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4 - 春の終わり 青桃

♥

50

2023年05月06日

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ゴールデンウィークに一作は

出さなければ、と躍起し季節遅れな

作品が出来上がりました。


ぜひ読んでみてください。



ATTENTION


irxs・nmmn 青桃

ルールを理解している人のみどうぞ。

地雷さんはturn right





「春の終わり」







散りゆく桜を見上げ、君は泣いていた───。














「やっほー!」

チャイムが鳴り、元気な声が聞こえる。

ないこだ。

玄関でドアを開け、我が家へと招き入れる。

「今日は何の動画取るんだっけ」

「えーっと、なんだっけ」

忘れちゃった、とないこはへにゃっと笑う。

かわいい。

「飲み物出すね」

「ありがと」

こうやって会えるだけ──ってか一緒に活動できて嬉しい。

最高のリーダーだと思う。







ポロン、とスマホが鳴る。

画面を見ると、

『今日の動画伸び最高!』

とないこからのメッセージだった。

この前撮った動画は、事前に募集しておいた質問に答える動画。

プライベートが知れるかも、とか思いが知れるかも、なんて思って見ているリスナーが多いのかもしれない。

『撮ってよかったな!』

そう送る。

すると、すぐに返信が返ってくる。

『だなっ!』

かわいいなあ。

そう思いつつも、かっこよさも兼ね備えてるんだよな、と感嘆のため息を吐く。

やっぱ、勝てないわ。




そのあと、少し時間ができたのでエゴサをしていた。

たくさんの投稿を見る中、フォローしている人が投稿をしたらしい通知が来た。

開くと、「ハル」だった。

『もうすぐ桜が咲きますね 俺もあと少しで』

そういう文と、桜を下から撮った写真。

文末が何とも言えない。

ただ、写真を撮るセンスはある。

ないこ、なんでもできすぎだろ。

──「ハル」は、ないこだ。

そのことはたまたま知った。

まさか別の垢があるとは思っていなくて、少し驚いたことは忘れない。

俺の見る専垢で見ているが、意味深投稿が多い。

今のような、普通にも感じるけど違和感も併せ持つもの。

気丈に振る舞っているように見えるけど、本当は何か抱えているものがあるんじゃないか。

そうやって見ているが、今のところ何も見つかっていない。

何かあるなら、俺を頼ってくれないかな。

俺は、ないこが────。







『お花見しよ』

ないこからのメッセージ。

俺は『いいよ』と返す。

すぐに既読がつき『今空いてる?』と返ってくる。

今は少し、動画編集が残っているけど…ないこのためならそれくらい後回しにできる。

『空いてる』

その後のやりとりで、場所は近くの公園に決まった。




「急にごめんね〜!」

ないこが、公園の入り口から走って来る。

俺の方が早く着いていた。

昨日まで満開だった桜は、今日はもう風に乗ってはらりと散っていく。

気付いたらないこの頭の上に花弁が乗っていて、なんだかおかしくて笑みが溢れるのを堪えられなかった。

そんな俺にないこは、冗談混じりで怒った。

「俺から誘って何だけどやっぱ帰るわ」

「なんでだよ!帰るなよ!」

「帰るわけないって。嘘嘘。」

いひひと言わんばかりに、いたずらっ子のように笑った。

そんなないこは、徐々に落ち着き、おもむろに桜の木を見上げた。

「もう散っちゃうんだね」

唐突だった。

「そうだね」

そう返すことしかできなくて、むず痒い。

でも、ないこは何も気にしていないようで、ぽつりぽつりと、言葉を紡いだ。

「なんか今、凄い満足してる」


「めちゃくちゃ楽しかった」


「みんなに出会えてよかったよ」


「あのね、まろ」




















「俺、桜が散ったら消えちゃうんだ」















はらはらと、桜が散っていく。



散りゆく桜を見上げ、君は泣いていた──。




あまりにも綺麗で。

あまりにも儚くて。

あまりにも脆くて。



時が、このまま止まってしまえばいいのに──。










急に強い風が吹いた。



辺り一面が、桃色に包まれる。

所々から楽しそうな声がする。



「今まで言えなくてごめんね」


「ありがとう」





桜が、どんどん散っていく。

例年と違って、一瞬で散っていく。






体が透けて、君まで桃色に───いや、ないこは桃色だ。

違和感があり、違和感がない光景。

気付けば、その景色は滲んでいた。












さっきよりも強い風が吹く。

その風に乗って、ずっと聞きたかった声が届いた。














「──大好き」









返したい言葉があったのに、喉につかえて出てこなかった。
















桃色の花弁の全てが地面に落ちた。














春が、終わった。













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