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「、、、桃乃、、さんは、あのっ」
「同級生なんだし桃乃でいいよ。」
「ぁ、じゃぁ、、えっと、桃乃、、、」
「、、、あの音楽って、、、?」
聞きたいことを聞いて頭を整理させよう。
「俺ね、隣町のイタリア料理店で毎週水曜歌ってるの。」
「、、、ん?」
「、、、信じられないって顔してるね。」
いや当然だろう?
だって、鉄の男が歌ってるとかは想像ができない。
「、、、本当だよ。」
「それでね、今月末の水曜に自分のオリ曲を発表しよってなって、、、」
「、、、一応伴奏は出来たんだけど、私作詞ができなくて、、、」
「、、、それ、俺と関係ない気がして、、、」
「さっきの音楽は聞いてくれたんだよね?」
「あぁ、うん。」
「それと同じ感じでいいから作詞してほしいの」
言ってる意味がわからなかった。
俺が書いたのは詩だ。
桃乃の願いは詞だ。
同じ“シ“と読むが全く違う。
それに俺は詩の担当でも詩を書くことが得意でもない。
ただ俺には詩や、コンテストという周りには秘密にしていることがバレてしまっている。
言わないと言っているが、俺がやらないと言ったら、その気になれば言いふらすだろう。
「、、、別に嫌ならいいよ。」
「無理意地する気はないから。」
心でも読んでるかのように見透かされている。
「、、、考えてもいい?」
「いいよ。」
「、、、ねぇ、そのお店?教えてもらってもいい?」
「雰囲気とか、そういうの見て、俺に書けるかとか知りたいし。」
「、、、いいよ。」
「フォニアってとこ、」
「、、、あの有名店?」
「そ。」
「、、、なるほど?、、、まあ暇なときに行くね」
「、、、今日は?」
「、、、ぇ?だって水曜はいるんでしょ?」
「見られたくないとか、、、」
「、、、優しいね、俺は別になんとも思ってないから、来てくれても構わない。」
「、、、、、、いいよ、引き受ける。」
「へ?」
鉄の男にしては間抜けな声を出した。
「、、、だから引き受ける」
「そこまで言うなら少し興味がある。」
「それに俺もちょうど新しいことに挑戦したかった。いい機会だよ。」
「、、、ありがとう」
「これ、あげるよ」
桃乃がくれたのは作詞の方法を載せられた本。
「ありがとうっ、来週までには返すよ」
「いいよ、俺もう読まないから。」
「ぇ、でも、、、」
「それ読んでもう一度考えて、それでも、よければ明日、ここで詳しい話するね。」
「、、、うん。」
そこまで会話を重ねたあと、桃乃が部室棟を出た。
次の日、放課後すぐに教室を出る桃乃。
俺も少し遅れて後を追う。
部室棟前で桃乃と複数人の女子が集まっていた。聞こえてきた会話はあまりにも責め立てるような言い方だった。
「ねぇ、手紙くらい読んでくれたっていいじゃん、」
「返事どころか手紙すら知らないの!?」
「、、、。」
「なんとか言いなさいよ」
「あのさッ、そんな複数人で言うことないんじゃないかな?」
俺はすかさず間に入って止めた。
余計なお世話かもしれないが、女の鋭い目が敵意としか読み取れなく、本能的に止めてしまった。
「、、、ごめん、急に迷惑、、、だった?」
そう桃乃の方を振り返ると涙目で今にも泣きそうな顔をしていた。
「ぇ、ちょッ、俺なんか酷いこと言った!?」
「ごめんね!?」
慌てる俺に、桃乃は
「ちがッ、、、こわかった、、、ッ“」
鉄の男、それはポーカーフェイスで誰にも冷たく、近寄り難い存在だった。
でもそれは、違うのかもしれない。
今の桃乃はあまりにも一般的で普通の男だ。