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その日の夜。
外回りのついでに外で適当に夕食を済ませた後、まだ気分的に帰りたくなくて、修さんの店へと足を運ぶ。
昨日の今日で、彼女と一緒に同じ頃にしていた夕食を思い出す。
彼女、今日は残業って言ってたっけ。
残業じゃなければ、また今日も同じような時間過ごせてたのかな。
前はよく残業帰りに、修さんの店で食事をしていた彼女を見かけてたな。
そんな彼女がまさかあんなに料理上手だなんて思っていなかった。
元々料理上手だったんだろうか。
それとも今までの彼氏に作って上手くなったんだろうか。
今まで他にどんな料理作ったんだろう。
アイツにも・・もちろんそんなことしたんだよな。
いや・・もうそんなこと考えても仕方ないけど。
例え隣に住んでいるとしても、まだ気軽に訪ねられる関係じゃないのがもどかしい。
今日はせめて、修さんの店ででも会えないかな、なんて。
彼女のことを考えながら、修さんの店へと着いて店の扉を開ける。
すると。
願っていた想いが届いたのか、いつもの奧の席に見慣れた彼女の姿を見つける。
やばっ。
ホントにいた。
こんなタイミングで会えるなんて、やっぱオレと彼女縁あるのかも。
なんて喜んでいたのも束の間、よくその場を見ると、彼女が隣の誰かと話しているのに気付く。
それは、あまり思い出したくない見たことのある場面。
オレが彼女を遠くでずっと見つめていた時に、何度も見かけた姿。
隣にいる男の姿は、嫌でも見覚えがある。
ずっと彼女の隣にいたその男。
彼女がずっと幸せそうに笑いかけていたその男。
当時を思い出して、忘れかけていた胸の痛みがズキッと奥の方で響く。
二度と見ることないと思ってたのに。
もうこれからは彼女のその隣にはオレがいれると思ってたのに。
なんで・・・?
なんでそいつと一緒にいるの・・・?
やっぱりまだあなたはそいつのことが忘れられないの・・・?
だからオレとの関係に踏み出してくれないの・・?
ようやく彼女との関係に自信を持て始めたのに、また昔を思い出して自信が一気に無くなる。
若くて見てるだけで何も出来なかったあの時の自分が蘇る。
あんなにも彼女が想い続けていた相手が今目の前にいて、彼女の気持ちがまた戻りそうで不安になる。
例えオレがアプローチしたところで、彼女にそいつへの気持ちが少しでも残っていたとしたら終わりだ。
オレが何をしたって出る幕なんてない。
元々相手にしていなかったこんなに年下のオレなんか、結局相手にされない。
年上の大人な魅力でまた彼女に言い寄られたら、きっと彼女は・・・。
不安になりながらも、やっぱりその二人の様子が気になって一歩ずつ近づいていく。
すると・・・。
「いや。オレの勝手な都合だよな」
「・・・そうですね」
「透子。ちょっと話出来る?」
「今してますが」
「いや、これからちょっとゆっくり・・」
「今からご飯食べるんで」
「それ終わってからでも」
「終わったらすぐ帰ります」
実際聞こえて来た二人の会話は、オレが心配してたような内容でもなく、もちろん昔を思い出すような甘い雰囲気でもなく。
昔の二人とは思えないような他人行儀で冷たく話している彼女。
そんな彼女に驚きつつも、なんとなく昔には戻っていないであろう彼女の態度にホッと胸を撫で下ろす。
二人の会話の感じから、完全にこの前の男は彼女に未練タラタラなのがわかる。
お前が彼女を傷つけたくせに。
「じゃあ、今でもいいや。オレまた明日大阪帰るから」
「そうですか」
「だから、もう今日しかないから今話すよ」
二人に気付かれないよう少しずつ近づいて聞き耳をたてる。
こいつ大阪にいるはずなのに、またなんでここに?
こっち来たついでに彼女を口説くとかありえないだろ。
今まで放っておいて、今更何やってんだよ。
あんなに酔いつぶれた彼女を実際見ているオレは、ただ不安でしかなくて。
頼む。
彼女をこれ以上惑わさないでくれ。
オレから彼女を奪わないでくれ。
「透子。あの時はあんなにオレに甘えてくれてたのに」
何気なくそいつが言った言葉に少しズキッとする。
一瞬オレの知ってるあの頃の彼女が、オレの知らないそんな彼女の姿が、脳裏に浮かんで切なくなる。
こんなにもクールな彼女が甘えた時間。
この男には見せたそんな甘えた彼女の姿。
まだオレは見たことなくて。
見れるかもわからないその現実にイラッとする。
「・・・昔の話です」
冷たく彼女がそう返しても。
「もう昔に、あの時みたいにオレ達戻れないかな?」
そいつは引き下がらずストレートにその言葉を伝えた。
それ、言うんだ。
「ホントに今大切にしてくれる彼氏なんていんの?」
「・・・います」
彼氏・・・。
この人に彼氏いるって言ってるんだ。
でも、きっと彼女にはオレ以外そういう相手はいないはず。
だけど、多分きっとまだ彼女はオレを彼氏だとも思ってもいないはず。
でも・・。
彼女にはこの男に今は気持ちがないのだとはわかる。
だから、もし。
彼氏がいるという嘘をついて、多分この男から離れたいということなのだとしたら・・・。
「透子。オレ・・今もお前のこと・・・」
絶対それ以上言わせない。
今更彼女を奪われてたまるか。
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