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※注意、この作品のシリーズには少々センシティブ、暴力的な内容を含む話がございます。
苦手な方はお控えください。
誰も居ない静かな田舎道、この集落ではもう人は居ないと言っても良いほど建物は崩壊し、まるでただの廃墟のような集落だ。
同級生など1人居れば良い方、学校全体で10人居たらかなり良い方ぐらいに。
そのため、小学生の頃から同級生は居なかった。居ないのが当たり前なのだけど、やはり寂しい。中学校に行ってもそうだと思っていた。入学式の日、まだ一度も汚れていない純白のシャツに袖を通して、まるで今の自分の心を表しているかのような黒いネクタイを纏い、憂鬱な気持ちで入学式へ向かったことをまだ、昨日の事のように思い出せる。
だが、今はそれを忘れてしまいそうなほど幸せだ。それは、まさに今隣に居る子のおかげだ。名前は桑田さく、天使のように儚くさらりと伸びた白髪に、朧気な瑠璃色の瞳、少しネクタイは歪んでいるが、そこを含めて大好きな人。この子が居なかったらきっと、自分はまた、小学生だった頃と同じように、孤独で、1人寂しく生きていただろう。家に帰っても母親は仕事で朝早く家を出ては、夜遅くに帰ってるため居ない、集落の人は皆穏やかだけど、それでも自分の心は今まで誰にも埋めることはできなかった。なにせ同級生も親も居ないんだ。そんな状態で心の扉を気安く開くわけがない。
でもこの子は、そんな自分を救ってくれた。
ただ同級生なだけなのに、自分の内にある何かがすっと消え、ゆっくりと、優しい手で開かせてくれた。
そのおかげで今も自分は生きられる。この子が居れば、なんだって出来る。そう、なんでも。