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はぇ、…見てるこっちまでドキドキしてくるような作品デシタ…すごいな!!話の構成とかなんか、もうなんて言ったらいいんだろ!?
引き返した方がいいと早く言っておけば良かった。
あの時、鳥居の中に入る前に言っていれば、こんなに恐怖に飲まれることはなかっただろうに。
奏斗もたらいもこちらを向かない。
セラ夫にも声は届かない。
ちょっと待って、そっちに行くな
置いていくとかほんとにだめだって
私、こわいの無理だって言った
悲鳴を出そうにも口元に何か手のようなもので押さえられていて声が出せなかった。
セラ夫待って
ひとりにしないで
そのままとぷりと暗い場所に引き摺られ、彼らの姿は見えなくなった。
抵抗しても無駄だ、力が抜けていく
ライトのような小さな光は遠のいていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
それは突然現れた。
事務所のサイトに便りが届き、依頼内容を確認してみれば、いつもとは違う変わった内容だった事を今でも覚えている。
近所の鳥居で何かが起こっている為調査をしてほしい。簡潔に言えばそういう内容だった。
初めはどんな調査だよ等とツッコミを入れてしまっていたけれど、セラ夫が個人的に面白そうだから受けてみたいと提案してきた為致し方なく承諾のメッセージを送り、事務所で詳しく話を伺う事になった。
「神社から男性の声が聞こえてくるんです。」
毎日その道を通らなければならないため、一度少し周りを見てきてもらいたい。
そんな調査だった。
うちは草むしりからペット探し、時には裏の事も請け負う事務所だ。
弱音なんか吐いてられない、セラ夫も居るし何とかなるだろう。
いやわかんないけど、全然正直行きたくは無いんですけど。
事務所と配信を数日休む事を奏斗とたらいを伝えれば、怖いけど行ってみたいたらいは行きたいと自ら志願し、そんな話を聞いたら一人で居るのは怖いからついて行きたいと言う奏斗までついてくることになった。
いやなんでだよ。
依頼人から調査対象の神社の場所を教えてもらい、色々準備して四人で行く事になった。
持ち物は基本ライトを各自で一つ。
後なんかたらいが「塩!塩ってなんか幽霊とかに効果あるんやろ?店から持ってきた!」とサランラップに包まれた少量の塩を人数分持ってきていた。
いや確かに清めの塩とかいるって言いますからいるかもしんないけど。
何かあった時の為の小型の通信機とスマートフォン、あとセラ夫もたらいと同じく「何かあった時の為に」と自身の小型ナイフを四本持ってきたそうだ。物騒すぎる。
そもそも幽霊って物理効くんですか
いやそんな事は別にどうでもいいんだけれども。
それともう一つ、自分達の所属している事務所には色んな方が居て、幽霊等に詳しい方がそれなりに居る。
そして、私たちの先輩である男性ユニットのとある人に話をすると、何やら御札のような物と形代を貰い受けた。
『肌身離さず持ち歩いててね、何かあったら遅いから。あともし変なモノが出てきたら札で殴るみたいに貼って』
本当は行かせたくないけど。
と不安そうな目で見つめられ申し訳なく思ってしまった。
確かにこの人は番組で心霊現場に行って、何かとそういう現象を経験している人だからなぁ。
こんな後輩たちにこんな物を用意させてしまって申し訳ない気持ちと、心配して頂いて嬉しい気持ちが混じる。
お礼を言って準備を整え、今日の夜 神社へ向かう事となった。
一目見ると、少し古びた神社だった
街灯は無く、敷地内は真っ暗だ。
まずは神社周りの道路を散策するが何も変な物は無く、ただの通行路だった。
辺りが暗いせいでライトを持っているが、奏斗はセラ夫にべったりで、
たらいもたらいで進みながらでかい声でうお!と叫んでいる。いや近所迷惑。
対して私もホラーは苦手だ、特にこういうリアルチックだったりゲームのホラーは一番嫌い。
読むホラーとかはまだ大丈夫だが。
セラ夫は特に怯えている様子も無く
背中にべったりと着いている奏斗に重いと文句を言っていた。
私だってセラ夫盾欲しい奏斗お前ばっかりずりぃぞ、と言葉が出そうになったが止めておく。
奏斗は本当に結構ホラー嫌いだし、でも着いてきてくれたから今回は許してやろう。
そして本日の目玉である神社の敷地内。
赤い鳥居が目の前にある。
古びていて、柱に転々と傷跡がある
風が冷たい。
もし何かに追いかけ回されたりしても大丈夫なように、コートは脱いで置いて行ったが、まだ一応春頃なのか、夜だと少し肌寒い。
それに少し、普通の寒さじゃないような気がする。
悪寒のような、嫌な寒さだった。
ふるりと身体が震えていたのが見えたのか、セラ夫が歩くことをやめ、立ち止まって声を掛けてくれる。
「凪ちゃん寒いの」
羽織貸そうか、と彼は何とも優しい声でそう言ってくれたが大丈夫と断った。
別にそんなに耐えられないものでも無いし、なんだか嫌な予感がした。
上着を貸してもらうことよりも、やっぱりここから今すぐに離れた方がいい。
ぞわりと背筋が凍る。
なにかに見られている感覚がした。
セラ夫達はゆっくりと鳥居の奥へと歩いていく。
待って、そう声をかけようとした。
じろりと何かを見られているような感覚に襲われて、
後ろを振り返った______。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
カツン。
何かが落ちる音がした。
「うわぁ゙……っ!!!」
「ゔ…っ?!」
「奏斗うるさ」
「いや音鳴った、なんか音鳴ったって!マジでもう無理なんだけど!」
「セラ夫頼むから置いてかんで?」
「分かったから頼むからもうちょっと離れて、俺動けねぇよ」
そんなに怖いなら早く調査して帰ろうよと提案をしてうんうん頷いているが離れる気は無いように見えた。
奏斗がこうなる事は予想してたけど雲雀も中々に怖がってる、凪ちゃんもこういうの苦手だからきっと今頃叫んで____。
叫んでいるはずだ、なのになんで声が聞こえないんだろう。
物音がした方へライトを当てる。
そこには消されたライトがひとつ落ちていた。
自分が持っているライトと同じものだった、奏斗と雲雀の姿はある。
なのに、あいつの姿はどこにもない
「凪ちゃん」
名前を呼んでも周りからは聞こえない、ただ風の音が聞こえる。
スマートフォンで電話をかけようとしたが圏外で繋がらない。
通信機もザザ、と砂嵐が鳴っている
「え、アキラ何、迷子?嘘でしょ」
「そんなわけ、だってアキラが黙って何処か行くはずない、ライト落とす理由が無いやんか」
「え無理、無理なんだけど僕」
「二人とも離れずに着いてきて、凪ちゃんを連れて帰らないと」
「アキラぁ、どこ行ったん」
か細い声で雲雀がそう言った。
奏斗はだんまりになってしまい、ただ着ている羽織をがっしりと掴む事しかしていなかった。
ゲームとは違う怖さがあるからしょうがない、ゆっくりと短い参道を歩き出した。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そこまで広くない敷地内のはずなのに、何故か距離が感じるのは自分だけだろうか。
パキリと枝が折れる音がすると、奏斗も雲雀もネチコヤンみたいにぴゃっと肩が飛び跳ねている。
こつりと何かが歩く音が聞こえた。
悲鳴が出そうになっている奏斗の口を塞ぎ、脚を止める。
そちらは止まらずに歩き続けている
まるで此方に近付いてくるように。
『____セラフ?』
聞き慣れた低い声だった。
四季凪の姿が見えるが顔は見えない
ぞわりと何かが背筋を伝う。
頭の中で危険信号が鳴っているみたいだ。
手に持っているライトを消して、ポケットに入れる。
喜んで名前を呼ぼうとした雲雀の口を、空いたもう片方で塞いだ。
『セラフ』
もう一度名前を呼ばれる。
返事はしない、冷や汗が額を伝う。
『隧ア縺励※』
四季凪らしきものは聞き取れない言語を話している。
耳にしてはいけない。
何も答えてはいけない。
こいつは四季凪アキラじゃない。
あいつの瞳はもっと綺麗だ。
じりじりと後ろに下がっていく。
距離が縮んでいく、ゆっくり、またゆっくりと歩く音が聞こえ、次第に姿が見えてくるが地面を見つめる。
見ちゃいけない、こういうのは無視をしなければいけないのが基本だ。
ゆっくりと手が伸びてくる瞬間だった。
胸内ポケットに入れていた伝手で頂いた形代が飛び出す。
動いた、初めて見た。
手が引いていく、嫌がっているように見える。
もうひとつ頂いた札を目の前に差し出し、半分殴りかかるように恐らく人間じゃないものに貼り付けた。
足元に、いや顔見たくないし。
耳に響くような嫌な音が鳴り数秒、目の前にいた得体の知れないものは何処かへと消えていった。
幾分か空が明るくなったような気がしなくもない。まだ夜だけど。
というか何てものを渡しているんだうちの先輩は、なんだあの御札強すぎる。
いくら自分達とは住んでいる国が違うからってこんなのありなのか。
ポケットに入れていたライトを再度手に持ち周りを照らす。
ふわふわと浮いている形代がこっちに来いと言うようにゆっくりと飛んでいく。
それに惹かれるように、奏斗と雲雀を半端無理やり引っ張って連れていった。
数十歩歩いた所だろうか、倒れているような人の影が見える。
草をかき分けライトを当てながら散策すれば、探していた人物が眠っていた。
直ぐに首元に触れるが息はしてる、心臓も動いてあるし脈も正常だ。
身体に一枚の札が貼られていた。
これが守ってくれたのだろうか。
でもさっきの物音といい変な影といいここに何故居るのかも分からない
ただ分かるのはここが危険な場所で凪ちゃんは何かに遭ってしまった。
そういう事だろう。
冷たい体を抱き起こし、ぺちぺちとやらかい頬を軽く叩く。
「凪ちゃん起きて、凪ちゃん」
「_____ぅ」
身体を揺すると少し顔を顰め唸った。
次第に目が開くが少し虚ろでぼんやりとしている。
「_____セラ夫?私、」
「凪ちゃん、自分が誰か分かる?」
「……四季凪アキラ、元腕利きの諜報員で今は自分が構えた事務所で請負人をしてる」
「君の相方は」
「セラフ・ダズルガーデン、元暗殺者で私とバディだった。今は私の事務所でエージェントとして活動してる何でも出来る奴。完璧すぎてキレそう」
「最後のはちょっと理不尽だけどまあいいや、凪ちゃんあの時どこ行ったの、俺らめっちゃ探したんだけど」
「あの時、あの時は____」
彼は何かを思い出すように口を開くが、記憶が混濁しているのか上手く話せていない。
ただ身体がぶるりと震えていた。
着ている羽織を脱いで四季凪を包み込む様に羽織らせた。
「帰ろ、奏斗も雲雀ももう限界だし凪ちゃんが危ねぇや、歩ける?」
「ごめん、足が動かない」
力が上手く入らない、そう言いながら申し訳なさそうに謝った。
雲雀にライトを持ってもらい、四季凪の目の前で膝を付く。
本人はきょとんとしながらこいつ何してんだみたいな顔をしてこちらを見つめた。
「乗って、こっちのが早い」
「まじ?お前私の事持ち上げれんの?」
「舐めてもらっちゃ困りますお客様乗れる?」
「うん、ちょっと待って、えいいの乗るよ?乗りますよ?」
「早くして」
よいしょと背中に重みを感じてから立ち上がれば、「うわたっか」と上から声が聞こえる。
186cmの景色はこんな感じですどうでしょうか。
「奏斗と雲雀動ける?ここから出て帰った方がいい思うし」
「もう今日は皆で泊まろうよ事務所僕もうひとりで寝れない」
「奏斗ビビりすぎてて草」
「お前もだろうが!!!」
恐怖を置き去りにして喧嘩をするなここで。
きゃいきゃいと小さな犬がじゃれあっているように吠えている二人に声を掛けながら鳥居を潜り抜けた。
その瞬間、上からの重さがぐっと増えた気がする。
声をかけても返事が無い。
「セラ、アキラ寝てる」
「神経図太すぎてうける、こんな時に寝るの凪ちゃんくらいでしょ」
「なんであんな所で気失っとったのかも分からんもんな」
「事務所戻ったら凪守りしなきゃ」
「子守りみたいに言うな」
ぱたりと冷や汗が上から降ってきて、早く戻ろうと そんな話をしながら三人一緒に早歩きで事務所に帰った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『縺薙▲縺。縺ォ縺阪※』
暗い場所から声が聞こえる。
聞いた事があるような声、聞きたくない耳にこびり付くような嫌な音。
『驕翫s縺ァ繧』
どうして私に話しかけるんだよ。
ドロドロとした液体が頬をなぞる。
気持ち悪い、ぬめぬめとした何かが足元で這っている。
目の前に黒い何かが現れた。
『縺ォ縺偵k縺ェ』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
はっと目を開ける、頭がぼんやりとして何も考えられない。
冷や汗が額から落ちてくる。
手汗が滲んだ手の平を見つめると、かたかたと小さく震えていた。
夢だ、今のはただの悪夢だった。
あれは関係ない、何も思い出してはいけない。
「凪ちゃん」
声が聞こえた、びくりと肩が跳ねた。
だけど優しい声だった、何も怖くなんかなかった。
ベッドサイドの明かりを付けられる。
明るい、あの時とは違う。
ばくばくと心臓の鼓動が早くて、それを落ち着かせようと深呼吸をする。
何か異変に気付いたのか、セラフは額の汗を拭くように撫でてくれた。
「汗凄い、さっきまで魘されてたけど悪い夢でも見た?」
「ちょっとだけ、でも分からない」
あれが何なのか分からずじまいだ。
結局私はあの時、何かに掴まれて引きずり込まれたのだろうか。
何かに連れていかれていたのだろうか。
現実なのか幻覚なのか、今は考える事なんて出来なかった。
「ちょっと待ってて」
何かを考える素振りをして、そう言った。
セラフがどこかへ行こうとする際、反射的に彼のインナーの袖を握った。
彼は後ろを振り返り、名前を呼ぶ。
「ひとりはいやだ」
いつの間にかそう口に出していた。
なんだかいつもより怖かった。
「ちょっと飲み物取ってくるだけ、すぐに戻るから」
そう頭を撫でられ、セラフは部屋から出て行った。
子供扱いしやがって、私よりも一つ年下のくせに。
周りを見るが、多分ここは事務所の中に設備された休憩室だろう、ベットが一つと椅子や机、窓にはカーテンが付けられている。
そういえば、奏斗とたらいはどうなったんだろう、家に帰ったのかな。
そう考えていると、セラ夫が戻ってきたのか休憩室の扉が開いた。
「ほら、すぐ戻るって言ったでしょ」
そう言って手に持っていたマグカップを渡してくれる。
甘い香り、少し湯気が出ている。
ホットミルクだった。
「作ってくれたの」
「コーヒーよりこっちのが眠れるようになるし、」
あったまるよ。
そう言われ、カップに口をつけた。
甘い味が口の中に広がる、温かくて美味しい。
じんわりと身体の内から暖まっているような気がした。
「凪ちゃん神社から出た瞬間眠ってたんだよ」
知らなかった、いつの間にか眠っていたのか。
でも分からない、さっきと同じで記憶がぼんやりとしている。自分でも何があったのか思い出せない。
ただあの黒い何かが居た。
嫌な考えが頭をよぎって、ふるふると横に振った。
やめよう、考えても無駄だ。
「良かった、見つけられて」
姿が見えなくなった時、まじで一番怖かった。
お前も怖いって思う事があるの
暗闇が怖いって感じたことがあるの
「なんか失礼なこと考えてるでしょ」
怖いことなんかあるよ、凪ちゃんがどっかに消えちゃう事とか。
泣いちゃうくらい怖い。
そう言って笑った。
笑って、頬を撫でてくる。
慈愛に満ちた瞳でこちらを見つめてくる。
「こわかった」
ぽつりと吐いた言葉は自分でも驚くくらい小さかった。
お前たちに追いつけなくて、何かに掴まれてて声も出せなくて。
ひとりにされて、暗くて怖かった。
弱音をひとつ吐くと、ぽろぽろと止められずに泣き言みたいに吐いた。
セラフの人差し指を赤子のように握ると、するりと手を絡めて握ってくれる。
「気付かなくてごめん、凪ちゃんが無事で良かった」
お前たちが居なかったら、一人だったらきっと帰ってこられなかった。
見つけてくれてありがとうと言いたいくらいだ、言ってやんねぇけど。
でももう夜の神社調査なんてホラーチックな事は懲り懲りだ。
実際自分の身に変な事が起きたんだから。
「奏斗とたらいは?」
「ああ、事務所のソファで二人して寝てるよ、ソファ同士くっつけて」
成程、泊まってんのかここに、結構夜遅かったしそりゃそうか。
じゃあいま起きてるってことは貴方は寝てないの?
「セラ夫はまだ寝てないの」
「寝てもいいんだけど、寝れなくてねぇ」
そう言ったセラ夫に、ふと口が動いた。
「じゃあ私と一緒に寝てくれませんか」
彼はきょとんとして、繋がっていた手により力が入った気がする。
少し頬が赤くなっている。
何に恥ずかしがってるんだこいつ
返事は来なかった。
だから急かすように言葉を続ける。
「なんだよ、私と寝るのは嫌ですか」
「そんなこと、ないけど」
そう言ってくれたから、ベッドの端にいって、ぽんぽんと隣に来るように布団を叩いた。
繋がれていた手が離れ、少し名残惜しい。
セラフは靴を脱いでゆっくりとベッドに入ってくる。
シングルベッドに男が二人乗っているせいか、ギシリと音が鳴る。
そのまま横になると、セラフもまた隣で横になった。
顔が近い。睫毛が長いとか、髪の毛さらさらだなとか、そんな事が頭に浮かんだ。
さっきまでは居なかったのに、今はこんなにも近くに居てくれている。
なんだかその事が無性に嬉しくて、彼の名前を呼ぶ。
セラ夫、そう呼んだ。
「なに?」
彼はこちらを見つめ、そう言った。
さっき手を握ってくれたみたいに、自分から指を絡めた。
拒むことなく握ってくれるところが優しいんだよな。
「お前が居てくれるから多分、さっきより良い夢が見れそう」
あんな怖い夢じゃなくて、きっと4人で笑いながらゲームをする夢とか、話をしている夢がきっと見れる。
そんな予感がする。
瞼が重くなって、視界が滲む。
セラフが手を繋いでいる逆の手で頭を撫でてくれている。
きっと今は眠れないセラフも、悪い夢じゃなくて良い夢が見れるよ。
それは奏斗も、たらいもきっとそう
彼は微笑んでくれる。
微笑んで、口を開いた。
「もうあんなもの見ないよ、大丈夫だから、俺が守ったげるから」
だから、おやすみ。
その言葉を聞いて、安堵するように意識が落ちていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
四季凪の身体に布団を掛けてやる。
眼鏡が着いていない顔を久々に見た
眼鏡ないと童顔に見えるんだよな。
つん、と頬をつついても先程眠ってしまった四季凪は起きる気配がない
あんなもの忘れたらいい。
凪ちゃんの身に何があったのかは分からない、でも覚えていなくていい ものだ。
「今後は怪しい依頼は引き受けるの止めとこ、ごめんねなぎち」
俺が好奇心に負けてしまって引き受けてみたいと言ってしまったが故に起こった事故みたいなものだ。
今後は怪奇調査はやめておこう。
そういう専門分野の人間でもないし
真っ黒の綺麗な黒髪を撫であげた。
額にキスを落とし、瞼を撫でる。
怖い事苦手なのによく頑張ったよ。
さっき泣きそうになってたのを少し我慢しているような気がしたから。
「起きたら、沢山甘やかしてあげんね」
そんなことを呟いて、ベットサイドの電気を消した。
きっと随分前にソファで眠ってしまった奴らが朝、おはようと騒いでそうだし、早く寝よう。
四季凪の腰に手を回し、身体を寄せた。
「おやすみ凪ちゃん」
今から君の夢の中に入ったげる。
怖い夢を見ても、それを退治して良い夢にするためにね。