テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
第四話 番になりたい
ある日。
結衣は大学の帰り道、春樹と二人で歩いていた。
「春樹さん」
「ん?」
「私……怖いんです」
「何が?」
「春樹さんを好きになること」
春樹の足が止まった。
結衣も止まる。
「……どうして?」
「好きになったら」
結衣は胸元を押さえた。
「失うのが怖くなるから」
春樹は黙って聞いていた。
「今までは、嫌いなら失わないと思ってた」
「……」
「期待しなければ、傷つかないと思ってた」
結衣はゆっくり息を吐く。
「でも春樹さんといると……」
「うん」
「もっと一緒にいたいって思う」
春樹の目が揺れる。
「子どもたちと一緒にいてほしいって思う」
「……うん」
「私の隣にいてほしい」
そして。
結衣は春樹を見る。
「……これって、好きってことなのかな」
春樹はしばらく黙っていた。
ゆう
75
白井 あま 👾
204
やがて。
「俺から答えを言ってもいい?」
「……何?」
「結衣が俺を好きかどうかは、結衣が決めればいい」
「またそれ?」
「でも」
春樹が笑う。
「俺はずっと、結衣が好きだよ」
結衣の顔が赤くなる。
「……ずるい」
「何が?」
「先に言うなんて」
「ごめん」
「だから謝らないでって……」
結衣は俯いた。
そして。
小さな声で。
「……私も」
「ん?」
「……春樹さんが好き」
春樹は何も言わなかった。
ただ、嬉しそうに笑った。
「……やっと言った」
「言わせたの春樹さんでしょ」
「そうかも」
「もう……」
結衣は笑った。
それから。
少し迷って。
春樹へ手を伸ばす。
「春樹さん」
「うん」
「私……あなたと番になりたい」
春樹の表情が止まった。
「……本当に?」
「うん」
「後悔しない?」
結衣は少し考える。
「怖いよ」
「……」
「αだから怖いんじゃない」
結衣は春樹の目を見る。
「春樹さんを大切に思ってるから、怖い」
その言葉に。
春樹は優しく笑った。
「それなら、俺も一緒だよ」
「……え?」
「結衣を大切に思ってるから、怖い」
春樹は結衣の手を取る。
けれど。
握りしめることはしなかった。
逃げたくなったら、いつでも離せるように。
「結衣が選んでくれるなら」
「……うん」
「俺は結衣の番になりたい」
♡よろしくお願いします。
コメント
1件
第四話おつかれさまです!結衣さんの「好きになるのが怖い」っていう気持ち、めちゃくちゃわかるなあって思いながら読んだけど、春樹さんの「大切だから怖い、それなら俺も一緒だよ」って返しに全部持っていかれた……。あと、逃げたくなったら離せるようにって握りしめない優しさ、最高にグッときました。二人のゆっくり寄り添っていく距離感が尊すぎます。続きも楽しみにしてます!