何でも許せる方のみお進みください。
トントンside
冷たい風が、横を通り過ぎていった。
「俺、今回のことでよくわかった」
「俺、軍を抜けるわ」
「…護衛も」
息が詰まる。
「ゾム…何言ってるんや?」
揺らぎない瞳で此方を見る。
その目が今は、嫌だった。
視線を俺の右腕へと持っていく。
「俺は、書記長様の右腕の代わりとしていたかった」
俺のせいで傷つけたその腕の代わりに、と付け足す。
「ちがうッ!ゾムのせいや無いんや!」
ふるふる、と首を振ると、優しい瞳で此方を見る。
「らっだぁさんの通りやな、俺、護衛向いてないんやわ」
その言葉が、俺を絶望へと叩き落としていく。
「…でもさ」
「俺は書記長様の右腕になるってことを、諦めたわけじゃ無い」
きらきら、と輝く瞳でしっかりと此方を見る。
「だから、俺がちゃんと書記長様を守れるようになるまで…」
「それまで護衛の席を空けといて欲しい」
無茶かな…、そう言ってゾムは苦笑する。
「…もちろんやッ!」
寂しい。けど、それと等しいくらいに嬉しかった。
「またなッ!」
そういうと、緑色は、後ろを向くと、元気よく歩き出した。
その背中はとても、大きかった。
心は悲鳴をあげていた。
体も悲鳴をあげていた。
「…くそ、」
剣を振り回す。
首が飛んでいった。
俺には右腕がない。だから義手をしていた。
でも、その義手は既に壊れていた。利き手ではない左手で、剣を使う。
あまり慣れていないみたいか、上手く的が定まらなかった。
この戦争は、唐突だった。
宣戦布告もなしに、仲良くしていた同盟国から、
突然、「会談をしよう。此方向かう。」とだけの連絡が来た。
気まぐれな総統だったので、よくあることだろう。そう思って、待っていた。
すると突然、爆発音が聞こえたと思ったら、あちら側は、軍を使い、突撃してきた。
急な戦争についていけない部下達がヘマをし、我々国は今、押されていた。
統領室でグルさんを守らないといけない俺まで前線に出て戦っている。
「こんなとこでへばるわけにはいかんのや!」
そう自分に言い聞かせて、苦し紛れに剣を振る。
思い出すのは、仲間と、6年前に去っていた少年。
約束を果たさなければならなかった。
でも、でも…
心は、死んでいた
人はどれだけ強くても、心が死んじゃ意味がない。
やる気が失せて、動けなくなるんや
絶望の沼に、捕まった気分だった。
キィーッ…
不意に城のスピーカーが起動される。
それを誰かが気づくことはなかった。
雑音は、兵士たちの掛け声に掻き消されていく。
《ちょ、あんさん___、》
《 ______ 》
何か、話し声が聞こえた。
もう、監視室にも潜入されたか…?
敵兵達が、どんどん増えていく。
いろんな国が、俺たちを潰すために協力していた。
「もう、終わりやな…」
隣にいた大先生が、弱音を小さくこぼした。
その時だった。
《へばってんじゃねえぞ我々国!》
俺たちは顔を上げた。
その声は、6年ぶりの、希望に満ち溢れた少年の声だった。
ゾムside
《何でこんなところで止まってんねんッ!!》
叫ぶ。とにかく叫ぶ。
俺の思いが届くまで叫び散らす。
監視室からみた我々国は、酷い有様だった。
大半のやつが諦めて戦っていた。
自分から「殺してくれ」と言うやつだっていた。
許せない。許せなかった。
《最後まで諦めずに戦えよッ!死にてえならやり切って死ねよッ!》
《俺が憧れた軍はこんなもんかッ⁉︎》
《お前らが忠誠を誓ったのは誰だッ?》
《統領様だろッ!グルッペンだろッ!!》
《あの人だけは俺たちが守り切らなきゃ何ねえんだ!》
《お前らは何でここにいる⁉︎命を捧げたからだろうがッ!》
《死にたくないって思う奴は今すぐ逃げろッ!別に弱くないッ!悪くないんやッ!》
《心が死んだ?だからどうしたッ!じゃあ、最後まで俺が守ってやるよッ!》
笑いが漏れた。皆んなの瞳は、すごく綺麗だった。
《___以上、我々国幹部兼、》
《偉大なる我々国の書記長様の護衛やッ!》
トントンside
「…」
ゾムの言っていた言葉一つ一つを胸に刻みつける。
自然と頬が緩んだ。
俺は書記長として、グルッペンに忠誠を誓ったんや…
『此方ロボロ。トントン。コネシマに加勢してくれ、訓練場や』
インカムから、啜り泣くロボロの声が聞こえた。
それと同時に、決意を固めた強い声だが。
「了解ッ!やってやんよッ!」
俺は強く地を蹴った。
ゾムside
戦争はあっという間に終わりを迎えた。
押されていた我々国が、逆転したのだ。
本当にかっこいかったし、安堵感が半端なかった。
終わった時は泣いて喜んだ。
俺は ゛仲間 ゛が大好きだ。
「お久しぶりですね、らっだぁさん」
「うん、ひさしぶり」
大変だったみたいだね、そう言って申し訳なさそうに笑った。
「トントンさんと…」
「へえ」
「いい目してんじゃん」
「改めて、俺はらっだぁ。君は?」
「俺はトントンの護衛のゾムや。宜しくな!」
二人で握手を交わす。とびきりの笑顔が弾けた。
これにて、『脅威は書記長の右腕になりたい』は、完結です!
最後まで見て頂き、ありがとうございました!!
これからも宜しくお願いします!
コメント
9件
完結おめでとうございます!! この物語が終わるの 少し寂しいです...。 でも、最後の話最高 でした!!! こんな神作品を書いて くださってありがとう ございます!!!!!
初コメ失礼します・・・! 今まで陰ながらに見させて頂きました。どう終わるのか楽しみだったので、るかさんの技量に驚くばかりです。 これからも頑張ってください!
完結ッッ!! そう戻ってくるとは思わんかったわぁ、、 最高でした〜!!!! ありがとう!!!!!