俺の生活

逃げようとしたことは何度もあった。

兄はいつだって俺を支配しているし、従兄弟にも性暴行をされる。

始まったのは中学生の時から。まぁ小学生の時も時々片鱗を出していたのであまり違和感は無かった。だが困惑したし、何より辛かった。逃げようと作戦を練るとき、いつもリスクを考えてしまった。

盗聴器、GPS。仕込まれているのは何となく分かっていた。しかしそれが何個自分に付けられているか分からない。兄と従兄弟の財力と賢さであれば、町中の監視カメラをハッキングすることだって可能な筈だ。俺の事を監視する人材も。

逃走に1度失敗すれば、何をされるのか、どれだけ生きづらくなるだろうか。それを常に考えてしまう。

すちやみことより、こんな俺が憎い。

小学生の頃から、どれだけ金がかかる物も全て手に入った。それでも友達は出来なかった。1人だけ俺と仲良くしてくれる子がいたが、その子は小4の頃転校してしまった。

その時はかなり人に当たり、クラスメイトを傷つけた。そこから自己嫌悪に陥り、自分への自信と人からの信頼が無くなったまま中学を過ごした。兄からの提案でこっちの高校へと引っ越したが。

俺は人の中でもかなり自己中で捻くれてる方だろう。自分でもわかっている。

いくら最低な兄であっても、家に俺を置いてくれるだけマシなのだ。兄は家賃も払ってくれているし、俺が家事やバイトをしようとしてもいつも兄に止められる。

傍からみれば最高の兄だ。

俺からしたら最低最悪なんだけど。

すちdis

俺がらんらんに依存していったのっていつからだったっけ…まぁ多分、らんらんが産まれた時からだったと思うけど。

兄弟だし当然の事なんだけど、俺とらんらんは血が繋がっていて、生まれた時から一緒にいたんだって。そんな当たり前のことでも言葉に表すことでこの有難みを感じられる。すっごく愛おしくて…らんらんの全てを俺の物にしたい。

小学生の頃のらんらん。

あの時は今より感情や表情が豊かで見ていて面白かったなぁ…それに、俺に敵わないと知ったあの時の顔…今でもちゃんと覚えてるよぉ…。あの時から俺の計画は始まったんだっけ。

小4の頃、ある日を境にらんらんは俺にそっけなくなった。大人に近づいたんだと思ってた、けどあまりにも急だった。勿論動揺したよ…俺に強く当たるらんらんに殺意を抱いた時は。俺は基本、誰にも何も感情が湧かないまま死ぬのかと思っていた。

けどその殺意は…純粋な「殺したい」という思いではなく、疑問も含めての殺意。

『ねぇらんらん、どうして？俺はらんらんの事愛してるのに。なんでらんらんは俺の方を向いてくれないの？他の奴らは全員こっちを見てくれたのに。』

俺は生まれた時から頭が良かった。

周りとは段違いの賢さで、らんらんとも勿論差が開いた。小学4年生。あの頃の俺からしたら小2のらんらんの努力なんて「馬鹿だな。」としか思えなかった。

中学生の頃のらんらん。

俺の前でも学校でも暗くなり、休む日数も増えた。そしてらんらんが中二の頃、両親が死んだ。その時はかなり俺を責めたっけ。

「お前のせいだ！」って…。その時の俺は「なんでそんな怒ってるの？」としか思えなかった。親が居なくなっただけだ。その頃俺は高一でバイトもできるし祖父母もいる。

彼奴らが居なくても生きていけるのに。

そんならんらんは俺を泣きながら責め続けて、殴ってきた。

感情的になりすぎて、その時はらんらんも驚いたみたい。そんならんらんに俺は”躾”をした。泣いても気を失っても、らんらんが俺に弱くなるまで。許しを乞うまで。そこかららんらんは俺の言うことをなんでも聞いてくれた。

高校生のらんらん。

今のらんらんは精神も成長してきたみたい。色々なことを冷静に考えられるようになったし、俺が刻み込んだ通りに世の中をあまり信用しなくなった。けどそれにはデメリットもあった。らんらんは過去を見返しすぎていた。過去の自分を思い出しては自分を嫌い、後悔する。

それと同時に俺への劣等感も増した。

今のらんらんが見ているのは過去の俺だけ。今の俺のことは全然見てくれないみたい。

凄い嫉妬したよ…過去の自分と今のらんらんを殺したいくらいに。

散々余計なことを考えるなと躾た筈なのに。

俺は俺に従ってくれないらんらんが嫌いだ。愚かで馬鹿で俺をずっと見てくれているようならんらん。それが今のらんらんには存在していないみたい。

まぁ今もらんらんを愛しているし、絶対に離す気はないけど。

賢い俺には色々な人がついてきた。皆下僕のように俺に従い、俺に嘘をついた。

そんな俺が唯一手に入らない唯一無二の存在。

生き様に嘘をつかないらんらん。

一生俺の事を嘘だと思っている愚かな子。

そんならんらんが俺は大嫌い…勿論嘘だけどね。