コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
『初音ライダー剣』
第25話
“奮起”
♥、♠、♦のラウズカードを手中に収めたキングは夜の市街でレンと対峙した。
キング「実は今、ラウズカードを集めてんだよね。君のももらおうか。」
キングはレンにそう言い放ち、コーカサスアンデッドへと変化する。
レン「へっ!やるワケねえだろ!」
レンはキングの申し出を拒否してレンゲルバックルを取り出し、腰に装着する。
レン「変身!」
「OPEN UP」
レンはポーズを取った後、スピリチアエレメントをくぐって仮面ライダーレンゲルへと変身し、レンゲルラウザーを携えてコーカサスアンデッドに斬りかかる。コーカサスアンデッドは自前の剣でレンゲルラウザーを受け止めると、レンゲルを受け流した後、レンゲルの背後を取って背中から剣で一撃を浴びせる。
レン「うッ!?」
レンゲルは攻撃を受け流された挙句、手玉に取られた。激昂したレンゲルは♣10とJのカードを取り出し、10のカードをラウズする。
「REMOTE」
「REMOTE」により♣Jのカードからエレファントアンデッドが呼び出された。エレファントアンデッドは鉄球と金槌を振るってレンゲルと共にコーカサスアンデッドに挑みかかる。だが、コーカサスアンデッドはエレファントアンデッドを上回るパワーを発揮してエレファントアンデッドを弾き飛ばし、近くの壁にぶつけた。コーカサスアンデッドはその勢いでレンゲルにも剣を振るう。レンゲルはこれをレンゲルラウザーをかざして防ぐが、コーカサスアンデッドのパワーを受け切れず、弾き飛ばされてしまう。
レン「ぐはっ…」
レンゲルは壁に叩きつけられるが、あきらめずにコーカサスアンデッドに立ち向かう。レンゲルは♣5と6のカードを取り出し、レンゲルラウザーでラウズする。
「BITE」
「BLIZZARD」
「BLIZZARD CRUSH」
レン「うおああああああ!!」
レンゲルは雄叫びを上げて高く跳び上がり、両足に冷気のエネルギーを纏ってクロスキックを繰り出す。だが、コーカサスアンデッドは跳んでくるレンゲルの片足を片手で掴み、地面に叩きつけた。
レン「があっ…」
レンゲルは大ダメージを負って変身を解除され、レンの姿に戻った。コーカサスアンデッドはそんなレンの近くに寄り、レンゲルバックルのラウズバンクから♣のカードを全て抜き去った。
キング「あばよ。」
レン「…ま、待て…」
コーカサスアンデッドは♣のA以外のカードを奪い取って去って行った。レンは倒れたままコーカサスアンデッドに手を伸ばすが届くはずもなく、そのまま気絶した。
BOARD支部では、いつもと違う日常が流れていた。仮面ライダーとなるミク、MEIKOが戦う心を砕かれ、戦意を喪失していたからだ。
ウタ「ミク、いつまで落ち込んでるの?」
モモ「MEIKOさん、出撃しないんですか?」
ウタとモモが2人に声をかける。だが、2人は返事する気力さえなかった。
ミク「…」 MEIKO「…」
ミクとMEIKOは目が上の空になっていた。2人は以前、コーカサスアンデッドに完膚なきまでに敗れ、A以外のラウズカードを全て奪われてしまった。そのショックが彼女らに影を落としていた。そこにキヨテルが話を持ちかける。
キヨテル「ミク、MEIKO、落ち込んでばかりいても仕方ないので、少し話をしましょう。ウタとモモさんもこれに付き合ってください。」
ウタ「はい。」 モモ「はい。」
キヨテルはミクとMEIKOを激励すべく、2人に話を持ちかける。
キヨテル「まず、前回の戦闘の報告ですが、敗れたとの事でした。」
ミク「…すいません。」
キヨテル「謝らなくていいですよ。戦いに百戦百勝はないと言いますから。長く戦っていれば負けることもあるでしょう。」
ミク「…」
キヨテルはミクたちを励ますが、ミクもMEIKOもまだ目が死んでいた。特に、ミクは前回のような圧倒的な敗北を味わったことがなかったため、ショックが大きかった。
ミク「…いいですよ、チーフ。」
キヨテル「え?」
ミク「大した力もない普通の女の子だった私が、ちっとやそっと戦えるようになったくらいで、カテゴリーKなんて強い相手に勝てるワケなかったんです。」
モモ「ミクさん?」
ウタ「ミク、何言ってるの?」
ミクはいつになく弱腰だった。今までのミクからは想像もつかない落ち込みぶりだ。その様子にウタとモモが突っ込む。
ミク「私は今日でBOARDを離れて、独自にアンデッドと戦おうと思います。お世話になりました。」
ウタ「ダメだよ、そんなの!」
ウタは戦いから身を退こうとするミクを引き止める。
ウタ「ミク、言ってたよね?人間(ひと)が好きだから、守りたいって…そのために戦うって!」
ミク「ウタ…」
ウタ「たった1回の敗けが何なの?また戦って、いつかは勝てばいいじゃん!」
ミク「…」
ウタはミクを激励する。その顔には涙が滲んでいた。
モモ「…前にミクさんとMEIKOさんはアンデッドに捕まった私を助けてくれた…今度は私が2人を助ける番です。」
MEIKO「モモちゃん…」
モモもまたウタに続いて2人を激励しようとする。
モモ「私たちは戦う力こそないけど、戦えるミクさんやMEIKOさんを支えることならできるはずです。使命とか義務じゃなくて、ちゃんと私たちの意思で!」
モモは両手をグッと握ってガッツポーズを取る。
モモ「だから、立ち上がってください。私たち、何度でもミクさんたちを支えますから!」
ミク「…」 MEIKO「…」
モモの言葉に2人は少し心が動いた。そこに、キヨテルがさらに激励を付け足す。
キヨテル「ミク、MEIKO。私の中では、君たちに勝る仮面ライダーはいません。」
ミク「…へ?」 MEIKO「…?」
キヨテル「2人が強い心を持っているからです。これこそ、ライダーに相応しい何よりの根拠です。特に、ミク。」
キヨテルはミクを「最もライダーに相応しい」という。その理由が「最も強い心を持っている」からだ。
ミク「でも、カードを全部取られた…」
ミクはラウズカードを奪われたことを気にしている。そこはキヨテルがその不安を打ち消す。
キヨテル「ミク、君はラウズカードがなければ戦えませんか?」
ミク「へ?」
キヨテル「忘れましたか?ライダーシステムの特徴を。」
MEIKO「…あ!」
MEIKOはキヨテルに言われ、ライダーシステムの特徴の1つである「感情の起伏」によって攻撃力が増減するシステムを思い出した。
キヨテル「まとめましょう。ミク、MEIKO、今アンデッドと戦うことができるのは”私が認める仮面ライダー”である君たちだけです。」
ウタ「私も、2人が最高のライダーだと思う。」
モモ「苦しいときはいつでも言ってください。」
MEIKO「チーフ…」
ミク「ウタ…モモちゃん…」
キヨテル、ウタ、モモ、3人の激励を受けたミクとMEIKOは再び戦う意思に火をつけ、任務に当たる決意を固めた。
任務に出たミクとMEIKOはバイクを操作し、キング=コーカサスアンデッドの居場所を捜索する。その最中、ウタから通信が入る。
ウタ「カテゴリーKの反応をキャッチしました!既にレンゲルとカリスが戦ってます!」
ミク「了解!」
ミクとMEIKOはバイクを走らせ、コーカサスアンデッドの反応をキャッチしたという場所へ向かう。
高層ビルの間ではコーカサスアンデッドがカリス、レンゲルと戦っていた。2人のライダーはかつてコーカサスアンデッドにカードを奪われ、それを取り返しに来たのだった。だが、目的が同じでも意図が違う2人は個別に戦っており、連携が取れておらず、ついに足がもつれ出した。
リン「邪魔すんな!」
ルカ「邪魔はお前だ!」
レンゲルとカリスは互いを邪険にし、いがみ合う。そこに、ミクとMEIKOが到着した。ミクはブレイバックル、MEIKOはギャレンバックルを取り出して、腰に装着する。
ミク「変身!」 MEIKO「変身!」
「TURN UP」 「TURN UP」
ミクはブレイドに、MEIKOはギャレンに変身し、再びコーカサスアンデッドに挑む。
キング「へえ、また来たんだ。性懲りもなく。」
コーカサスアンデッドは左肩を剣の鍔でポンポンと叩きながらぼやく。そして、ブレイドとギャレンを迎え撃つ。
キング「諦めが悪いねえ、君たちは。」
ミク「私は諦めない!カードが無くたって戦える!」
ブレイドはブレイラウザーを抜刀し、コーカサスアンデッドに思い切り振り下ろす。
キング「…っ!?」
コーカサスアンデッドは思わぬ威力に一瞬、驚いた。ブレイドはさらに力を込めて斬撃を繰り出す。
ミク「うあああっ!」
ブレイドはコーカサスアンデッド目掛けて斬撃を繰り返す。コーカサスアンデッドはこの斬撃のラッシュを防戦一方で受け止める。しかし、その合間に隙を見つけ、ブレイドに斬撃を叩き込む。
ミク「うっ…」
ブレイドは怯んだ。だが、すぐに体制を立て直し、再びコーカサスアンデッドに挑む。コーカサスアンデッドは剣を手にブレイドを迎え撃つ。ギャレンは銃撃でブレイドを援護するが、コーカサスアンデッドはギャレンに接近し、剣で斬撃を入れる。
MEIKO「くっ…」
ギャレンは正面から斬撃をくらってよろける。だが、ブレイドはそこに詰め寄り、コーカサスアンデッドに斬撃を入れる。コーカサスアンデッドはその威力にまた一瞬、覇気を感じてよろけた。
キング「…何だ、この力…?」
ミク「言ったでしょ?カードが無くたって戦える、て!」
キング「カードでない?なら一体何だ?」
コーカサスアンデッドはブレイドのあまりの力に驚き、その力の源を問う。
ミク「人の”想い”の力を具現化するライダーシステム…私はそれを引き出してるだけ!」
ブレイド=ミクはライダーシステムの特徴”感情の爆発で攻撃力が増減する”システムを使いこなし、強い心の”想い”を乗せて攻撃を繰り出している。
キング「…人の”想い”?…そんなものが!」
ミク「それが仮面ライダーだ!私は…仮面ライダーブレイドだ!」
キング「うッ!?」
ブレイドは渾身の力を込めてブレイラウザーを振るう。コーカサスアンデッドはその一撃を剣で受け止めるが、あまりの力と覇気に腕にバックラッシュが響き、剣を手放しそうになった。
リン「ミク姉…」
ルカ「…」
苦戦して消耗していたレンゲルとカリスはパワーでコーカサスアンデッドに劣っているにも関わらず果敢に挑むブレイドの姿を見て、感慨に浸る。
MEIKO「…あの子はいつも、体を張って私たちに進むべき道を示してくれた。」
ギャレンはカリスとレンゲルの背中を後押しするように声をかける。
MEIKO「私たちも行きましょう。ライダーはミクだけじゃない!ミクだけに戦わせない!」
ギャレンはカリスとレンゲルに号令し、2人と共に再びコーカサスアンデッドに挑む。コーカサスアンデッドは4人のライダーの攻撃にも怯まず、剣を振るって4人を近寄らせない。だが、次第に押されていく。そして、ついに足に疲労が来てバランスを崩した。ライダーたちはその隙を見計らって攻撃の手を加速させる。
リン「でやあっ!」
まずはレンゲルがレンゲルラウザーの刃でコーカサスアンデッドの右腕を薙ぎ払う。
キング「うっ!?」
コーカサスアンデッドは右腕から剣を手放してしまう。次に攻撃に出たのはギャレン。ギャレンラウザーを連射し、コーカサスアンデッドの動きを封じる。
MEIKO「らああああっ!」
キング「ぐ…」
コーカサスアンデッドは銃撃の連射に怯む。その次はカリスがカリスアローを振るい、コーカサスアンデッドの腹部を斬り裂く。
ルカ「はああッ!」
キング「ッ!」
コーカサスアンデッドは腹部に斬撃を受けてよろける。ブレイドはこのチャンスを逃さず、高く跳び上がり、ブレイラウザーを頭上に掲げて思い切り振り下ろす。
ミク「だあああッ!」
キング「っ!?」
コーカサスアンデッドはブレイドの必殺の一撃を盾で防ごうとするが、ブレイドの斬撃は盾による防御を貫通してそのままコーカサスアンデッドの体を斬り裂いた。この一撃が決定打となり、ついにコーカサスアンデッドは地面に膝をついた。
ミク「はあ…はあ…」
キング「…はは、分かったよ。僕の負けだ。」
コーカサスアンデッドはそう苦笑してアンデッドクレストを開いた。ブレイドはそこに近寄り、ブランクのラウズカードをかざしてコーカサスアンデッドを封印した。
ミク「…ありがとう、皆…」
ブレイド=ミクはコーカサスアンデッドに奪われたラウズカードが散らばっていく中で、自分を支えてくれた仲間たちに感謝の言葉をぼやいた。