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結局舞踏会から解放されたのは、日が沈んでからだった。

ダフネはどこで何をしていたのか知らないけれど、少しだけ髪を乱していて……まるで召使に申し付けるようにリリアンナへそれを整えるように命令した。

ここ数年でそういう下女のような仕事にも慣れていたリリアンナは、ダフネに請われるまま、彼女の身なりを整えてやる。

「お義姉ねえさま、結局一度も真ん中へ出ていらっしゃらなかったでしょう?」

リリアンナにすっかり身支度を整えさせ、体裁を取り繕ったダフネが、馬車の中でフンッと鼻を鳴らす。

馬車の外を流れていく街並みは宵闇にどっぷりと沈んでいて、ダフネから視線を逸らして窓の方を眺めていても、まるで鏡面のように従妹の姿を映していた。

「それは……」

(誰にも声を掛けられなかったんだもん。仕方がないじゃない!)

そう思ったものの、今のリリアンナに口ごたえなど出来るはずがない。

「お母様に報告しなくちゃ」

意地悪く微笑むダフネの顔をガラス越しに見つめながら、リリアンナは小さく吐息を落とした。


ダフネとともに夜になって屋敷へ戻ったリリアンナは、すぐさま身ぐるみを剥がされて、いつも通りのお仕着せに着替えさせられていた。

夕飯は当然のように抜かれてしまい、お腹がペコペコだ。

(お母様、お父様……)

こういう時、リリアンナはそっと屋敷を抜け出して、庭の片隅へ足を運ぶ。

そこには、六歳の頃に母と一緒に植えた林檎ミチュポムの木がある。今はまだ若木のため細くて華奢な幹だが、風に揺れる枝を見上げるだけで、なぜか両親のぬくもりを感じられる気がした。

リリアンナは空腹を抱えたまま、ミチュポムの木をそっと撫でて、「私もお母様とお父様の元へ行けたらいいのに……」とつぶやいてポロリと涙をこぼした。


翌朝も食事抜きを言い渡されたリリアンナは、極限状態のまま朝の仕事をこなして、すき間を縫うように裏庭へ足をむけた。ミチュポムの木へ話しかけに行くためだ。

「……えっ、うそ……何で?」

だが、そこにあったはずの若木は、根元からバッサリ伐られていて、まるでそのことを知らしめたいみたいに、無残に切り刻まれた幹と枝葉が地面へ打ち捨てられていた。細い幹には、無作為に振り下ろされたとおぼしき斧の跡がそこかしこに生々しく残っている。

「……誰がこんな……」

それ以上は言葉にならず、膝から崩れ落ちたリリアンナの背後から足音が近付いてくる。

「社交界で私の言いつけを守らなかった罰よ。元々目障りだった木だもの。伐られて当然でしょう?」

冷笑とともにリリアンナの耳に届いたのは、エダのさげすむような声だった。


そのあと、当然のように仕事を言い付けられたリリアンナだったのだけれど、ミチュポムの木があった辺りを見渡せる物干し場へ洗濯物を干すように言いつけられたのは、エダからのこれでもかという悪意に感じられた。


それからというもの、リリアンナにとって味覚を失った状態での食事作り同様、ミチュポムの木が伐り倒された場所へ新たに設置された物干し場へ洗濯物を干す作業は、とても苦しいものになった――。

ヤンデレ辺境伯は年の離れた養い子に恋着する

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