ぺ 「 あ〜食べた食べた! 」
ぐ 「 普通に美味かったな〜 」
お腹パンパンだわ。
夜まで時間がある。さて何をするか…
ぐ 「 あ、そういえばさ 」
ぺ 「 ん?どした 」
ぐ 「 お前、俺とデュオ組まん? 」
デュオ―――冒険者ギルドの制度の一つだ。
デュオ・トリオ・カルテット・クインテットとそれぞれ2人、3人、4人、5人組のチーム、即ちパーティーを組むことが出来る。
ギルド側の冒険者の死亡率を下げる為の策だ。
パーティーを組めば一々知らない人と臨時でパーティーを組む必要も無いし、報酬は人数分で割ることになるが1人増える事に報酬が0.2倍増える。
つまりデュオなら通常の1.2倍の額の報酬が受け取れるってことだ。
しかも人数が増えれば効率も良くなるので組んで損は無いだろう。
それに、ぐちつぼは強いし、信用出来る。
断る理由はない。
ぺ 「 勿論いいけど、お前は大丈夫? 」
ぐ 「 当たり前よ、それに俺魔術師だから前衛いないと困るわ 」
ぺ 「 いやお前割と突っ込むだろ 」
ぐ 「 あ、バレた? 」
ぺ 「 バレバレだわww 」
…この調子だと毎日愉快に過ごせそうだ。
てか歩きながら話してるけど、これどこに向かってるんだ…?
ぺ 「 ぐちつぼ、これどこ向かってるん…? 」
ぐ 「 え、冒険者ギルドだけど。 」
は?往復したら3時間以上かかるのに???
てか来た道と違くね…?
そう思っていたら明らかに怪しげな路地へ進んでいくので、流石に止める。
ぺ 「 いやいやいや、明らかに道おかしいだろ! 」
ぐ 「 シーっ… 」
ぺ 「 いや、シーっじゃなくて――― 」
問い詰めようとした途端、ぐちつぼがなにやらボソボソと喋り出す。
……いや、魔法の詠唱だ!
ぐ 「 ――――! 」
ぺ 「 おわぁッツ!? 」
唱え終わった瞬間、ぐちつぼにグッと引き寄せられる。
思わず目をつぶってしまい、再び目を開けるとギルドのトイレの個室の中だった。
ぺ 「 ちょ、なんでトイレ…ってかガチ狭い!早く出ろ! 」
ぐ 「 ちょっと待て俺も身動き取れないし下手に動くな! 」
ぺ 「 苦しい…ットイレで絶命したくないわ!何とかしろぐちーつ! 」
ぐ 「 今やってるッ!ふッ…!う…ッ、クソ、左手がお前に潰されてるんだよ…ッ 」
ぺ 「 ちょ、どこどこ!? 」
――――奮闘する事5分――――
ぐ 「 いくぞ、せーのッ! 」
ぺ 「 ふんっッ! 」
バタンッ
ぐ 「 だ〜ッ、やっと開いた… 」
ぺ 「 はぁッ、苦しかった…ッ」
ガチャッ
ぺ・ぐ
「「 あッ 」」
「 ……… 」 バタンッ
今のタイミングでトイレ入ってこられたらそりゃ…
ぐ 「 …多分誤解されたな。 」
ぺ 「 ……うん。 」
ガチで気まずいやん……
ぐ 「 とりあえず一旦トイレ出るか。 」
ぺ 「 …次はもっと場所考えようぜ。 」
ぐ 「 そうだな。 」
2人とも賢者モードみたいになりながら、受付の方へと向かう。
「 こんにちは、冒険者ギルドへようこそ。パーティーの申請ですか?カードの再発行ですか? 」
ぐ 「 パーティーの申請です。俺ら2人でデュオの申請でお願いします。 」
「 かしこまりました。ではこちらの書類にサインをお願いします。 」
そう言って差し出された紙をこちら側に寄せる。
ぐ 「 ぺいんと先にサインしといて。 」
そう言って何やらぐちつぼはカバンを漁っている。
ぺ 「 書き終わったよ、はいお前。 」
ぐ 「 ん。今のうちに冒険者カード出しといて。 」
だからカバン漁ってたのか。
俺も確かポッケの中に入れてたはずだ。
あれ…?
右だと思ったんだけど…いや、左にもない!
あ、ちゃんとカバンに入ってたわ。
焦った〜…
ぐ 「 書けました、お願いします。 」
そういいぐちつぼが紙を差し出すと、受付の人は驚いた様に俺ら2人を交互に見ている。
まぁ片方はここらじゃ有名な嫌われ貴族、片方は国中で有名なご立派な貴族様だしなぁ〜…
「 ペイントさんはともかく、失礼ですがカクタス様は何かご身分を証明出来るものはありますでしょうか…? 」
ぐちつぼの顔がムッ、となる。
彼の本名はカクタス――サボテンを意味するが、彼はあまり気に入らないらしい。
というよりぐちつぼというあだ名が気に入りすぎている、の方が適切かもしれない。
ぐ 「 …この眼じゃダメですかね? 」
真紅の瞳。
王族に近づけば近づく程、瞳の紅が濃くなるのだ。
…ぐちつぼはいくら親戚といえどかなり色が濃い。
あまり王国の事情は知らないが、思っているより偉いのかもしれない。
「 し、失礼致しましたッ、大丈夫です! 」
ぐちつぼはどこかやるせない、気まずそうな顔をしている。
「 では、冒険者カードのご提示をお願い致します。 」
2人とも出しておいたカードを渡す。
「 ……間違いないですね。では少々お待ちください。 」
するとカードを奥の水晶にかざし、後に戻ってきた。
「 これで手続きは終了です。お2人のカードのどちらでもパーティーとして依頼を受ける際に利用可能です。 」
ぐ 「 了解です。ありがとうございました。 」
ぺ 「 ありがとうございました〜。 」
ぐ 「 宿取りに行こうぜ、暇だし。 」
ぺ 「 おけ。あとさ、お前… 」
ぐ 「 ん? 」
ぺ 「 親戚って割には目の色濃いよな。もしかしてめっちゃ偉い感じ? 」
ぐ 「 ……いや、俺実はさ――― 」
「 待て泥棒ーッ! 」
突然後方から怒声がした。
すぐに状況を察した俺らの連携は我ながら凄かったと思う。
ぐちつぼが風魔法で干されていたタオルを泥棒の顔面に被せ、驚いた隙に俺が地面に押さえつける。
ぺ 「 動いたら肩外れるぞ! 」
ぐ 「 観念しとけ〜? 」
「 クソッ…! 」
完全に泥棒を捕えた俺らは、多くの拍手喝采の的となった。
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