涼し気な陽気で散歩にでも出かけようか
そんな4月中旬のとある1日。
私、新海 結乃は
1ヶ月前に彼氏と別れて、少しずつではあるが…
心の傷を癒している最中だ。
その元彼の影響もあってか、恋愛をする意味がよく分からなくなってしまった。
付き合うって何のため?
独占するため?
合法的に体の関係になりたいから?
一人が寂しいから?
「はぁ……」
と、私はため息をこぼして、久しぶりに行きつけのレストランへ向かう。
美味しい朝デニッシュが私を呼んでいる!
もう少しだ
店に着くと………
〈カランコロン──〉
扉を開くのと同時に、木製のベルの音が響き
いい雰囲気のジャズミュージックが聴こえてくる。
そうそう!この感じだ!
久しぶりに我が家に帰ってきたような安心感!
元彼と別れてからというもの、外に出るのも嫌だったし、辛かった。
でも、もっと早くに外に出るべきだったなぁ………と、考えながら席に着いた。
さぁーて!朝限定デニッシュを頼むか!
サイドメニューは……チーズソースポテトサラダと……!ドリンクはアイスコーヒーだな!
ちょうど喉が渇いたし、冷たい飲み物がいい♪
〈ピンポーン〉
呼び出しベルを鳴らす
「はい、お客さま!お伺いいたします!」
あれ?この店員さん初めて見たなぁ
1ヶ月こない間に新しい人が入ったのかぁー
小柄で可愛らしい男の子だなあ
「お客さま…?」
「あ!ごめんごめん!えーとですね…!
朝デニッシュと、チーズソースポテトサラダと、アイスコーヒーをください」
「かしこまりました!」
元気の良い声で、ニコニコ笑みを浮かべながら厨房へ戻る店員さん。
小柄で、くるんとした質感の柔らかい茶色の髪、目はまん丸で優しくてチョコレートみたいだ………
私は勝手にその店員さんをぷーちゃんと呼ぶことにした。
もちろん心の中でね!
本当、トイプードルみたいな店員さんだ。
「いいなぁ……」
私は、気づけばぷーちゃんに見惚れていた。
すごく羨ましく思ったんだ…
彼の私生活や育った環境、性格とか好きなものとか何も知らないけど……
彼が完璧な人間に見えて、羨ましいと思ってしまった。
あんな人と付き合えたら幸せなのかな……?
でも、もし付き合えたとしても
すぐ不安になって辛くなって……
相手にウザがられるのがいつもの私のパターン。
付き合うってしんどいわ!
よーしっ!!もう恋なんてしない!!
ぷーちゃんに、ちょっと目を奪われたけど…
推しとして…!そうそう、アイドル的立ち位置で見よう!
ぷーちゃんはアイドル!
これからここに通ってぷーちゃんに癒やされるとするか!
こうして、私の推し活ライフが始まる!!
と思ったのだが…………
3週間後──
「えっ?!!」
私は目を大にして、ぽかんと口を開けた。
「そうなんですよねー…!真面目な子だと思っていたんですけどね………さすがに盗みを働かれると…だから彼をクビにしたんです。」
そうやって、レストランの店長が口を開いた。
どうやらぷーちゃんは、店のお金をちょっとずつ抜いていたらしい………
それで……警察には突き出さなかったのだが、ぷーちゃんをクビにしたと店長が話してくれた。
………私のぷーちゃんが………
そんな……
私は信じられなかったし信じたくなかった
いつも笑顔でニコニコしてくれた彼
最近少しづつコミュニケーションがとれていたのに…
彼が24歳で、実は私よりも1つ年上だってことも知れたし……!
彼が近所に住んでいるってことも知れたのに…
彼が甘いもの好きで、好きなタイプは派手な人って事も知れた………
なのに………!
私は………彼のことを……いつの間にか好きになっていた。
自然と涙が溢れてしまい…
申し訳ない気持ちになった。
そうだ、彼は悪い事をした。
それを受け止めないといけない。
私は早めにレストランを出て、帰宅した。
心にぽっかり穴が空いて
この隙間を埋めるものなんてこの世に無いとまで思えた。
私は、またクソみたいな日々を過ごすのか……
すがれるものを探す日々…
それがまた始まるんだ…
〈職場にて─〉
「はぁ……」
大きなため息をついて、職場の同僚に注意をされる
「結ってばさ〜、ため息つくの今日で何回目か知ってる??」
「知らんし…知りたくもない」
「分かってないようだから教えてあげるけど〜今ので14回目よ?コッチだってため息つかれると仕事できないっつーの〜!」
「ごめんて…」
「はぁ…」
「な〜に?!何があった…?ほれ、話してみんしゃい!!話は聞くからさ! 」
「でも言いたくないもん……恥ずいし……」
私は終始俯いて答える。
「いいから!今日、いい店連れてってあげる!
踊りながらさぁ、パーッとストレスぶっ飛ばしちゃおう!」
「私そんなタイプじゃないけど…」
「いいから!今日の21時頃駅前で待ち合わせね?絶対めっちゃエロ可愛い格好してきなさいよ!」
「えぇ………」
少し黙った後、私は返事をした。
「わかった…。華凜がそう言うなら。」
私は、親切にしてくれる友の誘いを断るわけにはいかないと思い、華凜の提案を承諾した。
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