テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ラウールsaid
ラウール「……はぁ。本当に、うちの学校の教師陣は、一般公開日の来場者に『ようこそ』と挨拶する前に、自分の担当区域の警備という名目を振りかざして特定の生徒を連れ去るのをやめてほしい」
私立雪男学園の校長室。……ではなく、ここは一般客や他校の生徒で大賑わいを見せている秋の学園祭の真っ只中。僕は校長特権で手に入れたお気に入りの炭酸水を一口すする。手元のタブレットの画面には、校内の各所に配置された防犯モニターの映像。もちろん無音高画質カメラの録画ボタンはいつでもオンの状態だよ。
体育祭を終え、さらに絆が深まった(気がする)お兄ちゃんたちだけど、今日の「学園祭」はまた別の意味で大ピンチなんだよね。なぜなら、今日は一般公開日。つまり、うちの学校の生徒だけじゃなく、他校の男子生徒や女子生徒が大量に紛れ込んでいる。そして、案の定、男女問わずめちゃくちゃモテるうちの受け組(生徒たち)が、模擬店のエプロン姿やクラスの出し物の衣装で大活躍しているもんだから、他校の不届きな奴らが
モブ「ねえ、そこの可愛い子、後でLINE交換しない?」
なんてナンパを始めちゃってるわけ。これには、普段は立場を気にして「卒業するまでは待つ」と自分を律しているはずの教師陣も、理性のタガが完全に外れて目がガチで据わっている。学校の行事という大義名分をこれ以上ないほど有効活用した、大人の男たちの執念。校長としてこれほど面白いデータはない。
まずは、2階の連絡通路。
目黒「康二、お前さっきから他校の奴に話しかけられて何笑ってんの。用がないなら、早く写真部の展示室に戻れ」
向井「え〜? 目黒先生、なんでそんな怖い顔して怒るん? あのお客さん、写真の撮り方聞いてくれただけやで?」
写真部の腕章をつけた一年生の向井康二が、社会科の目黒蓮先生に強引に腕を引かれていた。康二くんは人懐っこくて大人気だけど、本人は自分の魅力に無自覚だ。すでに秘密の恋人同士になっている目黒先生だけど、他校の男子生徒が康二の連絡先を聞き出そうとした瞬間、普段の少し抜けた優しいトーンが消え失せて、男らしい余裕のない、冷徹な教師の目でそのナンパ男を威嚇して退散させていた。康二くんは「付き合うのはまだダメなんちゃうん?」なんて学校では正論を言うくせに、めめのこのガチな独占欲に触れて、最後は顔を真っ赤にして照れていた。
1階の家庭科室前(喫茶模擬店)。
渡辺「……なぁ、宮舘先生。俺、呼び込み頼まれたから、ちょっと校門の方まで行ってくるわ」
宮舘「翔太、行かなくていい。君のエプロン姿を見た他校の奴らがさっきから群がってる。……これ以上、君を他の男の目に晒したくないんだ」
美容オタクで肌がピッカピカな三年生の渡辺翔太が、フリルのついたエプロン姿のまま宮舘涼太先生に背後から呼び止められていた。渡辺もバスケ部の幽霊部員のくせに大モテのイケメンだけど、宮舘先生の前に出ると形無しだ。宮舘先生は物静かで落ち着いたトーンのまま、渡辺の細い手首を男らしく、でも優しく握りしめて離さない。スマートだけど強引な宮舘先生のアプローチに、渡辺は完全にキャパオーバーの初心な顔になってツンデレを発動している。
渡辺「卒業したら、ちゃんと付き合ってよ……っ」
と小さく呟く渡辺を、宮舘先生は
宮舘「もちろん。だから今は、俺の後ろに隠れていて」
と、男らしい余裕の笑みでエスコートしていた。
さらに、生徒会本部裏の渡り廊下を見れば。
岩本「深澤、お前またサボって店を回ってるな。他校の女子生徒に囲まれて、生徒会長としての仕事はどうした」
深澤「あ、岩本先生〜。そんなに怒らないでくださいよ。俺、学園祭の進行をチェック……って、うわっ!?」
体育教師の岩本照先生が、深澤辰哉の腰を強引にグッと抱き寄せ、他校の生徒たちの視線から遮るように自分の後ろに隠した。深澤は成績はそこそこだけど男女問わずモテる人気者。岩本先生は厳しい態度を取りつつも、深澤が
深澤「岩本先生、もしかしてまたヤキモチ?」
と甘えた瞬間、その口角を上げていた。先生のほうが先に限界を迎えて折れそうなのは相変わらずだね。
そして、僕が今日も熱心に焦点を合わせているのが、3階の放送室の裏。お互いにまだ付き合っていないはずの、賑やかでじれったい秋の学園祭。ここから、不器用な恋の歯車が、他校の喧騒と激しい嫉妬の熱気の中で、さらに深く回り出そうとしていた。
阿部said
阿部「佐久間、次の校内放送のスケジュール、ちゃんと確認した? ほら、マイクの前に台本忘れてるよ」
佐久間「あ、あべちゃん!……じゃなくて、阿部先生! ありがと! 俺、あべちゃんのために学園祭の特別生放送、全力で盛り上げてくる!」
秋の学園祭、3階の放送室の裏。俺は理科の見回り担当の腕章を白衣に巻きながら、放送委員会会長として忙しなく動き回っている佐久間に声をかけた。佐久間は三年生で成績は良くないけれど、その真っ直ぐで明るい人柄から、男女問わず誰もが惹かれずにはいられない大モテの生徒だ。今日も特別企画の衣装なのか、少し大人っぽいシャツ姿で、いつも以上にキラキラして見えた。そして俺は、理科教師の阿部亮平。体育祭のあの衝動から、俺の中の独占欲は膨らみ続ける一方だった。付き合うのは卒業してから、と自分を律してはいるけれど、今日の学園祭の盛り上がりは俺の理性を完全に狂わせにかかっている。佐久間のあの無防備な笑顔を見た他校の男子生徒たちが、
モブ「あの放送委員の先輩、めっちゃ可愛くね?」
モブ「後で一緒に写真撮ってもらおうぜ」
と、放送室の周りをうろつき始めていたのだ。佐久間が
佐久間「お、写真? いいよー!」
と他校の生徒たちに無防備に答えようとした、その瞬間だった。俺のなかの「大人の理性」が、みしみしと音を立てて完全に崩壊した。俺はいつものあざとい笑顔を完全に消し去り、佐久間の手首を男らしく、かなり強引な力加減でグッと自分のほうへと引き寄せた。そのまま、他校の生徒たちの視線が届かない、薄暗い放送室の機材倉庫の陰へと強引に連れ去る。
佐久間「っ、うわっ!?……あべ、せんせ……っ?」
佐久間は驚いたように目を見開いて、俺を見上げた。普段は元気いっぱいの彼だけど、俺が少し低い、真面目なトーンの声で視線を固定すると、一瞬で顔を真っ赤にして初心に照れた。
阿部「阿部先生って呼べるようになったのは偉いけどさ」
俺は佐久間を倉庫の壁際に追い詰めるように距離を詰め、その細い腰をグッと引き寄せた。
阿部「佐久間、俺がどれだけ我慢してるか、本当に分かってる? 他の学校の奴らの前でそんな可愛い顔して、写真まで撮ろうとするなんてさ……俺、教師じゃなかったら今すぐお前を俺だけの場所に連れ去って、誰の目にも触れさせないようにしてるところだよ」
佐久間「っ、あべちゃん……っ//」
余裕のなくなった佐久間の口から、小さく掠れた声が漏れた。インテリで普段は優しい先生のつもりだけど、他の男たちが佐久間に近づこうとするのを見た瞬間、自分の中にこれほど醜い独占欲と激しい嫉妬が渦巻くなんて、俺自身、計算外だった。
俺は微笑むと、佐久間のピンク色の髪を優雅によしよしと撫で回した。大きな手のひらの温かさが伝わったのか、佐久間は恥ずかしそうに俺の白衣の胸元をぎゅっと力任せに掴んで、真っ赤になった顔を押し付けてきた。付き合いたいと願う生徒と、卒業まではダメだと自分を律するはずの教師。だけど、他校の侵入者たちによって、その鉄壁であるはずの境界線は、俺のなかの激しいジェラシーによって完全にねじ曲げられようとしていた。
コメント
1件
もう7話、読ませていただきました!学園祭の一般公開日、他校の生徒が来ることで先生たちの嫉妬が炸裂する展開、めちゃくちゃ熱かったです…!特に阿部先生が佐久間くんを倉庫に連れ込むシーン、普段の冷静なインテリ先生が理性崩壊しかけるギャップがたまらなかったです。ラウールくんがモニタリングしてる視点も面白くて、続きが気になります!
#ご本人様には関係ありません
コンソメパン
10,741