします」
転校生の自己紹介が終わると、教室が一気に騒がしくなる。
「はい皆静かに。佐原の席は……山西の隣が空いてるな。そこだ」
そして、さっきの転校生……湊が私の席の隣に着席した。
「はい、授業始める。教科書の120ページ開けー」
私も慌てて、教科書を開く。湊はどの教科書を開けばいいかわからないようで、私に尋ねてきた。
「どの教科書?」
「現代文の教科書の、120ページだよ」
私がそう教えてあげると、湊は納得したように教科書を開いた。
「でも君、どこかで見たことあるような……?」
「え?」
「あ、覚えてないならいいや……」
私は湊の発言に不思議な感覚を感じたまま、授業に集中する。しかし、湊の「見たことあるような」という言葉が、ずっと頭の中でぐるぐる廻っていた。
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