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「…はい、了解しました。」 

と言うと携帯を閉じポケットにしまう中也を横目に、僕はソワソワと落ち着かない様子でソファにちょこんと座っている。

何故落ち着かないのかと言うと、最近中也が難関な任務に当たってしまい一緒に過ごすという機会が少なくなってしまったのだ。其の為、普段めいいっぱい構ってもらっているのに全く構ってくれないという状況で、其れが物凄く嫌なのである。だからこうやって僕が自分から中也に会いに来たものの中也は

「あぁ、なんだ太宰か」

と言うだけで、ちっとも嬉しそうじゃなかったのだ。

いつ構ってくれるのだろうかと僕が珍しく大人しく待っているというのに。と中也を睨む。

そんな僕をこれっぽちも気にしていない中也は少し考える素振りを見せてから椅子に掛けてある外套を手に取り其れを羽織る。

「悪ぃ太宰、ちょっと用事できたから行ってくる。」

と僕が座っているソファを通り過ぎる時に、くいっと中也の外套を引っ張る。其れに少し驚いたのかキョトンとした表情を見せてからまたいつもの顔に戻る。

「どうした?」

と聞いてくる中也にムッとする。

「…中也の分からず屋」

「あ?何だよ急に」

思わず本音が漏れてしまい、其の言葉に中也は顔を顰める。その表情にはっとする。

違うのに。僕が言いたいのはこれじゃないのに。ただ、構って欲しいって言いたいだけなのに。

と心の中で思うが、どうしてもその言葉が言えない。

「…分かってよ」

「何がだよ」

「…だからぁ……」

「はぁ、だからって何がだよ。ちゃんと内容を言え。」

と言われ、口を紡ぐ。

たった一言「構って」と言えば済む話なのに、其の一言が口から出ない。

そんな自分に嫌気が差し、ジワジワと何かが込み上げてくる。其の何かを見られたくなくて下を向く。

何も言わなくなった僕を不思議に思ったのか中也は僕の顔を覗き込んでくる。中也は僕の顔を見て「はぁ」とため息をつくと腕時計を見る。

「まぁ、まだ時間あるしいいか…」

と言うと隣に腰かける。

「んで、手前は何が言いたかったんだ?」

と聞いてくるが、僕は中也が怒っているのだと思い口を閉ざしたまま。その様子を見て中也は3度目のため息をつく。

「あのなぁ太宰、ちゃんとはっきり物を言ってくれなきゃ伝わんねぇんだ。其れに俺は怒ってねぇから。な?」

と僕を安心させるように優しい声音で言ってくれる。

僕はもうどうにでもなれと思い、体を中也の方に倒し顔を肩に埋める。そして小さな声で

「…いっぱい、構って欲しいの。…いっぱい抱きしめて、…き、キスして欲しい、の。」

と告げる。暫く沈黙が続きもしかして迷惑だった?と思い

「…ちゅ、中也?」

と名前を呼び、恐る恐る中也を見ると中也は顔を上に向け手で口許を覆い、ブツブツと何かを呟いていた。其れを不思議に思い、ジィっと見ていると僕の視線に気がついたのか口許を覆っていた手を降ろし

「なんでもねぇ」

とニコッとするが、全然なんでもないように見えたのは黙っておく。

「そんで何だっけ、いっぱい抱きしめて、キスしてほしい。だっけか?」

とニヤニヤとする中也に少しムカッとし、肩にぐりぐりと頭を押し付けてやる。

「おいおい、そんな可愛いことしたらキスだけじゃ終わらなくなんだろ?」

「五月蝿いっ」

と怒ると上から笑う声が聞こえ其れにもまたムカッとし、今度は背中の肉を摘むと「痛ぇ」というの声が降ってくるが、お構い無しに摘みまくっていると

「太宰」

と呼ばれる、中也の顔を見上げると頬に手が添えられる。

「めいいっぱい甘やかしてやる。」

その声と同時に僕の唇は奪われる。最初は軽いキスを何度かするだけだったが段々深くなっていき、自然と声が漏れる。

「んんぅ、んぁ、んむぅ、はぁ、んん…」

徐々に力が入らなくなり、ただ中也の服の袖を掴むくらいしか出来なくなる。数分後やっと唇が離れる。

「はぁっ、はぁっ」

と肩で息をする。

もう息も絶え絶えで苦しいのにもっと、キスして欲しくなる。

僕は縋るように中也の首に腕を回し、

「もっと…、もっと、キスして」

と言うと、中也は「チッ」と一瞬舌打ちをし、また口を塞いでくれる。

「んむっ…!んぁっ、あ、はぁっ、んんぁ、んんぅっ」

息は苦しい。だけど、中也との久々のキスに堪らなく興奮してしまう。もっともっとと強請るように首に力を込める。それに答えるように中也も腰に回していた腕に力が強くなる。部屋にはちゅ、じゅるとリップ音と唾液の絡まる音だけが響きその音でさえ興奮してしまいまた強請るが、

「…っはぁ、もう終わりだ。苦しいだろ?」

と中也の唇は離れていく。

「其れに、もうそろそろ行かなくちゃいけねぇ」

と腕時計を確認する中也を見て思い出す。

そういえば中也は難関な任務に当たっていると、つい夢中になってキスをしていたせいですっかり忘れていた。

「そうだね、仕方ないね」

と言おうとしたが、出た言葉は

「…やだ、もっと構ってよぉ」

と弱々しい言葉だった。

「っ!」

中也は其の言葉に驚いたのか目を見開く。

中也は諦めたのか少し顔を赤くし過去一大きいため息を吐き

「あー、くそっしゃーねぇなぁ」

と言いながらも嬉しそうな顔をしながら頬に手を添えてくれる。

其れと同時に中也のポケットの中にある携帯が鳴り出す。

「…あ?なんだよこんなタイミングで」

と顔を顰めながらポケットから出した携帯を見た中也は顔を真っ青にした。

「誰からなの?」

と聞くと、携帯の画面を見せながら声を震わせる。

「…あ、姐さん。」

と言うと、バッと立ち上がり

「悪ぃ、ガチで今すぐ行かねぇと」

と急いで出ていこうとする中也を引き止めて、中也の頬にちゅっとキスをする。

「いってらっしゃい。」

とにっこりと微笑んで言うと、キスをした頬を押さえて固まったままなの中也は顔を真っ赤にして

「帰ったら抱き潰すっ!」

と叫んで部屋を出ていった。













その後、正気に戻った太宰は中也から逃げるのだった。














終わり

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