テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……支配するのは、もう嫌だ」
ルイのその独白が、二人の間に漂っていた重苦しい空気を、静かに、けれど決定的に塗り替えた。
マイロを組み伏せていた腕から、力が抜ける。
ルイはゆっくりと身を起こし、ベッドの脇に力なく膝をついた。
「ルイ……姉……?」
マイロが上体を起こし、不安げにルイの顔を覗き込む。
ルイは、自嘲気味に口角を上げた。
その瞳には、ただひたすらにマイロの幸せを願う、かつての少女の情愛が灯っていた。
「……ごめん。私は君を救うと言いながら、ただ自分のエゴで、君を別の檻に閉じ込めただけだった」
ルイは震える指先を、マイロの首に嵌まった「銀のチョーカー」に伸ばした。
それは、魔法を封じるための道具であり、ルイがマイロを「自分の所有物」だと証明するための、残酷なしるし。
「……君が望むなら、どこへでも行けばいい。……私は、もう君を縛らない」
ルイの手がチョーカーの留め具に触れる。
カチリ、と小さな金属音が静寂に響いた。
これを外せば、マイロの記憶が戻るかもしれない。
記憶が戻れば、地獄を思い出させてしまった自分を、彼女は憎むだろう。
……それでもいい。君が、君として生きてくれるなら。
「……ルイ姉。」
マイロが、ルイの手を上からそっと包み込んだ。
チョーカーは、あと少しで外れる。自由は、すぐそこにある。
なのに、マイロはそれを拒むように、ルイの手を自分の首元へ引き寄せた。
「……外さなくていいです。……これ、ルイ姉がくれたものでしょう?」
「……え……?…なんで?」
「思い出せなくてもいいんです。……今の私が、こうしてルイ姉の隣にいたいって言ってるんだから。……これは檻じゃなくて、私とルイ姉を繋ぐ、大切な約束です」
ルイは驚愕に目を見開いた。
救ったつもりで、支配したつもりで、……救われていたのは、自分の方だった。
「……マイロ。でも…それじゃあ君はずっと」
「私はルイ姉のそばにいるって、ここにいるって言ってるんです」
…これで良かったのか。
それは誰にもわからない。
ルイはふと窓の外の月を見つめた。
銀のチョーカーは外されることなく、月明かりを浴びて、静かに二人の共依存を祝福するように輝いている。