テラーノベル
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掠れた声が、静かな寝室に響く。
マイロは、自分を組み伏せるルイの瞳に宿った、あまりに深すぎる絶望と執着を見た。
記憶はない。
自分が「売られていた」ことも、ルイが「血の海を潜り抜けて自分を奪い返した」ことも、何ひとつ思い出せない。
なのに。
ルイのその掠れた声が、マイロの脳内の、開けてはいけないはずの扉を激しく叩く。
「……ルイ……」
マイロの唇が、無意識に動く。
ルイは、獲物を逃さない獣のような眼差しで、その続きを待った。
自分を拒絶する言葉か、あるいは罵倒か。
「……ルイ……姉……?」
時が、止まった。
ルイの指先が、目に見えて大きく跳ねる。
「……っ、マイロ……今、なんて……」
「……わからない。……でも、ルイさんのこと、ずっとこうやって……呼びたかった気がして……」
「ルイ姉」と呼んだ瞬間、胸の奥がちぎれそうなほど熱くなって、
自分を縛り付けているはずのこの腕が、世界で一番恋しい場所に思えてしまった。
ルイは驚愕に目を見開いたまま、動くことができずにいた。
もしかしたら、戻れるかもしれない
覚悟を決めても、あの日々は鮮やかなまま、色褪せてくれない。
戻りたい。あの頃の関係に。
たとえ、それが叶わなかったとしても。
支配するのはもう嫌だ。
「……おかえり、マイロ。私は君を今度こそ守るから。支配じゃなくて、ともに生きよう」
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