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『屋上に集う者たちと、たぶん平和な昼休み 』
──昼休み。快晴。屋上。風、ちょっと強め。
「ほら、見てや、いむくん。あれ、飛びそう」
「初兎ちゃん、僕の弁当のフタが飛んでるのを実況しないで。追って、ね? 普通、追うよね?」
「え、追わんよ。自然の摂理に逆らったら負けやん」
「じゃあ、僕のおかずは空の彼方へ旅立っていったってこと?」
「南無三……」
「いや、しょうちゃんが言うんだ!? それ僕の役目では?」
──屋上の隅、ベンチではりうらとないこが将棋してる。
「ないくん、それ詰んでるぞ。俺、三手先まで見えてるから」
「ふっ、甘いな、りうら。俺の“フェイント王手”を舐めんなよ」
「フェイントって将棋にあるの? ルールの墓場から蘇ってきた?」
「え、これダメなやつ……?」
「うん。むしろ今すぐ詫びろ、将棋会に」
──そして、いふと悠佑はラジカセを持ち込んで、謎のダンス練習中。
「まろ、そこはターンや、ターン!」
「え、なんでや。回ったら飛んでまうわ、スニーカー底ツルツルやねん!」
「それがええんや! 命かけて踊るんが青春やろ!!」
「俺の命、昼休みに持っていかんといてぇぇぇええ!!」
──そして再び、ほとけと初兎。
「にしても、ほんまにええ天気やなぁ」
「うん、たしかに風はあるけど気持ちいい。……でも弁当のフタは帰ってこない」
「じゃあ、うちのおにぎり、半分こする?」
「えっ……優しい! 嬉しい! でも、これ、梅干し入ってる?」
「がっつり入ってる」
「じゃあ、ごめん遠慮する……梅干し、ちょっと、苦手で……」
「え、じゃあなにが好きなん? たくあん? 昆布? 唐揚げ? シーチキン? カニカマ? まさかの、具なし?」
「どれも好きだけど、唐揚げは特に……あ、今言った中で、具なしって”まさか”の扱いなの?」
「せやかて、具なしって、それもう……ただの白米やん」
「白米に謝って! 僕の実家では、それを“シンプルイズザベスト”って呼んでたんだからね!」
「じゃあ今度、”白米だけの弁当”作ってきますわ。白い弁当箱に、白いごはん、以上」
「それは……逆にオシャレかもしれない……!」
「いむくん、やっぱ変わってますねぇ」
「えっ、今さら? 僕、結構初日から変だったよ?」
「そこ、誇らしげに言うとこちゃうやん!」
──ラスト、全員集まって屋上に並んで、風に吹かれながら。
いふ「……なんか、このメンツで屋上におるとさ、屋上というより、何か始まりそうなエンディング感せぇへん?」
悠佑「BGMだけでも壮大やもんな。ラジカセから流れてるの……演歌やけど」
ないこ「それ、うちのばあちゃんの好みやから……」
りうら「昼休みのエンドロールに、演歌は新しすぎるな」
──初兎がぽつりと言う。
「いむくん、また弁当のフタ飛んでいったで」
「いや、予備まで飛んでくなんてある!? てか予備ってなに!?」
──風強すぎ、屋上平和すぎ。
そして今日も、昼休みはなんとなく終わるのであった──
コメント
3件
弁当の蓋が飛んでいく...? どんだけ風邪強いんだッッ!w