深夜2時。
《Irregular Casino》のフロアはライトダウンされ、スタッフたちも帰り支度を始めていた。
「まろちゃん、今日もお疲れさま」
「おつかれ、初兎。……来い、こっち」
Ifは控室とは別の“特別な”部屋――VIPラウンジの奥、鍵のかかった秘密の空間へ初兎の手を引いていった。
ドアが閉まる音と同時に、静寂。
「やっと二人きりだな。……こっちおいで?」
ソファに座ったIfの膝の上に、軽々と引き寄せられる。
「ちょっ、またそれ……今日は僕、疲れてるのっ」
「疲れてるなら、なおさら甘えろ。……彼氏が癒す時間だろ?」
「うぅ……ずるいよ、まろちゃん……」
それでも逆らわず、初兎はIfの肩に体重を預ける。
腕の中は落ち着く香りと、安心する心音。何より、誰にも見せられない“素の僕”でいられる唯一の場所。
「ねぇ、まろちゃん。……僕、バニー姿のまま抱きしめられるの、ちょっと恥ずかしいんだけど」
「じゃあ脱がせる?」
「やっ、やっぱりこのままで!」
声を裏返しながら初兎が抗議すると、Ifは喉を鳴らして笑った。
「可愛い。……マジでずるいくらい可愛い、お前」
「そんなの……まろちゃんにしか言われないからいいけど」
「だろ? 俺だけが知ってる、お前の顔が好きなんだ」
そう言って、Ifは初兎の頬にそっと唇を落とした。
一瞬、びくっと身体を強張らせたあと――初兎はゆっくりと目を閉じる。
「……もう……バニーっていうより、うさぎのぬいぐるみになってきた気がする」
「それでいい。俺専用のな」
「……それ、あとでちゃんと責任取ってよ?」
「もちろん。どんな形でも、初兎を俺だけのものにするから」
甘くて、独占的で、でもどこか優しいその声。
夜の静けさに包まれながら、ふたりだけの秘密のイチャイチャ時間は、まだまだ終わりそうになかった。
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